菅総理は国民の命を守り、経済を回復させるという二兎を追ったが、実際は、コロナ感染の防止は国民任せ、業者任せでまったくの無策だった。そのため感染は拡大し、今、医療は崩壊の危機に直面している。それでも総理は、GoToと感染拡大を結ぶ「エビデンス」はないとして、医療関係者からの悲痛な声を無視し続けた。
GoToを一時停止に踏み切ったのは、国民の命を心配したからではなく、各社の世論調査で内閣支持率が大幅に下落したからである。
その辺の事情と問題点を整理した。
GoToキャンペーンの目的と実施の条件
GoToキャンペーンの目的は何であったか。本年4月20日の閣議決定によると、その目的は、
感染症拡大の収束後の経済のV字回復のための反転攻勢を仕掛け、日本経済を一気呵成に安定的な成長軌道に戻す。このため、甚大な影響を受けている観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテインメント事業をターゲットに、官民を挙げたキャンペーンとして大規模な支援策を短期集中で展開することにより、消費を思い切って喚起し、地域の活力を取り戻す。
とある。
これらの業種はすそ野が広く、広範囲における需要を喚起する。また、コロナ禍の心配や自粛などで閉塞状況にある国民に、感動や楽しい刺激を与える。
GoTo実施は、感染症の拡大が収束した後
ウイルスは人とともに移動するため、人が動けば感染は拡大する。そのため閣議決定には、GoToキャンペーンは、「新型コロナウイルス感染症の拡大が収束し、国民の不安が払拭された後」(26ページ)に実施するとなっている。
「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の変更について 令和2年4月 20 日 閣議決定
「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策 ~ 国民の命と生活を守り抜き、経済再生へ ~」
政府がGoToトラベルキャンペーンを、東京を除外する全国で開始したのは7月22日である。しかし、コロナの感染状況は、全国的には6月後半から感染の第2波の傾向が見られ、7月22日頃はほとんどの都道府県で、感染はかなりの勢いで拡大していた。
<問題点>感染拡大の傾向が顕著になった7月22日からGoToキャンペーンを実施したのは時期尚早だったのではないか。もしGoToキャンペーンを実施するのなら、感染拡大防止対策を強化し、感染を沈静化しする方策と並行して実施すべきではなかったか。
<問題点>感染は8月をピークにその後はやや下火になったものの収束したとは言えず、特に首都圏では相当な感染状況にあった。そのような状況下で10月1日から、東京をGoToトラベルの対象に加え、同日に、全国でGoToイートを開始した。これは感染拡大を助長したようなものだ。
GoToと感染拡大の関係 「エビデンス」はない?
季節はコロナが活発化する冬に向かい、政府のGoTo推進キャンペーンの影響により、感染は第1波、第2波を超え、各都道府県で記録を更新した。
第2波における感染者は、感染しても重症化しにくい若者に多く見られたが、第3波は重症化する危険性が高い中高年者に増加が見られる。医療関係者からは医療崩壊の危機を訴える声が日増しに高まった。
感染が急拡大した北海道は、12月8日、旭川市の吉田病院など2か所に陸上自衛官「看護官」の派遣を要請した。また、大阪府は12月11日、大阪コロナ重症センターと府立中河内救命救急センターへ看護官らの派遣を要請した。
<問題点>感染拡大が続く中、総理も国土交通大臣も「GoToによって直接感染が広がったかどうか、エビデンスはない。」とおっしゃっていた。何を根拠に判断したのか。
<問題点>12月14日、総理は急きょ、GoTo事業を年末年始の12月28日から来年1月11日までの間、全国的に中止すると発表したが、判断の根拠は何か。
<問題点>総理は今でもGoTo事業がコロナ感染を拡大するエビデンスはないと考えているか。エビデンスがないのにGoToを一時中止するというのは、論理的に矛盾するのではないか。
東京都における無症状の陽性率 15万人~20万人の無症状者が市中で活動
豊洲市場では8月15日に最初の陽性者が出て以降、感染判明が相次いでいたが、11月に入って急増した。業者団体「豊洲市場協会」は、特に感染者が多い約480の水産仲卸業者の従業員約3500人を対象に任意での自主検査を始めた。11月2日~12月4日に3111人が受け、陽性者は71人、陽性率は2.3%だった。
世田谷区では、10月から高齢者施設などの希望者を対象に症状の有無にかかわらず行っている区独自のPCR検査で、12月14日までに3600件余りの検査を実施し、53件の陽性を確認したと保坂区長が発表した。陽性率は1.5%である。
NHK 「東京 世田谷区 独自PCR検査 来年3月末まで延長 プール方式も」2020年12月17日 19時34分
世田谷区の保坂展人区長が記者会見で明らかにしました。それによりますと、世田谷区がことし10月から高齢者施設などの希望者を対象に症状の有無にかかわらず行っている区独自のPCR検査では、今月14日までに3600件余りの検査を実施し53件の陽性を確認したということで、保坂区長は感染拡大防止に役立ったと意義を強調しました。
東京・新橋駅の目の前にある「新型コロナPCR検査センター」。1日に最大780人を検査できる。工務店などを経営する木下グループの子会社が運営し、関連の医療法人が監修している。12月4日にオープン、費用は税別2900円。陽性率は全体の1.0~1.5%という。
夕刊フジ「zakzak」 格安「PCR検査」の罠 医師の判断なく「疑い」域を出ず、保健所への報告義務もなし
テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」2020年12月7日(月)08:00~09:55
