国内の会員世帯数は、公称827万世帯。カリスマの死によって、超巨大宗教団体が揺れだした――。
「11月15日、創価学会の池田大作名誉会長が、老衰により死去しました。池田氏は1960年に、異例の若さで第3代会長に就任。その後、長年にわたり最高指導者として君臨し、“折伏(しゃくぶく)”と呼ばれる会員数の拡大運動を進め、公明党を創設。創価学会を現在の規模にまで育て上げました。創価学会=池田大作といえるほど、絶大な影響力を持っていました」(社会部記者)
池田氏が最後に公の場に姿を見せたのは、13年前。Xデーがやってくることは、学会員も覚悟はしていた。宗教学者の島田裕巳氏はこう語る。
「とはいえ、あまりに大きな存在だったので、創価学会にとってその喪失感は計り知れません。とくに、女性部による公明党の選挙活動は『池田先生のために』というモチベーションでおこなわれていました。今後も熱心に活動を続けられるとは思えず、公明党にとっては大きな痛手です」
今後、巨大組織の崩壊を防ぐためには、“ポスト池田大作”が必要となる。現状、会長としてトップを務めるのは、10月26日に5期めの再任が決まった原田稔氏だ。
「池田さんの死は、創価学会にとって最大のクライシス。危機をバネにして、当面は原田氏がトップを続けるでしょう」
と語るのは、創価学会に詳しいジャーナリストの乙骨正生氏だ。
「しかし、任期改選を迎える4年後には、原田氏は86歳です。ナンバー2にあたる理事長の長谷川重夫氏も同い年。2人とも高齢すぎますよね。ここに“火種”があります。おもな後継者として報じられているのは、まず谷川佳樹氏。主任副会長というナンバー3に当たる人物で、1957年生まれです。その対抗馬は、北条浩第4代会長の娘婿で、『聖教新聞』の代表理事を務める萩本直樹氏です。こちらは71歳ですね」(乙骨氏)
だがカリスマを失った学会では“血筋”という正統性を求める声が出る可能性がある。
「池田さんの長男、70歳の博正氏です。池田さん本人は世襲を否定していますが、池田さんが第3代会長を“勇退”してから、第6代会長の原田氏まで次々と会長は代わっているわけで、世襲ではないという言い訳も立つ。池田先生の代理や名代として、表舞台に立つことも多く、死去の発表でも、原田会長の隣で落ち着いて文章を読み上げていました。実際、過去には博正氏を米国の創価学会のトップにさせたあと、“逆輸入”で後継者にしようという動きがあったそうです。求心力を維持するために、博正氏を担ぐ可能性は否定できません」(同前)
一方、博正氏に対抗するのが、“若き血”だ。
「原田会長の息子である星一郎氏ですね。高齢の後継者候補が多いなか、今年で51歳という若さです。そもそも原田会長は自身が制定した会憲で、創価学会インタナショナル(SGI)を会長の指揮統制下に位置づけた人間です。原田会長こそが、世界192カ国を含む、すべての創価学会の総帥であるということになり、会長職が大変な権限を持つことになったのです。そういう野心のある人物が、莫大な利権を生む創価学会の組織を簡単に“他人”に渡すとは考えにくい。しかも星一郎氏は現在、教学部長です。創価学会は1991年に日蓮正宗から破門され、独自の教義体系を作ろうとしてきました。11月16日には、新たな教義体系を書いた『創価学会教学要綱』が刊行されました。こうした急進的な動きの責任者が、星一郎氏ですよ」(同前)
池田ジュニアvs.原田ジュニア――。だが創価学会は、息子同士の跡目争いだけでなく、“クーデター”の可能性もはらんでいる。両親ともに学会員の家庭に生まれ、“エリート信者”として70回以上池田氏と会ったことがあるという、お笑い芸人の長井秀和氏はこう語る。
「原田会長をはじめ、現在、創価学会の上級幹部は東大出身の“東大閥”で占められています。しかし、学会内には“創価大学派閥”があるんですよ。彼らの頂点である正木正明氏は、創価大学の3期生で、池田さんから非常に寵愛を受けてきました。理事長まで務め、次期会長と目されていましたが、2015年に閑職に追いやられ、彼に同調する人々も冷や飯を食わされてきました。正木氏は、公明党は自民党に迎合せず、リベラルな政党として衆院選から撤退すべきだと主張しており、徹底的に池田さんの教えに従う、いわば“原理主義”的な立場です。彼が声を上げれば、今の創価学会の2割ぐらいの人物がついていくのではないでしょうか」
乙骨氏も、“原田体制”の脆弱さを指摘する。
「現役の学会幹部からは『宗教的にも政治的にも、原田会長のしていることはおかしい』との声が聞こえてきます。ただ、原田会長は『池田先生が認めている』という“虎の威”を借りて、正当化してきました。それが崩れた今、内紛が起きる可能性は高まりこそすれ、減ることはありません」
“先生”が希求した平和とは程遠い……。
( 週刊FLASH 2023年12月12日号 )