「トイレが使えずお風呂にも入れない…」都心の超高級タワマンが見て見ぬふりをする「ヤバすぎる災害リスク」

「トイレが使えずお風呂にも入れない…」都心の超高級タワマン 社会

「トイレが使えずお風呂にも入れない…」都心の超高級タワマンが見て見ぬふりをする「ヤバすぎる災害リスク」(現代ビジネス 2023.06.09)

横山芳春 地盤災害ドクター

もはや庶民には手の届かない買い物になりつつある都心部のマンション。特に人気なのが、摩天楼の如くそびえ立つ、きらびやかなタワマンだ。部屋からの眺望も良く、中心地へのアクセスも抜群。高い耐震性能を持つとされている。

しかし、そんな完璧に見えるタワマンも、未曾有の大地震では多くの困難に直面するという。だいち災害リスク研究所の所長であり、地盤のプロフェッショナルでもある横山芳春さんに、タワマンが抱えるリスクについて聞かせてもらった。

人気タワマンエリアに潜む盲点

一般的にタワマンは堅牢な建物とされている。耐震・免震性能は戸建てに比べて高く、たとえ大地震が起きても倒壊の可能性は著しく低い。

だが、どれだけ建物が強くても、地盤が悪ければ災害リスクは当然高くなる。タワマンのメッカである都内の湾岸部は、その最たる例だ。

地下水位が浅く、緩い砂を多く含む地盤は、震度5強以上の地震が発生すると液状化が起こりやすくなります。例えば、豊洲、月島、辰巳、東雲などは言わずと知れた埋立地。このエリアは海に面しているため高台に比べて明らかに地下水位が浅い。しかも海底の砂を流し固めて造成された土地で、地盤を固めてからせいぜい100年ほどしか経っていません。液状化のリスクは非常に高いと言えます。

『東日本大震災では何もなかったらから大丈夫だろう』と考える人がいますが、当時の地震は都内の湾岸エリアから震源がだいぶ離れています。しかし、震源が至近である首都直下地震が発生すれば、液状化はおそらく免れない。実際、東日本大地震の被害状況をもとに、地形の種類と液状化の関係を調査した研究では、埋立地での液状化被害が一番多かったことが判明しています」(横山さん)

建物が無傷でもトイレが使えなくなる

一般的な戸建てが液状化の被害に遭えば悲惨なことになる。行き場を失った地下水と土砂が地上に吹き出し、柔らかくなった地盤に家が飲み込まれていく。

ただ、タワマンはこのような被害とは無縁だ。地中深くの固い地盤まで杭が打たれているため、液状化が起きても建物自体が大きく沈み込むことはない。しかし、それはあくまで建物に限った話。もう少し広い視点で見ると話は大きく変わってくる。

「問題は、マンションの敷地外で起こるのです。タワマンで行われているような強固な液状化対策は、湾岸エリア全域に及んでいるわけではありません。つまり、建物のすぐ横を走る道路などでは液状化による地盤沈下・変状などが起こる可能性がある。周囲で大きく地盤が沈み込みこめば、タワマンにつながる上下水道管は簡単に切れてしまいます。

当然ながらトイレは使えず、お風呂にも入れません。しかも、周辺のタワマンでも同じことが起こるので修理依頼が殺到する。場合によっては、そのような状況が1〜2ヶ月続くことも覚悟しなければならないでしょう」(横山さん)

タワマンが直面する困難はこれだけにとどまらない。恐ろしいことに、大地震発生時には「陸の孤島」と化すリスクも高いのだ。後編『東京都の最新“地震想定”が示す「陸の孤島化」し「行き場を失うタワマン住人たち」の残酷な姿』では、東京都が想定する衝撃のシナリオを紹介しながら、タワマンのさらなる災害リスクを解説していく。

横山芳春(YOKOYAMA YOSHIHARU)
だいち災害リスク研究所・所長。地盤災害ドクター。
関東平野の地形・地質のなりたちに関する論文で博士(理学)の学位を取得、早稲田大学理工学総合研究センター、国立研究開発法人 産業技術総合研究所等で第一線の研究活動に従事してきた。

だいち災害リスク研究所:https://www.sakurajimusyo.com/daichi/