上げ潮「維新」の「公明への刺客候補」に降って湧いた訴訟トラブル 「6年前の暴行事件」が再び脚光を浴びる“不可解”事情(デイリー新潮 2023年08月29日)
早ければ「秋にもある」と噂される次期衆院選に向け、各選挙区では水面下の攻防が始まっている。そんななか注目を集めるのが、“飛ぶ鳥を落とす勢い”の日本維新の会の動向だ。前回衆院選で「全勝」を飾った地元・大阪では現在、全面対決が見込まれる公明党への“刺客”候補を選ぶ予備選の真っ只中にある。ところが候補者の一人に突如、訴訟トラブルが持ち上がったという。
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日本維新の会が、公明現職のいる府内4つの選挙区で、次期衆院選の立候補予定者となる選挙区支部長を決める「予備選」の実施を発表したのは7月。すでに2選挙区で支部長は決定しており、残る大阪5区と6区は22日に告示、開票日が8月31日に迫っている。
予備選突入後の25日、大阪地裁に提出された「ある訴状」が波紋を広げている。というのも、被告が6区の予備選に立候補した維新の徳村聡・大阪府議(50)だからだ。
デイリー新潮が入手した訴状によると、徳村氏が行った名誉毀損行為によって精神的苦痛を受けたとして、150万円の慰謝料と謝罪会見を求める内容となっている。原告で開業医のA氏が提訴の理由をこう話す。
「徳村議員が予備選の告示日に当たる22日頃、大阪維新の会に所属する議員らに私の人格を貶め、社会的評価を低下させる内容の文書を配布したため、やむなく提訴という形に踏み切りました」
徳村氏側が配布したとされる文書は〈暴行事件の経緯及び顛末についてのご説明〉と題され、弁護士が作成した体裁になっている。6年前に起きた徳村氏によるA医師への「暴行」疑惑に関するもので、今回の訴状にも〈請求の原因〉として挙げられる「遺恨の核心部」という。
「キレたら危険」
事件は2017年1月、大阪市内のホテルで開かれた大阪鶴見区医師会の新年会の場で起きたとされる。この会に来賓として招かれた徳村氏は会場内で、A医師を指して「すごい危険です。キレたら危険です」などと集まった医師らに発言。その背景をA医師がこう話す。
「もともと徳村氏とは高校時代の同級生ですが、その前年、徳村氏から私のクリニックを“移転しないか?”と持ち掛けられていました。徳村氏の妻が経営する薬局を併設する条件で、私に物件の話が持ち込まれたのですが、新年会の1週間ほど前にあることが原因で口論になってしまった。クリニック移転に関して、工事業者の振る舞いなどについて私が電話で徳村氏からお叱りを受けた際、つい“それは違うでしょ”などと反論してしまった。以降、話をすることもなく新年会を迎えましたが、徳村氏は口論の件がよほど腹に据えかねたのでしょう」
徳村氏の「危険」発言で、周囲が不穏な空気となったため、A医師は不愉快な思いを抱えたまま会場を出ることに。ところが、徳村氏から廊下で「ちょっと待てや」と呼び止められ、「私が『あなたと喋ることはない』と言うと、いきなり私の右肩を思いきり殴った」(A医師)という。
打撲などで全治1か月の加療を要するケガを負ったというA医師は、徳村氏を刑事告訴し、その後、民事でも損害賠償を求めて提訴。当時、この「暴行事件」は地元MBSテレビのニュース番組でも報道された。
賠償金の支払い命令
提訴のキッカケとなった問題の説明文には、6年前の暴行事件の経緯が記された後に、
〈刑事事件については、平成29年12月9日、嫌疑不十分として、大阪地方検察庁において不起訴処分となり、民事訴訟については、令和2年7月31日、大阪高等裁判所において、徳村議員の暴力行為を否定する判決が言い渡され、同判決は確定している〉
と続く。さらに〈(A医師の)自作自演の可能性が明確に判示されており、民事訴訟の判決としては異例の踏み込んだ内容であった〉として、次のように結ばれている。
〈本件事件は、徳村議員を逆恨みした知人医師による自作自演であり、検察庁及び裁判所が適切に判断したとおり、徳村議員の身の潔白は明らかとなっている〉
実際に高裁判決文を取り寄せて確認してみると、判決内で「自作自演」と認定した部分はないが、〈(殴打事件を)ことさら過剰に演出し、(中略)右肩部に対する自傷行為に及んだ可能性を合理的に排除することはできない〉と指摘。一方で、徳村氏の行為によってA医師が精神的被害を受けたことは認め、賠償金の支払いを命じていた。
徳村議員の回答
A医師に高裁判決について訊ねると、こう話した。
「私が行った刑事告訴に対して検察庁が不起訴処分としたこと、また大阪高裁が暴力行為に関する損害賠償請求を認めなかったことは事実です。ただし徳村氏の行為が名誉棄損に該当するとして賠償金の支払いを命じています。にもかかわらず、徳村氏は事実と異なる内容が含まれた文書を改めて配布し、私の名誉を棄損する行動に出た。すでに賠償金の支払いも受けており、私のなかで“事件は終わったこと”との認識だったため、驚くと同時に理解に苦しんでもいます。地元の新聞記者は“予備選が接戦のため、過去の醜聞を払拭する必要に迫られたのでは?”と話していましたが、真相は不明です。しかし徳村氏の一連の言動が、国民の代表者である議員としての資質に深い疑念を抱かせるものであることは間違いありません」
徳村氏にも提訴に対する見解や説明書配布の理由などを訊ねたが、
「まだ訴状が(手元に)届いておらず、コメントのしようがありません」
と回答した。選挙では“常勝”の維新議員だが、司法は果たしてどう判断するか。
デイリー新潮編集部