【詳報】裏金問題の捜索5時間、「政権危機」公明も危ぶむ 物価高に苦しむ有権者は「うんざり」「議員は裏ばっかり」(東京新聞 2023年12月19日 18時29分)
自民党の派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題で、東京地検特捜部が19日、強制捜査に乗り出した。
特捜部は、政治資金規正法違反の疑いで、朝から「清和政策研究会」(安倍派)や「志帥(しすい)会」(二階派)の事務所の家宅捜索を行った。
岸田政権を直撃した裏金問題。政界の動きや、有権者の思いは―。
裏金問題の強制捜査の1日をタイムラインで記録しました。
- 9:20 安倍派事務所前に報道陣ずらり
- 9:30 硬い表情の岸田首相
- 9:30すぎ 岸田首相「必要な対策、果断に講じる」
- 9:58 安倍派の事務所に家宅捜索
- 10:00 二階派の事務所にも捜索
- 10:17 茂木・自民幹事長「透明性確保されていなかった」
- 10:19 立民の泉代表「もう派閥は解体すべきだ」
- 10:20 議員会館前は閑散
- 10:30すぎ 安倍派「政治の信頼を損ね、心よりお詫び」
- 10:40 二階派の自見万博相「キックバックはない」
- 10:55 河野デジタル相「政治資金規正法の見直し必要だ」
- 11:05 強制捜査に林官房長官「お答え差し控える」
- 11:10 二階派の自見万博相「職務に全力を尽くしたい」
- 11:15 二階派の小泉法相、進退「適時適切に」
- 11:20 萩生田氏の地元「物価高で昼ご飯も…政治家は何やってんの」
- 11:30 石破元自民幹事長「非常に厳しい事態」
- 11:30すぎ 新宿駅東口では「裏ばっかり」「政治に期待できない」
- 11:41 森山・自民総務会長「反省すべきは反省」
- 11:45 下村氏の地元事務所「こちらでは対応しない」
- 13:00 スカイツリーの街では「政治とカネの話にうんざり」
- 13:04 安倍派の世耕・自民参院幹事長の辞表受理
- 13:05 岸田首相「強い危機感を持って信頼回復に努める」
- 13:30 細川護煕氏の元首相秘書官 安倍派の収支報告は「整いすぎ」
- 13:52 公明の山口代表「政権の危機に直面」
- 14:55 安倍派事務所の捜索終了
- 15:40 保坂・世田谷区長「政治腐敗防止法を」
- 16:30 二階派の法相に「捜査に問題ないか」
9:20 安倍派事務所前に報道陣ずらり
テレビカメラを構えた報道陣ら約40名が、安倍派の事務所前で待機。30以上の脚立が並び、東京地検特捜部の到着を待ち構える。
9:30 硬い表情の岸田首相
安倍派の事務所と道路を挟んだ向かいにある自民党本部で、党の役員会が始まる。中央に座った総理は口を結んで頭撮りの写真撮影をした後、両脇の麻生副総裁、茂木幹事長と軽く会話を交わしていた。
9:30すぎ 岸田首相「必要な対策、果断に講じる」
岸田文雄首相は自民党役員会で、派閥の政治資金パーティー裏金疑惑を巡り「捜査の進展とともに、全容や原因、課題などが明らかになると認識している。国民の信頼回復のための新たな枠組みを立ち上げるなど、必要な対応を果断に講じていきたい」と述べた。茂木幹事長が会見で明らかにした。
9:58 安倍派の事務所に家宅捜索
東京地検特捜部の係官が、千代田区平河町の安倍派の事務所に家宅捜索が入った。報道陣に囲まれる中、10数人の係官が列をなして、足早にビル内に入っていった。
10:00 二階派の事務所にも捜索
安倍派の事務所に家宅捜索が入ったのとほぼ同時に、隣り合う二階派の事務所にも、東京地検特捜部の係官が続々と入っていった。
二階派は、家宅捜索から間もなく、二階俊博会長名で「政策集団の件ではご支援いただいている皆さまをはじめ、多くの関係者の方にご心配とご迷惑をおかけしておりますことを心よりお詫び申し上げます」「当局からの要請には事務局、会員ともに真摯に協力し、事案の解決に向けて努力して参ります」とのコメントを発表した。
