4次の産業革命と、それがもたらした社会変革

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人類はこれまで4次にわたる産業革命と、その都度大きな社会変革を経験してきた。今後どのような社会に向かうのか。先ずは、第1次から第4次までの産業革命とそれがもたらした社会変革について、概要をまとめた。

第1次産業革命 ・・ 農耕社会から工業社会へ、大英帝国の時代

第1次産業革命は、18世紀後半にイギリスで始まった世界で最初の産業革命である。綿織物を製造する織機と紡績機及び動力としての蒸気機関が発明され、工場の機械化が進んだ。植民地のインドから綿花を輸入し、工場で大量の綿織物が生産された。モノづくりが人の手から機械に移り、産業が工業化された。

蒸気機関が改良され、鉄道や蒸気船にも活用されるようになると、大量輸送が可能になり、交通革命をもたらした。

産業革命は、国内的には、芽生えつつあった資本主義社会を加速させ、基本的な生産基盤が農業から工業へ移った。それに伴って、農村の人口は都市に流入し、都市では資本家と労働者の格差が拡大し、社会問題が深刻化した。労働者は自分たちの権利を守るため労働組合を結成し、地位向上を目ざして社会主義運動を起こすようになった。

対外的には、ヨーロッパ各国は、原材料を安価に獲得しそして生産した工業製品を独占的に売りつける市場としての植民地の獲得をめざして、激しく競争するようになった。南北アメリカ、アフリカ、アジアが標的となった。

いち早く産業革命をなしたイギリスは、18世紀後半から19世紀半ばにかけて「世界の工場」として大きな地位を占めることになり、大英帝国の繁栄を極めた。

第2次産業革命 ・・ 重化学工業、ドイツやアメリカの台頭

第1次産業革命が木綿工業を中心とした軽工業分野で起こったのに対して、第2次産業革命は、19世紀末から20世紀初頭にかけて、鉄鋼・機械・造船などの重工業、そして石油資源を利用した化学工業という重化学工業分野を開いた。第2次産業革命はドイツとアメリカで著しい発展を遂げた。

エネルギー源としては、第1次産業革命の石炭に対して、第2次産業革命では石油と電力が主力となった。

工業製品を大量に生産できるようになっただけでなく、船舶に加え自動車や航空機が発明され、物流網や輸送手段が発達した。また、工業製品だけでなく、飲食料品や衣類などの製造においても機械化が進み、消費財の大量生産の仕組みが確立された。大量生産、大量輸送、大量消費の時代が到来した。フォード社による自動車の大量生産は、その時代を象徴する一つである。

第3次産業革命 ・・ コンピューターとインターネットの発達による情報革命

第3次産業革命は、1970年代以降、コンピューター、インターネット、情報通信技術の発達による、人間の知的作業の効率化や生産ラインの自動化である。産業構造や社会経済活動は情報化・デジタル化に大きく舵を切った。データ通信やソフトウェア開発を手掛けるIT企業が台頭した。

主なIT関連企業(年月日は設立日

IT企業設立年月日 創業者
Intel Corporation1968年7月18日ロバート・ノイス、ゴードン・ムーアら
Apple Inc.1976年4月1日スティーブ・ジョブズ、スティーブ・ウォズニアック、
ロナルド・ウェイン
Oracle Corporation1977年6月16日ラリー・エリソン
Microsoft Corporation1975年4月4日
1981年6月25日
ビル・ゲイツ、ポール・アレン
Amazon.com, Inc.1994年7月5日ジェフ・ベゾス
Yahoo! Inc.1995年3月1日楊致遠(ジェリー・ヤン)、デビッド・ファイロ
Google LLC1998年9月27日ラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン
LinkedIn2002年12月18日リード・ホフマン
Facebook2004年2月4日マーク・ザッカーバーグ、エドゥアルド・サベリン

