石破茂か上川陽子か、いや小池百合子もあるぞ…元総理大臣補佐官とベテラン政治ジャーナリストが大胆予測した、「岸田の次の総理大臣」の名前

総裁選で掲げる政策を発表する記者会見で、質問に答える自民党の石破茂元幹事長 政治・経済

石破茂か上川陽子か、いや小池百合子もあるぞ…元総理大臣補佐官とベテラン政治ジャーナリストが大胆予測した、「岸田の次の総理大臣」の名前(現代ビジネス 2023.12.28)

週刊現代講談社

東京地検特捜部の裏金捜査が大詰めを迎え、岸田政権は大混乱に陥っている。永田町の表も裏も知り尽くすベテランジャーナリストたちはこの状況をどう見ているのか―柿崎明二(元内閣総理大臣補佐官)×青山和弘(元日本テレビ記者)×鮫島浩(元朝日新聞社記者)​が’24年の政局を大予測する。

柿崎明二(かきざき・めいじ)/’61年生まれ。毎日新聞社を経て、共同通信社に入社。’20年に退社し、現在、帝京大学教授。『「江戸の選挙」から民主主義を考える』(岩波書店)が発売中

青山和弘(あおやま・かずひろ)/’68年生まれ。日本テレビに入社。ワシントン支局長や政治部次長、解説委員を歴任。’21年からフリー。著書に『恩讐と迷走の日本政治』(文藝春秋)など

鮫島浩(さめじま・ひろし)/’71年生まれ。朝日新聞社に入社。政治部や特別報道部でデスクを歴任。’21年に退社し、ウェブメディア『SAMEJIMA TIMES』を創刊、無料公開している

前編記事『岸田総理はプライドだけ高くて、何もできない…元総理大臣補佐官と敏腕政治ジャーナリストが振り返る「2023年の永田町の実態」』では、崩れゆく自民党の現状と、岸田政権について解説してきた。続くこの後編記事では、新たな総理の候補など引き続き解説していく。

麻生副総裁はすでに岸田総理を見限った

柿崎 タイミングを見計らって解散すれば必ず自民党が勝ったとは限らないと考えています。6月に解散を打ったところで、260議席も取れなかったと思っています。そうであれば、「打っていなければよかった」という話になっている。

そもそも解散権が総理の専権事項であるかのように振る舞い、マスコミも容認しているのが間違っています。憲法にも、自己都合で解散していいとは書いていない。自民党政権が既成事実化し、安倍総理が連発したことで、「安倍一強」が到来した。誰も歯向かわなくなり、党内で権力闘争がなくなってしまった。

鮫島 まさにおっしゃる通りです。長年、清和会が権力を牛耳ってきたため、宏池会が官邸に入れたのは30年ぶりのこと。普通は、将来の総理候補は官房副長官などの要職を経て、権力の動かし方を学んでいきます。でも岸田さんはやったことがない。だから作法を知らなかったんです。

解散風を吹かせたので、議員たちは夏休みも返上で地元を駆けずり回り、マスコミは予測を打ちまくった。それなのに土壇場でやらないと言って、多くの人に恥をかかせた。一線を越えてしまったんです。罪深いですよ。

青山 いま問題なのは、その岸田さん本人が辞める気が一切ないということです。総理周辺は未だに、春闘で給与が上がり、所得税減税が始まれば支持率は上がると言っている。非常に楽観的です。

柿崎 なのに、「岸田おろし」の動きも見えない。安倍一強時代に権力闘争をやってこなかったから、若手や中堅もやり方がわからないみたいです。

マスコミが、非主流派が「岸田おろし」に動いているかのように書いていますが、少数派の非主流派だけでどうやっておろすのですか。主流派が裏切らなくては、おろせないが、そのような動きも見えない。

鮫島 私は、麻生さんはすでに岸田さんを見限ったと思っています。岸田さんは所得税減税を突然ブチ上げて、財務省を怒らせてしまった。財務省の後ろ盾である麻生さんも、言うことを聞かない岸田さんからは距離を置くようになった。麻生さんは次の政権は、茂木敏充さんに託したいと思っているはずです。だから’24年春の予算成立を花道に、岸田さんには退陣してもらう。岸田さん本人が続けたくても、予算を人質にとられて脅されるから辞めざるをえない。

茂木さんも次は自分だと思っているから、すこぶる機嫌がいいらしい。

再び「小池旋風」が吹き荒れる

青山 でも次の総裁は、自民党が生まれ変わったというメッセージを出さなければいけない。茂木さんは難しいと思います。その意味では、女性初の総理となる上川陽子さんは有力です。派手さはないけど安定感もあるし、みんなが乗りやすい。

柿崎 上川さんは有資格者です。ただ、次の総裁は無派閥というのが条件になると思います。上川さんが岸田派のまま、他の派閥が推したらまるでマンガです。やりかねない気もしますが。