10:17 茂木・自民幹事長「透明性確保されていなかった」
自民党の茂木敏充幹事長は、党本部で開かれた記者会見で、東京地検の捜索について「大変遺憾に思っている。厳粛に受け止め、今後の捜査の推移を見守りつつ、必要な対策を取っていきたい」と語った。
その上で「派閥のパーティーの政治資金について、十分な透明性が確保されていなかったことも、このような事態に至った原因だろうと考えている」とし、「政治資金の透明性という観点から、政治資金規正法について、改革が必要か否か、こういったことも議論していく必要がある」と述べた。
10:19 立民の泉代表「もう派閥は解体すべきだ」
立民の泉健太代表がX(旧ツイッター)で、安倍派や二階派への強制捜査を受け、「『政策集団』という建前の『派閥』が、巨額の裏金疑惑で強制捜査される。自民党はもう派閥を解体すべき」と投稿した。
10:20 議員会館前は閑散
自民党安倍派への強制捜査に入った直後の国会議員会館前はイチョウが落葉し人通りもまばら。小学生の団体が目の前にある国会議事堂へと見学に入っていった。
10:30すぎ 安倍派「政治の信頼を損ね、心よりお詫び」
東京地検の家宅捜索から1時間余り。安倍派は「この度の清和政策研究会の件では、多大なるご迷惑とご心配をお掛けし、また政治の信頼を損ねることとなり、心よりお詫び申し上げます。重大に受け止め、捜査については最大限協力し、真摯に対応してまいります」とのコメントを報道陣に公表した。
10:40 二階派の自見万博相「キックバックはない」
二階派の自見英子万博担当相が官邸での会合後、記者団から、二階派に強制捜査が入ったことを問われると、「この後、閣議後会見があるので、まとめてお答えします」。キックバックの有無は「ございません」と答え、官邸を後にした。
10:55 河野デジタル相「政治資金規正法の見直し必要だ」
河野太郎デジタル相は、閣議後の会見で、現行の政治資金規正法について「非常に分かりにくかったり、(収支報告書を)調べようとすると手間がかかったりするので、法律改正のみならず運用についてもしっかりと見直しをしていくことが必要だ」と語った。
11:05 強制捜査に林官房長官「お答え差し控える」
林芳正官房長官は定例会見で、東京地検特捜部による安倍派と二階派への強制捜査の受け止めについて「私からお答えすることは差し控えたい」と繰り返し、明言を避けた。
政治資金規正法見直しには「各政治団体で精査する中で、原因や課題が明らかになれば各党において議論いただく」と発言。「(岸田首相が)今後捜査が進んで原因、課題が明らかになってく推移を見ながら、しかるべきタイミングで党としても国民の信頼回復のための新たな枠組みを立ち上げると述べているので…」などと述べるにとどまり、この日も再発防止策について具体的な方針が示されることはなかった。
11:10 二階派の自見万博相「職務に全力を尽くしたい」
二階派の自見英子万博担当相は記者会見で、自らの進退について「内閣の一員として岸田文雄首相をしっかり支え、職務に全力を尽くしたい」と辞任を否定した。捜索に関しては「私は志帥会に所属しているが、(派閥は)他の政治団体という別の人格を持っているので、今現在、私からお答えする立場にはない」と述べた。
11:15 二階派の小泉法相、進退「適時適切に」
事務所が東京地検特捜部の家宅捜索を受けた二階派の小泉龍司法相が、法務省で定例の会見を開いた。検察を指揮監督できる法相としての適格性や出処進退について問われると、「志帥会(二階派)は『事実関係を調査し、適切に対応する』とコメントしている。その後のさまざまな状況を踏まえ、適時適切に判断していきたい」と険しい表情を浮かべた。
