<論説> 【政府の経済対策】地方創生の視点で(5月14日)…福島民報

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【政府の経済対策】地方創生の視点で(5月14日)(福島民報 2025/05/14 09:19)

トランプ米政権の関税政策を受け、政府は国内経済支援「緊急対応パッケージ」の柱に消費喚起強化などを据えた。家計の可処分所得拡大や物価高対策に重点を置いたが、石破茂首相が最も重視する地方創生の観点からの施策が盛り込まれているとは言い難い。今後、検討される追加の経済対策に、地域内に経済循環の新たな輪を生み出す仕掛けを取り入れてほしい。

緊急対応パッケージが打ち出した国内消費の強化策は、低所得世帯への3万円給付、住宅購入の後押し、観光需要喚起など2024(令和6)年度補正予算、2025年度予算を早期に執行する方針を打ち出した。物価高対策として、ガソリン価格の引き下げや電気・ガス料金の支援といった項目が並ぶ。

夏の参院選前に策定を目指すとされる本格的な経済対策の芽だし的な位置付けと捉えれば、まず、家計の下支えに重きを置いた狙いは理解できる。ただ、何より忘れられてならないのは執行される予算が一時的な景気浮揚にとどまらず、持続可能な経済活動の創出につながるかどうかという視点ではないか。

先進国による40年前の「プラザ合意」を受け、政府は住宅投資や公共事業を促進する内需拡大策を進めた。財政出動はバブルを生み、日本経済は後遺症に苦しみ続けた。同じ轍[てつ]を踏んではならない。歴史を再検証し、真に有効な対策に結び付けるべきだ。

石破政権は「地方創生2・0」を看板政策に掲げている。令和の内需拡大策では、都道府県など一定圏域内での経済循環の活発化を念頭に置いてもらいたい。例えば、工業製品、食料品、農林水産物の6次化商品をはじめ、観光などサービス分野も含めた企業と消費者間、企業同士の「地産地消」を強力に推進する。実現にはさまざまな課題があろうが、こうした仕組み作りこそ、地方に活力を取り戻す第一歩になるはずだ。中央の大手資本に過度に依存せず、自立した地域経済の確立を試行する挑戦でもある。

産業構造の転換も緊急対応パッケージの柱の一つとなり、半導体、蓄電池、医薬品といった重点分野が明記された。業種を絞るのでなく、それぞれ異なる地域特性に応じた事業集積を目指す観点も必要になる。(菅野龍太)