今、まともに動けているのは石破茂さんくらい。自民党にとって次の総裁は選挙に勝てる人でないといけない。休日に投票所まで足を運ばせる人という意味では、石破さんとか小泉進次郎さんとか、「次の首相」調査で数字を持っている人になる。

鮫島 私も上川さんは初当選から知っていますが、総理の器ではない。死刑のハンコを押したので、肝が据わっていると言われますが、ただ法務省の指示に従っただけ。本当は線が細いんです。だから流れで言えば、石破さんはよかったのですが、最近しゃべりすぎですね。

青山 総理の辞任に言及するなど、発言が突出しています。当初、石破さんしかいないと言っていた人も、これではやっぱり乗れないと嘆いている。

柿崎 そういわれますが、他の人は発言さえもない。本当は若手や中堅が改革案を投げかけるべきです。政治活動のあり方にかかわる問題なので、「後ろから鉄砲」と言われることを厭わず、党の指示や組織に縛られずに動くべきです。党の新陳代謝になります。そこに石破さんが乗っかれば大きな動きになる。

岸田さんは捜査の結論を待っている。それでは検察が政治を形づくることになりかねません。政治家にとって状況は対応するものではなく、自ら作るもの。その基本すら失われつつあります。

青山 河野太郎さんは麻生さんに認められないと出にくいし、小泉さんはこんな混乱期には頼りない。風を吹かせられる人というところで、最近一部で小池百合子さんの名前があがりはじめました。江東区長選で萩生田さんとも協力関係を築いた。

鮫島 本人も狙っていますよね。都知事の任期も’24年の7月までですし。

青山 いま窮地の安倍派と二階派が担ぐ可能性があります。

泉房穂と橋下徹の存在感

柿崎 小池さんは権力闘争部門の天才だから、出てくる可能性は今回に限らず常にあります。でも性格からして、傷がついた安倍派や二階派は「排除」するのでは(笑)。自民党復党、あるいは連立、さまざまな道があります。

それにしても、野党も「政権自滅頼み」状態ですね。能動的に対立軸が作り出せていない。

鮫島 今の野党は、自民党の補完勢力でしかない。維新は菅さんのもので、国民民主は麻生さん、公明党は二階さんという具合です。自公が過半数割れしても、連立政権で維持される。

青山 維新は大阪・関西万博を人質にとられていることが大きい。今回、悪名高い経済対策を盛り込んだ補正予算に賛成しましたが、’24年の本予算にも、万博の予算が含まれます。首根っこを押さえられているから、自公維の連立も十分ある。

罪深いのは立憲民主でしょう。党の内部ですら糾合できていない。

鮫島 今は裏金問題で与党が大エラーしているのだから、そのテーマで野党がまとまればいい。「政治とカネ」にしぼって対立軸を作る。

青山 その時の野党連合のトップに相応しいのは誰か。私は野田佳彦さんがいいと思います。一度、総理をやっているので安心感があるし、中道保守の支持も見込める。

鮫島 野田さんは信念である消費税増税さえ封印すれば説得力が出ます。

「永田町対国民」の構図を作るなら、現職にこだわる必要はないと思います。元明石市長の泉房穂さんと橋下徹さんが組んで国政に進出するとか。

青山 維新と立憲の協力は不可欠ですが、その2人というのは奇抜ですね。

鮫島 勝負をするときには、「あっと驚く薩長同盟」が必要なんです。そこに野田さんが入ってもいい。

「悪魔とでも手を結ぶ覚悟」がない野党

柿崎 対立軸は政策やテーマだけでは足りません。極端に言うと「政治とカネ」という旗すらいらない。重要なのは選挙協力。野党は自公に学ぶべきです。共通政策は後から生まれた。野党は、政策一致に囚われてしまっている。政策一致を先行させていたら、まとまれない。

政権が自滅しているんだから、選挙協力するだけである程度、勝てます。政策は、協力する過程で練り上げればいい。マックス・ウェーバーではないですが、「悪魔とでも手を結ぶ覚悟」で政権を取りに行かない野党は無責任です。

青山 ただそういう戦略を練ったり、舞台回しをする人が見当たらない。「政治の貧困、ここに極まれり」ですね。

柿崎 権力闘争をやらないなら、政治なんてAIにまかせればいいという話になってしまう。

自民党の派閥政治が問題になっていますが、代表がずっと変わらない党よりマシです。総理候補を担いで、ルールの範囲内で権力闘争をする、国民のためにその権力を使う。武力以外の方法で死に物狂いで戦うことが、現代の民主主義です。

鮫島 私は会社を辞めてフリーになってから仕事が楽しくてたまらないんですよ。自分の意見が堂々と言えますからね。

国会議員だって選挙で選ばれた一国一城の主なんだから、忖度せずに自分の意見を主張して戦ってほしいですね。

「週刊現代」2023年12月30日・1月6日合併号より

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