上記3例で見るように、東京都において、症状が出ていない任意の多数を検査した場合の陽性率は、1%~2%であると推定される。
東京都の人口は、現在、約1390万人(23区は約960万人)であるから、それに陽性率を掛けると、14万人~25万人の無症状の陽性者が、本人も気が付かないまま、市中で日常の活動をしていることになる。
これは12月17日に過去最高を記録した822人の170倍~300倍である。医師が判断した正確な数値とは断定できないが、東京都では毎日発表される感染者数のおおよそ200倍の無症状者が市中にいることになる。
<問題点>GoTo利用者は延べ5000万人泊に対して感染者数は約300人というが、多数の無症状者が他人に感染させたケースや、逆に感染しても無症状のため数値に上がらないケース、さらには正しく報告されない場合がある。それらを考慮に入れないで、300人だけを取り上げ、「エビデンスがない」というのは、自分に都合よく理屈をこねているに過ぎない。国民の命と健康を軽視した発想ではないか。
<問題点>無症状の多数の陽性者が無自覚のまま市中で日常を営んでいるが、その対策は必要だと考えるが、政府の対応が見えない。
「この3週間がまさに正念場であり、勝負だ。」 政府は口だけ、何の対策もしていない。
西村康稔経済再生担当大臣は、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が開かれた11月25日の記者会見で、「寒くなり、より密閉し、乾燥した中で活動が行われると、感染リスクが上がる要因になる。冬に向けて、感染が拡大すれば、年末年始の医療機関の体制が弱くなりがちなところに、重症者が増え、緊迫した状況になることも想定しなければならない」と指摘し、「この3週間がまさに正念場であり、勝負だ。それぞれの地域で対策を強化していただいており、この期間で、感染拡大を抑制していきたい」と述べ、都道府県と連携し、飲食店への営業時間の短縮要請など集中的に対策を強化する考えを強調した。
民間業者は消毒や3密回避を徹底し、営業時間を短縮している。利用客はマスク・消毒・3密回避。医療従事者は命を削る思いで患者の治療にあたっている。国民や民間はやるべきことはすべて徹底してやっている。
<問題点>ところが政府は感染防止のために何をしたか。国民と民間業者に自助努力を要請するだけだ。「この3週間がまさに正念場であり、勝負だ。」と定めた期間に、政府はどのような対策を講じたのか、その成果はどうだったのか。
<問題点>5人以上の会食は感染率が高いとして、政府は国民に自粛を求めたが、総理は、12月14日に突然、GoToキャンペーンを今月28日から来年1月11日までの間、全国一斉に一時停止すると発表した。しかし、まさにその日、総理は15人の経済界の人と会食し、その後も、幹事長ら8人と忘年会をしている。16日には、「国民の誤解を招くという意味で、真摯に反省している」と陳謝したが、その日の夜も会食をはしごしている。
総理には、国民の命を何としても守るという本気度を感じない。
グランドデザインのない場当たり的な対応、突然の中止は業界と利用客に大打撃
政府はコロナ対策と経済との両立を目指したが、実態は、コロナ対策は国民や業者に任せ、経済対策はGoToキャンペーンに多額の予算をつけ、政府が主導した形だ。総理肝いりと言われるGoToなので、感染が拡大し中止を求める声が大きくなってもエビデンスがないとして跳ね除けた。それどころか、来年1月に終了予定のGoToトラベルを6月まで延長することを閣議決定した。
ところが、突然の年末年始中止の発表である。一番の稼ぎ時であり、しかも仕入れの段取りはすでに終わっている。経済優先どころか、業者への大打撃となった。
<問題点>キャンセルを受けた参加業者には、政府はキャンセル料相当を負担するとしているが、それはいつ支給されるのか。支給が遅いと業者は資金繰りが出来ずに倒産に追い込まれる可能性がある。
<問題点>地域共通クーポンを利用できる土産物店や飲食店、公共交通事業者について何も支援がなされない理由は何か。
<問題点>年末年始の事業適応中止機関が終わる来年1月11日の翌日からは、GoToトラベル事業を利用してよいという考えか。改めて判断するのか。その場合、再開は何を根拠とするのか。
医療体制を強化せよ!
このような場当たり的な大失態の原因は、総理に、国民の命を守り、かつ経済を回復させるための、しっかりしたグランドデザイン(全体的な構図)がないことに起因すると考える。特に、コロナ感染防止を、国民の自助努力、国民の自己責任に委ね、政府が積極的に取り組まなかったところに大きな原因がある。
第1波の時、未知のウイルスとの闘いと準備体制の欠落のため、多くの命が犠牲になった。第1波が終わった時、第2波、第3波が襲うことは予想できた。その間に、検査体制や医療体制の強化を整備することができた。
検査体制は少しは強化されたようだが、世界先進国と比較してまだまだ足りない。医療体制においては補強されていない。コロナ患者を受け入れた病院が経営が悪化し、命を懸けて治療にあたる医師や看護師への待遇が考慮されるどころか、反対に、ボーナスもカットされた。おかしいではないか。
<問題点>これから冬が深まるにつれて、コロナ患者が増えるだけでなく、通常でも、脳卒中や心筋梗塞や大動脈疾患の患者が増える。医療体制は大丈夫か。施設が整っても医師や看護師は足りるか。命の選別という事態は生じないか。
<問題点>秋以降の感染拡大に対処するため、医療体制の強化は当然予測されたが、何故、政府は医療体制を強化しなかったのか。今からでも医療従事者の待遇を大幅に引き上げるべきだと考える。
国民は年末年始をどのように過ごすべきか。無策の政府の下では、国民は自分や家族の健康と命は自分たちで守るしかない。
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