国民負担増、口つぐむ岸田首相 参院選後へ財源論先送り―骨太の方針原案(JIJI.COM 2022年06月01日07時09分)
政府が31日に公表した経済財政運営の基本指針「骨太の方針」の原案には、子育て支援、防衛力強化、脱炭素投資など長期的な歳出拡大につながる項目が並んだ。
一方で、政策継続に不可欠な安定財源の確保については軒並み議論を先送り。岸田文雄首相も参院選を控え、国民や企業の負担増に口をつぐむ。
「子ども政策をわが国社会の真ん中に据えていく」。原案は来年4月に予定する「こども家庭庁」創設を見据え、子育て支援政策の強化を打ち出した。関連予算の「倍増」を訴える首相の方針を踏まえたものだ。
ただ、財源について原案は、企業を含む「社会全体での費用負担の在り方を検討する」と記述するにとどめた。首相は国会でもただされたが、「必要な政策を積み上げた上で、財源をどう負担するか整理する」と細部に立ち入らなかった。
原案は、首相が「相当な増額」を打ち出した防衛費について「防衛力を抜本的に強化する」との方針を明記した。だが、自民党が想定する「5年間で国内総生産(GDP)比2%」を達成するには毎年1兆円程度を増額していくことが必要で、財源の確保は容易でない。
31日の参院予算委員会では、共産党の小池晃書記局長が「『相当な増額』と言うのであれば、相当な社会保障費削減か相当な増税、国債発行しか選択肢がない」と追及。これに対し、首相は「具体的な(防衛力強化の)内容が決まらなければ予算について申し上げることはできない」と煮え切らなかった。
財源のあいまいさは成長戦略にも及ぶ。脱炭素社会の実現に向け、原案は10年間に官民で150兆円超の投資を実現するとし、そのための政府資金を「将来の財源の裏付けを持った『GX経済移行債』により先行して調達する」とした。
首相は必要な政府資金の額を20兆円規模と表明している。ただ、GX移行債の償還財源などの詳細は夏以降に首相官邸に設置する「GX実行会議」で議論するとしており、参院選後に先送りされた形だ。