皇居で新春恒例の「歌会始」 お題は「窓」 陛下は2年連続でコロナ収束願う歌に

歌会始の儀_2022年1月18日 文化・歴史

新年恒例の宮中行事「歌会始の儀」が18日午前、皇居・宮殿「松の間」で行われた。今年のお題は「窓」で、天皇、皇后両陛下や皇族方、天皇陛下から招かれた召人(めしうど)、選者、入選者の歌が、古式にのっとった独特の節回しで披露された。

天皇陛下は、新型コロナウイルス収束後に世界との人の往来が再び盛んになる日が訪れることへの願いを詠まれた。

皇后さまは昨年9月に皇居・御所に移り、窓から見える大きな木々の眺めと、ここで長年暮らした上皇ご夫妻への感謝の思いを歌にした。

昨年12月に成年皇族となった両陛下の長女愛子さまも初めて歌を寄せ、学習院女子高等科2年の夏休みに英国のイートン校に短期留学する前の心弾む気持ちを表した。学業優先のため儀式には出席しなかった。

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天皇陛下
世界との往き来難(がた)かる世はつづき窓開く日を偏(ひとへ)に願ふ

皇后雅子さま
新しき住まひとなれる吹上の窓から望む大樹のみどり

秋篠宮さま
窓越しに子ら駆け回る姿を見心和みてくるを確かむ

天皇、皇后両陛下の長女 愛子さま
英国の学び舎に立つ時迎へ開かれそむる世界への窓

秋篠宮家の次女佳子さま
窓開くれば金木犀の風が入り甘き香りに心がはづむ

常陸宮妃華子さま
幼子は新幹線の窓に立ち振りむきもせず川ながめゐる

寛仁親王妃信子さま
成人を姫宮むかへ通学にかよふ車窓の姿まぶしむ

三笠宮家の彬子さま
蛍光灯映る窓辺に思ひだす大正帝の螢雪の苦を

高円宮妃久子さま
車窓より眺むる能登の広き海よせくる波は雪降らしめつ

高円宮家の長女承子さま
コロナ禍に換気もとめて閉ぢぬ窓エアコン眺めてしばし案ずる

【入選者(年齢順)】

富山県 西村忠さん(85)
剱岳三ノ窓より朝日さし富山平野に田植はじまる

福岡県 高木典子さん(84)
海を見るうしろ姿の絵のありて時をり共にその窓に立つ

福岡県 田久保節子さん(81)
柿わかばきらめくまひる窓あけて天道虫を風に乗せやる

香川県 藤井哲夫さん(78)
出来た子もそれなりの子も働いて働きぬいて今日同窓会

東京都 三浦宗美さん(68)

夫逝きて十年(ととせ)を過ぎし今もまだ窓のそとには灰皿のある

青森県 高橋圭子さん(60)
斜陽館に少しゆがんだ窓ガラス津島修治も見てゐたはずの

東京都 川坂浩代さん(55)
パソコンの小さき窓にそれぞれの日常ありて会は始まる

茨城県 芳山三喜雄さん(49)
ベランダに鯉幟ゆれる窓を指し君は津波の高さ教へる

東京都 伊藤奈々さん(41)
窓を拭く人現れてこの場所がほぼ空だつたことに気が付く

新潟県 難波來士さん(16)
窓の外見たつて答へはわからない少し心が自由になれる

【召人(めしうど)】

菅野昭正さん
きはやかに窓に映えたる夕虹は明日の命の先触れならむ

【選者】

篠弘さん
一本のザイルたぐりて窓を拭く岩場をこなす若者の腕

三枝昂之さん
夕映えの町が暮らしの町となり窓にひと日の灯が点りゆく

永田和宏さん
閉ざすとき窓に光の残りゐて呼べど応へぬ人ありわれに

今野寿美さん
廃校の窓の下にもこの春の花あり土地の人が植ゑにき

内藤明さん
まづ窓の位置を決めたり夏の夜に父と作りし模型の小部屋