木に塗るだけで燃えにくくなる「特殊塗料」開発…建物の解体不要、文化財保全に一役(読売新聞 2022/05/22 05:00)
大手ゼネコンの大成建設は、木の表面に塗るだけで燃えにくくできる特殊塗料を開発した。既存の木造建築を解体せずに防火性能を高められる技術は珍しいといい、文化財の保全への活用が期待される。
大成建設は、樹脂や難燃性の高い薬品を配合した塗料を木に塗ると、高温時に燃焼を大幅に遅らせる効果がある薄い膜ができることを発見し、製品化した。外部評価機関の試験で、この塗料を施した木材は10分間火に当てても燃えない「準不燃材料」という、国土交通省認定の基準に達していることが示された。
木材を燃えにくくする従来の技術は、特殊な装置に入れて、圧力をかけて薬剤を内部に浸透させる必要がある。既存の木造建築を加工するには木材に解体したうえで、この装置に入るサイズでなければならない。コストが高い上、歴史的建造物の場合は対応できないものも少なくないという。
大成の開発担当者は「簡単に塗れて、燃え始めるまでの猶予時間を稼げる。焼失を防げる可能性が高まる」と説明する。文化財だけでなく、脱炭素で需要が高まる木造ビルの建設や、既設のマンションや戸建て住宅のリフォームといった一般建築にも活用できる。まずは自社受注の工事に使い、将来的に外部への販売も検討する。
文化財の防火対策は、2019年に那覇市の首里城正殿が火災で焼失したことで改めて問題になった。文化庁によると、国内の世界遺産や国宝の9割以上が木造建築で、6割は木造建築の密集地にあるため「火災の潜在的危険性が高い」という。京都市の寺の関係者は「放火や落雷による火災が不安」と話す。