2023年5月21日 今日の出来事

「核なき世界へ」決意共有 G7広島サミット閉幕

広島市で開かれた先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)は21日午後、閉幕した。岸田文雄首相は平和記念公園で議長国記者会見を開き「核兵器のない世界」の実現への決意を共有したと述べた。G7で、中国と対話を通じて建設的かつ安定的な関係を構築する用意があるとの認識で一致したと表明。ウクライナ情勢を含め中国に責任ある関与を促す考えを示した。法の支配に基づく国際秩序を堅持し、平和と繁栄を守り抜く意志を世界に示すことが日本の使命だと強調した。

核軍縮に関し戦争被爆地から訴え続ける必要性を指摘。「悲惨な結末を何としても避けるため、核兵器のない世界という未来への道を着実に歩む必要がある」と指摘。被爆地を訪れ、被爆者の声を聞いたG7首脳が共同文書「核軍縮に関する広島ビジョン」を出したことについて「歴史的な意義を感じる」と語った。

ロシアによる侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領をサミットに招いたことで、G7とウクライナの揺るぎない連帯を示し、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くとの決意を示せたと言明。

記者会見する岸田首相(21日、広島市の平和記念公園)

カナダ在住の被爆者サーロー節子さん「サミットは大きな失敗」

広島で被爆し、カナダを拠点に核兵器廃絶を訴えている被爆者のサーロー節子さん(91)は21日、広島市で記者会見し「G7広島サミットは大きな失敗だった。首脳たちの声明からは体温や脈拍を感じなかった」と批判した。「原爆資料館で何を感じ、何を考えたのか。その声を聞きたかった」とも指摘した。

被爆者らは核保有国や「核の傘」の下にある日本などに核兵器禁止条約参加を求めてきたが、G7の共同文書「核軍縮に関する広島ビジョン」などで条約への言及はなかった。サーローさんは「声明には何も新しい内容がなかった」と述べた。

記者会見する被爆者のサーロー節子さん=21日午後、広島市

サーローさんは13歳の時、爆心地から約1.8キロの学徒動員先で被爆。姉や4歳のおいたち親族と、多くの級友が犠牲になった。カナダ人と結婚してトロントに移住後、世界各国で証言を重ねている。2017年には核兵器禁止条約の制定に向けた国連本部の会議に参加し、条約の成立に貢献。同年に核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)がノーベル平和賞を受賞した際、被爆者として初めて授賞式で演説した。

広島ビジョンにICAN「核軍縮、価値ある成果には程遠い」

主要7カ国首脳会議(G7サミット)が19日発表した核軍縮に関する首脳声明「広島ビジョン」について、2017年にノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」は「核軍縮に向けて価値ある成果には程遠かった」とするコメントを発表した。

コメントでは「核の脅威に対して具体的で見込みがある計画がなく、原爆が投下された広島に配慮した発言を形式的にでさえ見せていない」と非難。中露を名指しで非難しているだけでは不十分だとして、「『核兵器のない世界』に達するには、他の核保有国も軍縮交渉に取り込む必要がある」と求めた。

核保有国と非保有国との「橋渡し役」を掲げる日本に対しては「ある意味、核保有に加担している」と非難。「現状を変えるつもりがあるなら、核兵器禁止条約(TPNW)を支持するのが唯一の論理的な選択だ」と述べ、今年開催予定の第2回締約国会議へのオブザーバー参加を求めた。

首脳らの平和記念資料館訪問を受け、取材に応じる核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のダニエル・ホグスタ暫定事務局長=19日午後、広島市中区

G7サミット「期待裏切られた」 被爆者団体、失望と怒り

日本原水爆被害者団体協議会(被団協)は21日、G7広島サミットに関してオンライン記者会見を開き「核兵器廃絶の願いや期待が裏切られ、核抑止論や核の傘の下で戦争をあおる会議になっており、情けなく怒りを覚える」と振り返った。

広島で被爆した事務局次長の浜住治郎さん(77)は「核兵器は人類と共存できない絶対悪の兵器で、廃絶は今すぐやるべき最優先課題だ」と強調。共同文書「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」が被爆者や核兵器禁止条約に言及せず、核抑止を肯定する内容だったことに「被爆者の一人として怒り、憤りを感じている。広島で開催された意図は、どこにあったのか」と語気を強めた。

