創価学会は全力で戦った? 新党・中道、衆院選で大敗【解説委員室から】(時事通信 2026年02月10日20時00分)
高橋正光(時事通信・解説委員長)
中道勢力の結集を掲げて立憲民主党と公明党の議員で結成した新党「中道改革連合」(中道)は8日投開票の衆院選で、公示前の172議席から49議席に激減した。1小選挙区当たり「1万~2万票」とされる公明党の支持母体・創価学会の組織票を武器に、各選挙区で自民党に競り勝つ戦略を描いたが、勝利したのはわずか7選挙区。学会は、公明候補を支援したこれまでのように、組織をフル回転させて票を掘り起こしたのか? 過去の国政選挙と比較、分析した。(時事通信解説委員長・高橋正光)
東京の比例、参院選から微減

2021年10月の前回衆院選でも、公明は小選挙区で自民候補を支援し、見返りに比例で公明への投票を求める形の選挙協力を継続。当然、学会員は多くの小選挙区で、立民を批判し、自民候補への投票を依頼して回った。
このことを踏まえ、前回、東京で立民が自民(自民系無所属を含む)と戦った20選挙区の結果を見ると、立民の15勝5敗。東京での比例票は、立民129万8166(得票率20.5%)、公明57万3191(同9.0%)で計187万1357票(同29.5%)だった。
また、昨年7月の参院選の東京での比例の得票は、立民81万6962(同11.7%)、公明53万6029(同7.7%)の計135万2991票(同19.4%)。
これに対し、中道で臨んだ今回の衆院選は、24小選挙区で自民に全敗し、比例は111万9155票(同16.5%)。前回衆院選と比べ、得票率が13.0ポイントの大幅減。参院選との比較では、2.9ポイント低下した。
もっとも、前回衆院選では、選挙協力により公明の比例票に自民支持者の票が一定程度含まれていることを考慮すると、純粋な公明・学会票は、参院選の得票数が実態に近いと言える。学会員の高齢化などにより、国政選挙での公明の集票力が減少傾向にあったことを踏まえれば、2.9ポイント減という数字からは、東京の創価学会が組織を挙げて、中道の比例票の掘り起こしに取り組んだことがうかがえる。
北海道も踏みとどまる
さらに、東京以上に労組の組織が強固とされる北海道は、前回衆院選の小選挙区で、立民は自民に対し8勝3敗。比例は、立民69万4578(得票率29.0%)、公明25万3344(同10.6%)で合わせて94万7922票(同39.6%)。また、参院選の比例は、立民44万1997(同17.4%)、公明21万9288(同8.6%)の計66万1285票(同26.0%)だった。
これに対し、今回の衆院選は、小選挙区で中道はわずか1勝。比例は60万5889票(同24.6%)。前回と比べ落ち込みが激しいが、参院選との比較では、東京以上に踏みとどまっているのが分かる。東京と同様、北海道の学会も、中道票の確保に全力を挙げたようだ。
一方、小選挙区では、新党結成時の期待通り、学会の組織票が立民出身の中道候補に上積みされたのだろうか? 立民を批判し、公明を支援してきた現場の学会員には当然、戸惑いもあっただろう。
これを分析する材料も、北海道と東京にある。というのは、前回衆院選で公明は、北海道と東京の各1選挙区に候補者を擁立し、立民と議席を争っていたからだ。
北海道10区は前回、立民・神谷裕氏と公明・稲津久氏の一騎打ちとなり、神谷氏が勝利。得票数はそれぞれ7万8362(同50.8%)、7万5990(同49.2%)。
そして今回は、中道から出馬した神谷氏と自民・渡辺孝一氏の一騎打ちで、得票はそれぞれ、7万4908票(同50.0%)、7万4887票(同50.0%)。神谷氏がわずか21票差で逃げ切った。神谷氏には、学会の組織票が加わったにもかかわらず、得票率を低下させた。

公明撤退の選挙区、得票率低下
また、東京29区は前回、公明・岡本三成氏に立民・木村剛司氏ら野党の4候補が挑み、岡本氏が6万0100票(得票率33.2%)を得て勝利。木村氏は4万7996票(同26.5%)で落選した。
今回は、岡本氏が比例に回り、地元の学会は中道の木村氏を全面支援。自民の長沢興祐氏ら5人と議席を争った。結果は、長沢氏が8万0538票(同41.4%)を得て初当選。木村氏は4万5358票(同23.3%)の完敗だった。
東京29区は、荒川区と足立区の一部が選挙区で、都内でも学会の組織力が強いことで知られる。にもかかわらず、木村氏は得票数・率ともに低下させた。木村氏の演説会には、東京の学会幹部がチェックに訪れており、少なくとも幹部クラスは、木村氏のテコ入れに全力を挙げた。
もし、幹部の指示通り、比例で中道に投票した学会員ら旧公明の支持者がほぼ全員、選挙区でも木村氏に1票を投じていれば、長沢氏との票差が相当、詰まっていてもおかしくない。
公明党が候補を立てた選挙区では、学会幹部の指示の下、会員が手分けして知り合いを回り、投票をお願いするのがこれまでの常とう手段。行動力で会員以外の支持を取り付け(いわゆるF=フレンド=票取り)、票を積み上げてきた。
今回は、東京に限らず、各ブロックの比例名簿の上位を公明出身者が占めた。異例の短期決戦を新党で臨んだ事情もあり、学会としては、比例での中道票の獲得を重視。小選挙区の候補者の支援にまで、十分手が回らなかったに違いない。
もちろん、一部の会員には、かつての「敵」を応援することへの抵抗感もあっただろう。北海道10、東京29の両選挙区での得票数・率が、このことを裏付けている。
(2026年2月10日掲載)
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高橋正光(解説委員長)
1986年4月時事通信社入社。政治部首相番、自民党小渕派担当、梶山静六官房長官番、公明党担当、外務省、与党、首相官邸各クラブキャップ、政治部次長、政治部長、編集局長などを経て、2021年6月から現職。公明党担当として、連立政権の発足を取材。


