世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治家に接点 → 政治と宗教の関係について知っておこう

旧統一教会問題について、質問に答える自民党の萩生田光一政調会長=8月18日 政治・経済

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治家に接点 → 政治と宗教の関係について知っておこう(一色清の「このニュースって何?」 2022.08.26)

日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんが毎週、保護者にヒントを教えます。

政治と宗教の関係

宗教団体の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治家とのつながりが大きな社会問題になっています。きっかけは、安倍晋三元首相を銃撃し逮捕された山上徹也容疑者がその動機について、旧統一教会に恨みを募らせ、つながりがあると思った安倍元首相を狙ったと供述したことです。

山上容疑者の恨みとは、母親が旧統一教会の信者になって高額な献金(親族によると1億円を超える)をしたことなどで、人生がめちゃくちゃになったというものです。その恨みが安倍元首相に向かったのは、2021年に旧統一教会の関連団体のイベントに安倍元首相がお祝いのビデオメッセージを送っていたためです。

銃撃は身勝手としかいいようがありませんが、この供述から政治と旧統一教会の関係について各メディアが取材をすると、政治家、特に政権与党である自民党の政治家と旧統一教会との接点が続々と明るみに出ています。イベントに出席してあいさつをしたり、祝電を送ったり、おカネを払ったり、選挙で支援をお願いしたり、選挙運動を手伝ってもらったり、さまざまな形で接点のある政治家がたくさんいることがわかりました。

旧統一教会については、霊感商法がかつて社会問題になりました。霊感があるふりを装って「霊の祟(たた)り」などと信者に不安を持たせて壺や印鑑を高額な値段で買わせる手法です。また、信者に有り金をはきださせるような高額献金も問題になっています。そうした問題のある宗教団体が、政権を担っている党の政治家と広くつながっていたことに国民はとても驚いています。

ただ、政治と宗教の関係は、とても微妙な問題です。関係を持つことはいいのか悪いのかを整理して考えてみたいと思います。

まず、日本国憲法をみてみましょう。憲法20条に「信教の自由」があります。「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」と書かれています。また、20条3項には「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と書かれています。つまり、どんな宗教を信仰しても自由だとしたうえで、政治と宗教は切り離されていないといけないという「政教分離の原則」が規定されています。

これは、戦前、戦中にあった国による宗教弾圧を意識してつくられた条文です。大日本帝国憲法でも「信教の自由」は書かれていたのですが、実際には神社神道を「国家神道」として国の宗教とし、それ以外の宗教については弾圧を加えることがありました。有名なのは、新興宗教だった大本教やひとのみち教団の事件です。大本教は急成長したことを警戒され、不敬罪と治安維持法違反で教祖が逮捕されました。大本教は禁止され、教団の施設は国によって破壊されました。ひとのみち教団は教義が不敬であるとして、軍部の弾圧によって解散させられました。ほかにも仏教系やキリスト教系でも治安維持法違反などで検挙される例がありました。こうしたことから、日本国憲法では、「信教の自由」に「政教分離の原則」を加えて、国が宗教にかかわらないようにしたのです。

ただ、宗教は政治に絶対にかかわってはいけないということではありません。公明党は仏教系の宗教団体である創価学会が作った政党です。公明党のホームページには、「1964年11月17日に、池田大作創価学会会長(当時)の発意によって結成された政党です」とあります。創価学会は今も公明党の支持母体です。国政選挙の比例区で公明党は600万~800万票くらいの得票力があり、その多くが創価学会の信者やつながりのある人だと見られています。

公明党と創価学会の関係について、「政教分離ではなく政教一致ではないか」という指摘があることについて、公明党のホームページでは、「憲法が規制対象としているのは、『国家権力』の側です。つまり、創価学会という支持団体(宗教法人)が公明党という政党を支援することは、なんら憲法違反になりません」と書いてあります。公明党も含まれる政権与党が創価学会に特権を与えるなどということがあれば憲法違反だが、創価学会が支援しているだけの関係なら問題はないということを言っています。

宗教団体の中には、選挙の際に支持する政党や支援する候補者をはっきりさせるところが少なくありません。全国の神社の集まりである神社本庁の政治的な活動をする関連団体に神道政治連盟があります。憲法改正など神社本庁の求める政策と方向性が一致する政治家を支援する組織で、自民党の保守系議員を中心に衆参合わせて256人の議員が参加していて、その氏名はすべてホームページに載っています。

また、仏教系の立正佼成会などが中心となった「新日本宗教団体連合会」(新宗連)という団体もあります。自民党との関係が深かったり民主党との関係が深かったりしてきましたが、最近は特定の政党を支持するのではなく、個人を支援する方向になっています。

旧統一教会と政治家の場合の問題点

このように宗教団体が政党や政治家を支援するのは通常のことで、問題はありません。では、旧統一教会と政治家との関係にはどのような問題があるのでしょうか。わたしはふたつあると思います。

ひとつは、旧統一教会が社会的なトラブルをたくさん引き起こしてきた団体だということです。先述した霊感商法や高額献金の問題です。加えて、教祖が結婚相手を決めておこなわれるとされる合同結婚式や宗教団体であることを隠して勧誘していると指摘されていることなどにも多くの日本人が違和感を持っていると思います。政治はこうした被害や違和感を受け止めないといけない立場にもかかわらず、イベントに出席するなどして旧統一教会の信用を高めるのに力を貸していたことになります。結果、被害の拡大につながる可能性があります。

もうひとつは、政治家と旧統一教会との持ちつ持たれつの関係が有権者からはまったく見えないことです。たとえば、参議院選挙の比例区では旧統一教会の推薦候補の形になっている自民党候補がいました。しかし、そのことをほとんどの人は知ることはできません。透明性のない関係は不健全な関係だといえると思います。

ただ、わたしが考えたふたつの問題も明快な答えとは言えません。問題のある宗教団体といってもどこからが問題でどこまでは問題でないのか、という明確な線引きは今ありません。また、透明性についても、どこまで透明性が必要かの線引きもありません。政治と宗教の関係はどうあるべきか、答えが出るかどうかわかりませんが、国会で議論してほしいと思います。

一色 清(いっしき・きよし) ジャーナリスト
朝日新聞社に勤めていた時には、経済部記者、アエラ編集長、テレビ朝日「報道ステーション」コメンテーターなどの立場でニュースと向き合ってきた。アイスホッケーと高校野球と囲碁と料理が好き。