11:20 萩生田氏の地元「物価高で昼ご飯も…政治家は何やってんの」
裏金問題を受け、自民党政調会長を辞任する意向を示している安倍派幹部の萩生田光一衆院議員。東京都八王子市にある萩生田氏の事務所前には、朝から報道陣ら数名が待機。事務所の入るビルに人の出入りはほとんどなく静まり返っていた。
仕事で事務所前を通りかかった40代の会社員男性は「いろいろニュースでやっているのは見ましたが、お金が何に使われていたのかとか分からないことばかり。世の中は物価高で、こっちは昼ご飯をどうやって安くしようとか考えているところなのに政治家は何やってんのって、嫌になっちゃいますね」とぼやいた。
11:30 石破元自民幹事長「非常に厳しい事態」
自民党の石破茂元幹事長が、自民党本部で記者団に「非常に厳しい事態だと思っている。検察から指摘をされる前に、わが党として、総裁(岸田文雄首相・自民党総裁)から(問題点を)明らかにするべきだという指示が出ているので、わが党として、それぞれの集団として、こうであるということ、これから先でも遅くはないので、(明らかに)しておくことが一つの考えではないか」と危機感を露わにした。
11:30すぎ 新宿駅東口では「裏ばっかり」「政治に期待できない」
新宿駅東口の大型ビジョンに「裏金疑惑で安倍派と二階派を捜索」とのニュースが流れる。
駅東口の広場で友人と待ち合わせをしていた文京区の無職男性(80)は「裏ばっかりじゃないか。あきれて物が言えない。国民のことを考えているとは思えない。安倍一強が過ぎたし、大体、議員に甘すぎる。自分たちで制度つくって自分たちで悪いことやってるんだから。改革しないといけないと思いますよ」と憤っていた。
足立区の女性会社員(21)も「政治の世界で国のために活動しているはずの人たちがそういうことをしているのは悲しい。選挙に行かない人多いじゃないですか、若者のために政治をしてくれていると思えないし、政治に期待できない」とこぼした。
11:41 森山・自民総務会長「反省すべきは反省」
自民党の森山裕総務会長が党本部で会見。強制捜査が政権運営に与える影響について記者に問われ「このような捜査を受けたことは極めて遺憾。自民党としてしっかり反省すべきは反省をし、国民の皆さんの信頼を取り戻すことが大事」と発言した。
11:45 下村氏の地元事務所「こちらでは対応しない」
安倍派の元事務総長・下村博文元文科相の地元、東京都板橋区。下村氏の事務所が入るビル前にはテレビカメラを構えた報道陣ら数人が待機し、道行く人々が普段と違う様子に驚いていた。
事務所内には、下村氏の秘書ら数人がいるのみで、秘書は取材に「(下村氏は)今日はこちらに来ません」と対応。別の職員も「これ以上はこちらで対応しません」。
通りかかった中年夫婦は「下村さんはずっと地元の人。一体どうなっているのか、クリーンにしてほしい」と話した。
13:00 スカイツリーの街では「政治とカネの話にうんざり」
東京スカイツリー(墨田区)の目の前に構える安部派の松島みどり衆院議員の地元事務所。普段と変わった様子はなく、事務所の女性スタッフは「松島は東京を離れているので対応は特に…」と言葉少な。
3歳の男の子を連れて買い物に来ていた江戸川区の主婦(33)は「物価高で出費がかさむので食費を切り詰めている。そんな時に政治とカネの話を聞くとうんざりする。期待できる政治家がいない」とあきれた様子で話した。
13:04 安倍派の世耕・自民参院幹事長の辞表受理
自民党の参院議員特別総会後、牧野京夫幹事長代理が記者のぶら下がり取材に対応。総会で世耕弘成参院幹事長の辞表を受理したなどの報告があったことを明らかにした。
世耕氏は、安倍派の有力議員「5人組」の一人で、派閥からパーティー券収入の還流を受けていた疑いが持たれている。
牧野氏は、強制捜査について「議員個人としては極めて憂慮する事態になっている。我々は国民の付託を受けて国会にいる。その責任をそれぞれが果たしていくしかない」と述べた。