ウクライナに「必要な限りの支援提供」で一致 G7サミット

広島市で開催されている主要7カ国首脳会議(G7サミット)は最終日の21日、G7首脳とウクライナのゼレンスキー大統領が参加し、ウクライナ情勢について議論するセッションが開かれ、G7として必要な限りの支援を提供することで一致した。

岸田文雄首相は「厳しい冬も乗り越え、ロシアの侵略に結束して対抗してきたウクライナ国民の勇気と忍耐強さに心から敬意を表する」とあいさつ。「ゼレンスキー氏が公正かつ永続的な平和に向けた真摯な努力を続けていることをG7として歓迎し、支持している」と述べた。

会合では、「G7として外交、財政、人道、軍事支援を必要な限り提供するという揺るぎないコミットメント(関与)を着実に実施していく」ことで一致。ウクライナに平和を取り戻し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜いていく決意も確認した。

G7広島サミットの第9セッションで、岸田文雄首相(右)の発言を聞くウクライナのゼレンスキー大統領(左手前から3人目)、インドのモディ首相(同2人目)、韓国の尹錫悦大統領(同4人目)=広島市南区で2023年5月21日

インド首相、ロシアとの仲介に意欲 ゼレンスキー氏と会談

インドのモディ首相は20日、広島でウクライナのゼレンスキー大統領と約30分間会談した。「紛争の解決方法を見いだすため、あらゆることをする」と伝え、ウクライナ侵攻を続けるロシアとの仲介に意欲を示した。ゼレンスキー氏は、モディ氏のウクライナ訪問を招請した。インドのクワトラ外務次官が同日の記者会見で明らかにした。モディ氏側の返答については明らかにしていない。

クワトラ氏によると、会談はウクライナ側から持ちかけられた。モディ氏は、紛争解決のため外交と対話の努力をすると明確に伝えたという。また、ウクライナでの紛争が「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国に、経済や食料供給の面で悪影響を及ぼしていると懸念を伝えた。薬品の提供など人道支援を続けることも約束した。

インドは主要20カ国・地域(G20)の今年の議長国で、広島で開催中の主要7カ国首脳会議(G7サミット)に招待国として参加している。インドは武器の供給を受けるロシアと伝統的に関係が深く、ウクライナ侵攻後も、欧米の対露制裁からは距離を取っている。

会談に臨むウクライナのゼレンスキー大統領(右)とインドのモディ首相=広島市で2023年5月20日

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日米韓、対北朝鮮で協力強化 3首脳が会談…広島サミット

岸田文雄首相とバイデン米大統領、尹錫悦・韓国大統領は21日午後、広島市で短時間会談した。北朝鮮の核・弾道ミサイル開発への対応を協議。日韓関係正常化の流れを踏まえ、対北朝鮮に加え、経済安全保障やインド太平洋戦略での3カ国の協力を「新たな高み」に引き上げることを確認した。日米韓首脳会談は昨年11月以来。

3首脳は先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に合わせて会談した。バイデン氏は日韓関係の進展に触れて岸田、尹両氏の「勇気ある取り組み」をたたえ、3カ国首脳会談を改めて開くため両氏を米国に招待した。

記念写真の撮影後、米国のバイデン大統領(左)、韓国の尹錫悦大統領(右)と話す岸田文雄首相=21日午後

岸田内閣支持率45% 前回から9ポイント上昇…毎日新聞世論調査

毎日新聞は20、21の両日、全国世論調査を実施した。岸田内閣の支持率は45%で、4月15、16日実施の前回調査(36%)から9ポイント上昇した。不支持率は46%で、前回調査(56%)比10ポイント下落。支持率と不支持率が拮抗した。拮抗するのは、支持率が不支持率を下回った2022年8月調査以降で初めて。

広島で19~21日に開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)で各国首脳が平和記念公園を訪れたことについて「評価する」が85%を占めた。「評価しない」は9%、「わからない」は6%だった。

