安倍晋三元首相、奈良で演説中に撃たれ死亡 男を殺人未遂容疑で現行犯逮捕
8日午前11時32分ごろ、奈良市西大寺東町2丁目の近鉄大和西大寺駅前の路上で、街頭演説中の安倍晋三元首相(67)が背後から近づいた男に銃で撃たれた。安倍氏はドクターヘリで奈良県橿原市の県立医科大学付属病院に搬送されたが、同日午後5時3分に死亡が確認された。撃った男は現場近くで警察官によって身柄を確保され、路上から黒色のテープで巻かれた銃が押収された。
奈良県警によると、男は奈良市大宮町3丁目の無職、山上(やまがみ)徹也容疑者(41)で、県警は安倍氏に対する殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。容疑を認めているという。今後、殺人容疑に切り替えて捜査する。
県警によると、山上容疑者は「特定の団体に恨みがあり、安倍氏とつながりがあると思い込んで犯行に及んだ」という趣旨の供述をしている。一方で「(安倍氏の)政治信条に恨みはない」とも話しているという。捜査関係者によると、山上容疑者が挙げたのは宗教団体だという。
安倍元首相が死去、67歳 最長政権樹立、非業の死 アベノミクス、安保法制を推進
自民党の安倍晋三元首相が8日、銃撃を受け死去した。67歳だった。
首相に2度就任し、在職期間は連続2822日、通算3188日と、いずれも憲政史上最長を更新。大規模金融緩和を柱とする経済政策「アベノミクス」の推進や、集団的自衛権の限定行使を認める安全保障法制の整備など、内政・外交両面で大きな足跡を残した。退陣後も、党内最大派閥のトップとして影響力を保持してきたが、参院選の遊説中に非業の死を遂げた。
祖父は岸信介元首相、父は安倍晋太郎元外相。1993年の衆院選に旧山口1区から自民党公認で出馬し、初当選。連続10回当選した。
小泉純一郎元首相の政権下、北朝鮮による日本人拉致問題への取り組みで頭角を現し、党幹事長や官房長官を歴任。2006年9月に戦後最年少の52歳で首相に就任した。しかし、「消えた年金」問題などの影響で07年の参院選に大敗。持病の潰瘍性大腸炎の悪化もあり、わずか1年で退陣した。
自民党が野党時代の12年9月に党総裁に返り咲くと、同年12月の衆院選で旧民主党から政権奪還。これを含め、衆参両院の国政選挙で6連勝し、首相官邸主導の「安倍1強」体制を確立した。
在任中は、消費税率の10%への引き上げを実現。19年5月の令和改元や、21年に開催された東京五輪・パラリンピックの招致にも携わった。
首脳外交も積極的に展開した。米国のトランプ前大統領、ロシアのプーチン大統領と緊密な関係を築くなど、国際舞台で存在感を発揮。ただ、政権の最重要課題と位置付けた拉致問題や、ロシアとの北方領土問題は、進展を果たせなかった。
一方、政権の長期化に伴い、森友・加計学園問題など不祥事も続発。野党から「権力の私物化」と追及を受けた。
20年9月、新型コロナウイルス対策に追われる中、持病の再発などを理由に2度目の退陣。その後は、安倍派の会長として、経済や外交・安保で積極的な発言を繰り返し、岸田文雄首相の政権運営にも影響を与えていた。