ここ数年、大雨や集中豪雨により大規模な水害が発生した際、その要因として「線状降水帯」という言葉が頻繁に聞かれるようになった。
線状降水帯は、激しい雨を降らせる積乱雲が連続して発生し、線状に並び、その規模は幅20〜50km、長さ50〜200kmに及ぶ。ときには同じ場所で激しい雨を3時間以上も降らせ続けることがあり、その場所では経験したことのない大雨となる。
線状降水帯は、その形成過程・構造によっていくつかの種類に分けられる。中でも、「バックビルディング型」線状降水帯は、長時間の大雨をもたらし、災害に直結する恐れが特に高い。
その発生メカニズムを解説する。
線状降水帯が発生するメカニズム
1.最初に、風の収束や地形効果などにより積乱雲が発生する。
2.激しい雨を降らせながら、上空の風に流されてゆっくりと移動する。風上側のこの積乱雲が発生した場所で新たに積乱雲が発生し、またゆっくりと風下へ移動する。
3.また同じ場所で積乱雲が発生し、発達した積乱雲が流され、また同じ場所で積乱雲が発生する…、というこの流れを繰り返す。
4.このようにして、組織化された線状降水帯が作り出される。
a)積乱雲を発達させる水蒸気の供給や上昇気流を引き起こす要因
b)積乱雲を移動させる上空の風の流れ
a)b)が継続する限り、線状降水帯による激しい雨が続くことになる。
≪追加説明≫
強い雨をもたらす積乱雲の一つ一つは、寿命が1時間程度で大きさも10㎞四方がせいぜい。従って、たった一つの積乱雲では、それが如何に巨大であっても豪雨になることはない。次々にたくさんの積乱雲が同じ場所で発生し続け、「線状降水帯」として強靭で巨大な組織が結成され、同じ場所に居座り続けた時に、その場所で豪雨となる。
海面水温が高くなると、含まれる水蒸気の量が大きくなり、積乱雲ができやすくなる。上空を流れる風によって積乱雲が雨を降らせながら風下に移動する。すると同じ場所で新たな積乱雲が発生する。従って、温暖化により海面水温が上昇すると、線状降水帯は発生しやすくなる。
線状降水帯による大きな豪雨災害
発生日 | 災害の名称 | 被害 |
2013年8月9日 | 秋田・岩手豪雨 | 秋田県、岩手県の県境周辺で大雨による土砂崩れが発生。死者2名。 |
2014年8月20日 | 平成26年8月豪雨 | 広島市安佐北区、安佐南区の住宅街で大規模な土砂崩れ。死者74名。 |
2015年9月9日〜11日 | 関東・東北豪雨 | 茨城県、栃木県、宮城県を中心に河川の氾濫が発生。死者20名。 |
2017年7月5日〜6日 | 九州北部豪雨 | 福岡県・大分県で河川の氾濫、土砂崩れが発生。死者40名。 |
2018年6月28日〜7月8日 | 平成30年7月豪雨(西日本豪雨) | 岡山県、広島県、愛媛県など西日本各地で河川の氾濫が発生。死者263名。 |
2020年7月3日〜31日 | 令和2年7月豪雨 | 九州地方、岐阜県、山形県など全国各地で豪雨となり、各地で河川の氾濫、土砂崩れが発生。死者82名。 |
【参考・引用記事】
沖縄に「線状降水帯」いつまで警戒が必要?那覇の6月の雨量700ミリ超 16年ぶり
線状降水帯とは?集中豪雨の危険性や発生のメカニズムをプロが解説!
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