広島サミットに関心があるかとの質問では、「関心がある」が70%で、「関心はない」は17%、「どちらとも言えない」は13%だった。

政党支持率は、自民党28%(前回25%)▽日本維新の会17%(同15%)▽立憲民主党9%(同11%)▽共産党6%(同5%)▽公明党4%(同4%)れいわ新選組4%(同4%)▽国民民主党3%(同4%)--などで、「支持政党はない」と答えた無党派層は24%(同25%)だった。

「浅草に活気戻った」 三社祭、4年ぶり神輿3基が町内巡行

浅草神社(東京都台東区)の三社祭で21日、本社神輿(みこし)3基が4年ぶりに各町内を巡行し、初夏の下町に氏子たちの熱を帯びた掛け声が響いた。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年以降の三社祭は、期間短縮や担ぎ手の人数制限、トラックの荷台に神輿を載せて巡行するなどの対策を取りながら開催を続けてきた。

早朝に行われた神事に続き、「宮出し」で氏子が神輿を担いで境内を巡った後、3基の神輿が各町内に向かった。雷門交差点は勇壮な姿を一目見ようと多くの観光客が待ち構え、一時身動きが取れないほどごった返した。40年以上毎年訪れている三重県四日市市の柳川平和さん(71)は「浅草に活気が戻った」と話した。

氏子たちに担がれ、雷門を出る神輿=東京都台東区で2023年5月21日午前

京都で平安貴族の船遊び 「三船祭」4年ぶり開催

平安貴族の船遊びを再現した車折神社(京都市右京区)の「三船祭」が21日、京都・嵐山であった。船首に竜の飾りを置くなどした4隻が大堰川の穏やかな流れに乗って出発。雅楽の音色が響く中、色鮮やかな装束をまとった子どもたちが舞楽を奉納した。新型コロナウイルス禍で中止が続き、開催は4年ぶり。

俳優の観月ありささん(46)が参加し、御座船から川面に扇を浮かべる「扇流し」を披露。多くの観光客が見入った。観月さんは「とてもきれいなお祭り。これから何百年と続いてほしい」と話した。三船祭は宇多上皇が船遊びをしたのが始まりとされる。

京都・嵐山で行われた、平安貴族の船遊びを再現した「三船祭」=21日午後

仙台・青葉まつり、4年ぶり通常開催 「これぞ」沿道に笑み

仙台市の初夏の風物詩「仙台・青葉まつり」が20、21日、市中心部であった。名物の「すずめ踊り」に加え、今年は目抜き通りを山鉾(やまぼこ)やみこしが練り歩く「時代絵巻巡行」が復活。新型コロナウイルス禍を経て4年ぶりに通常規模で催され、2日間で254団体、約6100人が参加した。

21日にあった時代絵巻巡行では、甲冑(かっちゅう)姿の武者行列や10基の山鉾が青葉通や定禅寺通などを行進。3000人超からなる豪華絢爛(けんらん)な光景に、沿道の人々は拍手を送ったり写真を撮ったりしていた。

通りを練り歩く時代絵巻巡行の参加者ら=仙台市青葉区で2023年5月21日

ミドリガメ、6月から放出禁止 飼育は可能、アメリカザリガニも…環境省

アカミミガメ(ミドリガメ)とアメリカザリガニが6月1日から外来生物法に基づく「条件付き特定外来生物」に指定される。家庭でペットとして飼うことはできるが、生態系に悪影響を及ぼす恐れがあるため、野外に放したり逃がしたりすることは禁止される。違反すると最大で3年以下の懲役か、300万円以下の罰金が科される。

2種は北米原産の外来種。環境省の推計では、ペットとして人気が高いミドリガメは約160万匹、アメリカザリガニは約540万匹が国内で飼育されている。

野外放出だけでなく飼育も禁止される「特定外来生物」と異なり、条件付き特定外来生物に指定されても、販売や頒布目的でなければ、飼育を続けることができる。ただ、家庭で飼う場合も注意が必要で、飼育ケースのふたを閉めなかったり、部屋の窓を開けっ放しにして逃げられたりした場合は、放出とみなされる可能性がある。

【1年前の今日の出来事】 2022年5月21日