自民への献金「やめる」と答えた企業ゼロ 「社会貢献」という理由に納得できる? 34社・団体アンケート(東京新聞 2024年5月7日 06時00分)
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件に対し、野党から企業・団体献金の禁止を求める声が強まっていることを受け、東京新聞は自民党に対して2000万円以上の献金を行った34の企業・団体にアンケートを行い、献金目的や今後の継続などについて聞いた。献金理由では「社会貢献」という回答が目立ち、献金を今後やめると答えた企業・団体はゼロだった。(高田みのり)
企業献金
企業や団体が政党本部や政治資金団体に対して行う寄付。5万円超の献金は、政治資金収支報告書に名前の記載が義務付けられている。パーティー券購入の場合は、報告書への記載義務が20万円超となり、規制がより緩い。
自民党への献金を取りまとめる一般財団法人「国民政治協会」の2022年政治資金収支報告書から、対象企業・団体を抽出し、調査を行った。
▽これまでのパーティー券購入の有無
▽献金の目的
▽献金を継続するか
などを尋ねたところ、キヤノン、伊藤忠商事、三井物産、日本鉱業協会は、全ての質問に未回答だった。
パーティー券購入の有無については「あり」「未回答」がそれぞれ17となり、「なし」はゼロだった。献金の理由では「社会貢献」が12と最も多かった。石油連盟は「エネルギー政策に理解のある政党に対し実施」とし、業界に理解があることを理由に挙げた。
今後も寄付を続けるかどうかでは、予定を含め「続ける」が9。「未定」「今後判断する」などと明言を避けた企業・団体が15。未回答は10あった。
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◆日本自動車工業会の7800万円がトップ
本紙が企業・団体に実施したアンケートの対象では、日本自動車工業会(自工会)の献金額が最も多く7800万円だった。会員企業14社のうち少なくとも11社が自工会とは別に献金し、個社の合計額も2億円超と自動車業界の存在感は際立つ。個別の企業でトップ(5000万円)だったトヨタ自動車は献金の理由や継続について「自工会の方針に従う」とだけ回答した。
自工会は献金の理由を「日本経済を支える自動車産業への理解を考慮し、社会貢献の一環で続けている」と回答し、今後も続ける方針を示す。「献金をする・しないの判断や献金額の目安といった方針を会員企業に示しているか」という質問に対しては、「会員企業の献金はあくまで各社の判断で、金額の差配などは一切ない」とした。
献金額が2000万円以上だったのはトヨタ以外では、日産自動車、ホンダ、日野自動車。3社は理由について「社会貢献の一環」「日本経済や業界の発展を考慮した」などと答えた。
自動車以外の業界では、伊藤忠商事など大手5商社が2800万円、メガバンクはいずれも2000万円と業界内で横並びの金額だった。理由について、「他社についてコメントする立場にはない」(三菱商事)などの回答にとどまった。(鈴木太郎)
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◆透明化、自民は後ろ向き
自民党に献金を行う企業・団体へのアンケートでは、献金目的で「社会貢献」という曖昧な回答が目立った。「政治とカネ」の流れを透明にする一手段として、企業と政治双方の説明責任がより必要だと有識者は指摘する。
「国際的には事業での『社会貢献』が評価される時代に、社会貢献が献金の目的だと主張しても理解を得られにくい」。企業統治に詳しい青山学院大の八田進二名誉教授は、こう疑問視する。献金に当たっては「具体的な説明が企業には求められる」と指摘する。
政治家個人への企業・団体献金については、癒着を防ぐため、1994年の政党交付金制度の導入時に禁止された。ただ、政党や政党支部への献金は容認されたままで、今回の裏金事件を契機に、野党各党は全面的な禁止を主張する。
一方、問題の震源地である自民党は「政治資金寄付の自由」を盾に、企業献金を含めた資金の流れの透明化に後ろ向きだ。パーティー券購入の公開基準で規制強化を訴える公明党とも温度差がある。
政治不信が払拭されない中、駒沢大の富崎隆教授(政治学)は資金の透明化は急務だとし、政治献金の公開基準引き下げなどを例に挙げ「有権者が選挙でその是非を判断できる仕組みの整備が必要だ」と強調する。(市川千晴)