マイナカード偽造「1枚5分、技術や準備は不要」中国籍の女証言…本人確認に目視のみ多く悪用拡大
マイナカード偽造「1枚5分、技術や準備は不要」中国籍の女証言…本人確認に目視のみ多く悪用拡大(読売新聞 2024/05/25 07:02)
マイナンバーカードの偽造が相次いで発覚している。不正対策による「信用」で本人確認時のチェックが甘くなり、悪用につながっているとみられ、SNSでは1万~2万円で流通しているという。中国籍の被告が取材に応じ、偽造の実態を証言した。(尾藤泰平)
最大60枚
「作業は簡単で準備や技術は要らない。5分もあれば1枚作れる」。マイナカードを偽造したとして、警視庁に昨年12月、有印公文書偽造容疑などで逮捕された中国籍の女(27)(1審で懲役3年、控訴中)は東京拘置所でそう語った。
女が偽造に手を染めたのは昨年6月頃。生活費に困り友人に相談すると「カードを作る仕事」を紹介された。中国のSNS「微信(ウィーチャット)」で「ボス」に連絡し偽造法の説明を受けると、作業用のパソコンとプリンターが自宅に届き、個人情報がメールで送られてきた。
作業は偽のICチップが埋め込まれた白いカードの表裏に個人情報のデータを印刷するだけ。多い時には1日約60枚のカードを偽造して指定された国内の住所に郵送した。日当は約1万2000~1万6000円相当の電子マネーだった。
警視庁は指示役が中国にいるとみて捜査。同じ仲間からの依頼でマイナカードを偽造した疑いで、今月15日、中国籍の2人を有印公文書偽造容疑などで逮捕した。偽造カードが携帯電話の契約などに使われた可能性があるとみている。
1万~2万円で売買
2016年に運用が開始されたマイナカードは今年4月末時点で国民の8割にあたる約9900万枚が交付され、外国人にも約290万枚発行されている。
行政サービス以外の利便性も高く、本人確認の証明書として携帯電話の契約や口座開設などの場面で使われてきたが、確認は目視のみのところも多かったとみられる。全国銀行協会(東京)によると、ICチップの情報を読み取って確認する機器の導入は大手銀行など一部に限られる。
昨年3月には、東京都葛飾区の携帯電話販売店で偽造マイナカードを提示し、スマートフォンを不正契約しようとしたとしてベトナム国籍の男が警視庁に逮捕された。偽造マイナカードは中国語やベトナム語のSNSで1万~2万円で売買されているといい、警視庁幹部は「発覚している不正はごく一部だろう」と語る。
外国人組織
外国人らが使う偽造の証明書はかつて、3か月を超えて滞在する場合に交付される「在留カード」が主流だった。警察庁によると、20年には偽造在留カード所持などの摘発が790件に上った。このため出入国在留管理庁は同年、カードの真偽を判別できるアプリの提供を開始。公的機関や技能実習生の受け入れ企業などで活用が進んだ。
一方、マイナカードは表面の一部に特殊な印刷技術を使うなど偽造対策が進んだこともあり、総務省は判別ソフトの利用を呼びかけてこなかった。相次ぐ偽造発覚を受け、同省とデジタル庁は今月17日、偽造品の見分け方を示した文書を民間業者向けに周知した。
警視庁は、在留カードを偽造してきた外国人組織が、マイナカードに目を付けて偽造と販売を拡大しているとみて警戒している。
スマホ 知らぬ間に機種変更…都議10万円被害
偽造マイナカードで携帯電話を乗っ取られる被害も出ている。立憲民主党の東京都議(51)は4月17日、決済アプリ「PayPay(ペイペイ)」の運営会社から「パスワードリセットのお知らせ」という身に覚えのないメールを受け取った。
スマートフォンで通話できなくなり、携帯電話販売店に相談したところ、名古屋市の店で何者かが都議名義のマイナカードを使って機種変更したことが判明。すぐスマホの利用を停止したが、ペイペイや携帯会社の決済サービスで計約10万円分が使われていた。
名古屋市の販売店は何者かが提示したマイナンバーカードを目視でチェックしただけだったという。都議は「マイナカードで顧客の身元を確認している事業者は、ICチップで判別する機器の導入や別の本人確認書類での確認も進めるべきだ」と話した。
マイナ保険証「通報」促す河野氏 自民党内からは冷ややかな声
マイナ保険証「通報」促す河野氏 自民党内からは冷ややかな声(毎日新聞 2024/5/25 07:45 最終更新 5/25 07:57)
河野太郎デジタル相が先月、マイナ保険証が使えない医療機関の「通報」を促した文書を巡り、配布先の自民党内から冷ややかな声が上がっている。マイナ保険証の利用率は向上せず、内閣支持率も低迷する中、党関係者は「支援者への呼びかけなんて今の状況ではとてもできない」と漏らす。
文書では、マイナ保険証の利用率が低迷している要因について、「医療機関の受付での声掛けにあると考えられます」と説明。国会議員の支援者に「マイナ保険証の利用を働きかけて」と呼びかけた上、受け付けできない医療機関があれば、マイナンバー総合窓口に連絡するよう求めた。河野氏は記者会見で、こうした要請について適切かと問われ、問題ないとの認識を示していた。
文書を受け取った党内の受け止め方はさまざま。
ある秘書は呼びかけについて「やらないでしょ」と一蹴。マイナ保険証の利便性の低さを挙げ、自らも「使っていない」とし、「支援者の理解を得られない」と突き放した。複数の党関係者も同様の反応で、別の秘書は「文書を見てすらいない」と素っ気ない。
国会議員の一人は「医療費が高騰する中、医療の効率化は必要。導入には意義がある」と理解を示しつつ、個人情報のひも付け誤りや4月時点で6・56%と低迷する利用率を挙げ、「積極的に使ってと堂々と言える状況かと言われるとそうではない」と心情を明かす。「もっと地道に『こんなメリットがある』と宣伝し、利用率が一定程度上がれば自然と『この病院でも使えるようになってほしい』という声も出てくるのでは」と話した。【松本光樹】