Hewlett-Packard Company(HP)は、1939年1月1日、ウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードにより、当初はオシロスコープに代表される電気・電子計測器メーカーとして創業された。その後、1980年代にUNIXサーバー、ワークステーション分野に参入した。

International Business Machines Corporation(IBM)は、1911年6月16日、チャールズ・フリントとトーマス・J・ワトソンによって、タイムレコーダー、計量器、作表機などのメーカー子会社が合同した持株会社としてつくられた。後にIBMに発展し、特に1960年代以降はコンピュータ市場で圧倒的な影響力を持った。

第4次産業革命 ・・ IoT、ビッグデータ、AI、5G、AIロボット、現実とバーチャルの融合

コンピューター性能の向上とインターネットの普及・高速化に伴ってデジタル化は深化を遂げ、2010年頃から新しい時代が到来した。この第4次産業革命を担う主な技術革新に次のものがある。

IoTとビッグデータ

一つは、IoT及びビッグデータである。IoT(Internet of Things)とはモノのインターネットと訳され、あらゆるものがインターネットに繋がり、情報を収集し、制御する。或いは、相互に情報交換し、相互に制御する。
工場の製造過程、商品や金融の取り引き、交通や物流、店のレジ、個人のネット検索情報、スマートウオッチによる健康管理など、あらゆる情報が収集され、ビッグデータとして構築される。ビッグデータは解析され、新たな価値を生み出す。

AI(人工知能)

二つは、AI(人工知能)である。収集したビッグデータは、ディープラーニング(深層学習)を搭載したAIによって解析され、判断され、将来を予測する。人間がコンピューターに逐一指示しなくても、コンピューター自らが学習し、一定の判断を行うことが可能になった。

AI搭載ロボット、ドローン

三つは、AI搭載ロボットやドローンである。ロボットはまず製造過程に導入されたが、現在では事務処理や接客などの分野にも導入されている。これまで人間が行っていた仕事は、次第にAI或いはAIロボットが担うようになってきた。
また、ドローンは、測量や農作業、インフラ点検や災害状況の把握、物資の輸送など、多方面での活用が始まっている。無人戦闘機の開発も進んでいる。

5G、6Gの通信網

四つは、5Gや6Gの通信網である。5Gとは、第5世代(5th Generation)移動通信システムの略称である。

第1世代(1979年~)‥移動しながら使える無線式アナログ電話
第2世代(1990年代)‥通信をデジタル化し、メールなどで通信ができる携帯電話
第3世代(2000年代)‥データ通信をさらに高速化。ガラケイ、ドコモの「iモード」
第4世代(2010年代)‥スマートフォンで通話やメールの他、動画やアプリなどが楽しめる

5G(2020年~)は、4Gと比較して、高速・大容量、低遅延、多数同時接続の特徴を持つ。5Gは現実空間とサイバー空間を融合させ、遠隔医療、自律自動運転、イベントや観光の高臨場鑑賞などを可能にする。

第1次産業革命から第4次産業革命のまとめ

第1次産業革命、第2次産業革命 ‥ 工業革命

動力の観点から見ると、家畜や人力に頼っていた社会から、第1次産業革命では石炭による蒸気機関、第2次産業革命では石油や電力によるエンジンやモーターに移り、生産性が飛躍的に向上した。社会は、農耕社会から軽工業、重化学工業の産業社会へと移行した。

2つの産業革命は、モノづくりの産業を拡張・効率化するとともに、私たちの生活においては、自動車、家電、多種多様な日用品などモノの豊かさを提供した。また、交通・物流面では、長距離、高速、大量の移動や輸送を可能にした。

第3次産業革命、第4次産業革命 ‥ 情報革命

コンピューターやインターネットの発明と普及により、情報の価値が重視される社会が到来した。さらに、現在は、インターネットがモノと結びつき、大量の情報はビッグデートとしてAIが解析し、AIが組み込まれたロボットが人間に代わって仕事を効率よくこなす時代を到来させた。AIと5Gの結合は、現実とバーチャルを融合させ、新たな現実を創り出している。