13:05 岸田首相「強い危機感を持って信頼回復に努める」
岸田文雄首相は官邸で、強制捜査について「党として強い危機感を持って国民の信頼回復に努めなければならない」と記者団の取材に厳しい表情で語った。二階派の閣僚の交代について問われると「ご指摘の閣僚には引き続き職責を果たしてもらいたい」と述べた。
13:30 細川護煕氏の元首相秘書官 安倍派の収支報告は「整いすぎ」
国会内では、自民党派閥裏金調査チームの野党ヒアリングが開かれた。細川護熙(もりひろ)元首相の秘書官だった成田憲彦駿河台大学名誉教授が「安倍派の収支報告書をみると非常に整いすぎていて、これは作ってると思った」と指摘した。
13:52 公明の山口代表「政権の危機に直面」
公明党の山口那津男代表が、国会内で定例会見。自民党派閥の裏金問題について「実態を解明することが先決であり、捜査の進展を注視していく必要がある。国民の信頼が揺らぎ、政権の危機に直面している」と発言した。
山口代表は、政治資金規正法の改正についても言及。「我が党としていち早く、政治改革本部で議論をもう始めている。来年の通常国会は野党はもちろん与党としてもしっかりと議論して国民の信頼回復に努力をしなければならないと思っている」と語った。
14:55 安倍派事務所の捜索終了
午前10時に始まった東京都千代田区にある安倍派事務所への家宅捜索が終わった。
自民党本部と道路を挟んだ向かいにある事務所が入るビルから、東京地検特捜部の紺色のワゴン車が出てくると、待機していた報道陣のテレビカメラが一斉に向けられた。
特捜部の捜索は5時間に及んだ。
15:40 保坂・世田谷区長「政治腐敗防止法を」
世田谷区の保坂展人区長は定例の記者会見で、裏金問題について問われ「自民1強、清和会(清和政策研究会)1強が長く続いた中で生まれたおごり、あるいは特権意識も背景にあるのでは」と述べた。
1996年から衆院議員を3期務めた保坂氏は「派閥の問題だけで考えるのは良くない」と指摘。政治資金規正法の改正への動きに触れて「今の流れだと問題のところだけ手直しして骨格は変わらない。やはり『政治腐敗防止法』を作るべきだ」と強調した。
16:30 二階派の法相に「捜査に問題ないか」
「出身派閥が強制捜査を受けていることで法務大臣の職務遂行の支障にならないのか」「捜査の厳正さが担保されていると考えるか」
林芳正官房長官は午後の定例会見では、東京地検特捜部の強制捜査を受けている二階派所属議員が法相を務めていることへの妥当性について、記者から質問が集中した。
法相は、検察を指揮監督できる立場にあるからだ。
林官房長官は、3回にわたって「検察当局においては厳正、公平、不偏不党として法と証拠に基づいて適正に対処しているものと承知している」と、同じ文言を繰り返した。
◇
自民党の政治資金パーティーを巡る裏金問題
自民党の最大派閥の安倍派では、所属議員に割り当てたパーティー券の販売ノルマを超えた分を、議員にキックバック(還流)しながら、政治資金収支報告書に記載していないという。安倍派幹部らも還流を受けていたとされ、12月14日に官房長官だった松野博一氏ら閣僚4人が辞職した。岸田首相が会長を務めていた岸田派や二階派でもパーティー収入を実際よりも少なく収支報告書に記載していた疑いが明らかになっている。
派閥の収入源の政治資金パーティーとは
政治資金パーティーは、パーティー券を売って政治資金を集めるのが主な目的。自民党では政治家や派閥の大きな収入源になっている。政治資金規正法は1回のパーティーにつき、20万円を超える購入者の氏名や金額を収支報告書に記載するよう義務付けている。虚偽記入や不記載には、5年以下の禁錮または100万円以下の罰金が科せられる。刑が確定すれば原則5年間、公民権が停止され選挙に立候補できなくなる。