「核共有」「防衛費倍増」「敵基地攻撃」「日銀は子会社」…安倍元首相の相次ぐ持論発信に自民党内から戸惑いの声

安倍元首相の持論発言に戸惑う自民党議員 政治・経済

「核共有」「防衛費倍増」…安倍元首相の相次ぐ持論発信に党内から戸惑いの声

「核共有」「防衛費倍増」「日銀は子会社」…安倍元首相の相次ぐ持論発信に党内から戸惑いの声(東京新聞 2022年5月16日 06時00分)

自民党の安倍晋三元首相が安全保障政策や改憲などに関し、テレビ番組や講演で積極的に発信している。防衛費の5年での倍増や、敵基地攻撃能力の保有を巡って相手国の「中枢攻撃」の必要性を主張したほか、日銀の独立性を軽視するような持論も展開。参院選を控え、あえて物議を醸す発言をすることで、保守層の支持を固め、自らの影響力を誇示する狙いもありそうだ。

安倍氏は4月21日、自ら会長を務める安倍派の会合で、防衛費の倍増に関して「防衛費の国内総生産(GDP)比2%は、5年くらいで達成する目標をしっかりと示すのが大切だ」と強調。敵基地攻撃では「中枢を攻撃することも含むべきだ」と訴え、4月末の党提言にはいずれも主張に沿った内容が明記された。

ロシアのウクライナ侵攻直後の2月には、米国の核兵器を日本に配備して共同運用する「核共有」の議論を提唱。これは非現実的として党提言に採用されなかったが、4月には憲法9条の改憲について「国会の憲法審査会で今こそ議論を」とたきつけた。今月は「日銀は政府の子会社だ」と発言して波紋を広げた。

岸田文雄首相は、党内最大派閥を率いて保守層への影響力が大きい安倍氏に一定の配慮を示す。昨年の党総裁選で安倍氏が推した高市早苗衆院議員を政調会長に起用し、自ら定期的に安倍氏の事務所に出向いて主張に耳を傾けている。

ただ、党内に対しても踏み込んだ発言を続けていることには党所属議員から戸惑いの声が上がる。防衛費の2%目標に関し、防衛相経験者から「必要額を積み上げるべきだ」と慎重論が相次いだ際、借金に当たる国債を財源にするよう求める安倍氏は「財務省主計局の課長補佐みたいなことを言う人がいる」と党内論議をけん制。ある防衛相経験者は「借金というのはどうなのか」と漏らした。

法政大の山口二郎教授(政治学)は安倍氏が政府や自民党を軍事的強硬路線に引っ張る役割を果たしていると指摘。ハト派の派閥「宏池会」を率いる首相は穏健派とされていたが「自民党の政治の本質は全く変わっていない」と批判した。

安倍元首相「日銀は政府の子会社」 国債買い入れ巡り発言

安倍元首相「日銀は政府の子会社」 国債買い入れ巡り発言 野党は問題視「とうとう本音が出た」(東京新聞 2022年5月10日 18時42分)

自民党の安倍晋三元首相は、日銀による市場を通じた国債の買い入れを巡り「日銀は政府の子会社だ」と発言した。立憲民主党など野党は日銀の独立性、中立性の観点から問題視し、追及を強める構え。識者から批判が出る可能性もある。政府、自民党は夏の参院選が迫る中、具体的な論評を避け、事態の早期沈静化を図りたい考えだ。

安倍氏の発言は9日、大分市での会合で飛び出した。「1千兆円ある(政府の)借金の半分は、日銀が買っている」と説明。「日銀は政府の子会社だ。60年の(返済)満期が来たら借り換えても構わない。心配する必要はない」と主張した。

安倍政権が進めた「アベノミクス」以降の経済政策を巡っては、日銀による大量の国債買い入れに依存して国の借金を膨らませる手法に対し、財政規律を重視する識者が批判してきた。安倍氏の発言は、政府が日銀を従属させる関係を積極的に唱えたもので、財政の信認を揺るがしかねないとの懸念が強まりそうだ。

立民の西村智奈美幹事長は10日の記者会見で「アベノミクスと称して異次元の金融緩和を主導した結果、今の財政、経済状況がある」と指摘。「とうとう本音が出た」とも語り、国会などの場でただす意向を示した。(共同)