石破茂本人を直撃も!…自民党安倍派パー券疑惑で「次の総理」候補に急浮上した、世間的にはほぼ無名な「女性議員の名前」(現代ビジネス 2023.12.09)
目下、「岸田ばなれ」が着々と進んでいるといったところか。春には「岸田おろし」が始まりそうだ。有権者不在で「ポスト岸田」をめぐる争いに明け暮れる永田町の政治家たち。その内幕を明かす。
前編記事『松野官房長官パー券辞任なら岸田政権は崩壊へ。そして蠢き出した「ゲル」石破茂元幹事長』より続く。
石破本人はどう答えるか
石破自身は派閥に所属していない。かつては派閥を率いていたが人望がなく解散した。自民党ベテラン議員が言う。
「最近、石破に電話して石破待望論が出ているから頑張ってと声をかけたら、まんざらでもない感じだった。かつて絶対に総理になれないと言われた三木武夫だって、ロッキード事件で田中角栄が失墜して、『クリーン三木』で総理になれた。リクルート事件で竹下登内閣が総辞職した後は、派閥の領袖でもない宇野宗佑が総理になった。
今回のパー券問題で自民党に不信の目が向けられているときに、自浄作用を発揮させるのは石破しかいないだろう」
石破の戦略は講演や選挙応援などの地方行脚とメディア露出を増やして国民人気をより高め、「選挙の顔」として存在感を発揮することだ。真意を聞くべく、石破本人を直撃した。
―派閥のパー券問題は大きくなりそうか。
「そんなことはわからない。ただ、薗浦健太郎は(政治資金パーティーの収入を過少記載したことで)議員を辞めたんだ。それを派閥単位でやっていた。うっかりしていたのか、政治資金の不記載が誰の指示に基づくのかは全然わからないけどね」
―かつての政治不信のような状況になるのか。
「政治不信になっても、(自民党に)代わる政党がないから政権は代わらないんだよ。自民党の支持率は下がるだろうが、年が明けて、いよいよ参議院や衆議院選挙が近づいてくると、ガタガタするかもしれない。そんなときでないと、俺は(総理候補として名前が)出てこないよ」
―総理をやる準備はしているか。
「いざとなったときに、『さあ、やってみろ』と言われて期待外れで終わったらたまらんからね。それだけのことだよ。言われれば、選挙の応援はどこでも行っているよ」
石破総理爆誕のカギは菅義偉
―全国から応援演説に呼ばれている。
「候補者の講演会に誰が来てほしいかを聞くと、(小泉)進次郎か私になる。他の名前が出てこないことは困る。だけど、これからは発言には気をつけます」
―石破総理への期待が高まっているが。
「豚もおだてりゃ木に登るみたいに煽られても、あんた方のその手に乗ってたまるか(笑)。ご心配なく」
石破の国民人気はそれなりに高い。だが、党内基盤が脆弱すぎる。総理の座へ上り詰めるためには、結局、菅義偉前総理と二階俊博元幹事長、この二人の実力者の後押しが必要だ。すでに二人は、「石破総理」の可能性について、膝詰めで話し合っているという。
「菅さんと二階さんは11月に2度、森山裕総務会長を交えて夜の会合を行っています。表向きは『岸田政権を支えていく方針を確認した』と言われていますが、もちろん、支えられなくなった後のことを話している。
その際に申し合わせたことは、夏過ぎまでは岸田政権を長持ちさせるということ。そうすれば任期満了で、党員・党友を含めたフルスペックの総裁選にすることができる。石破さんは党内基盤が脆弱ですが、党員・党友の地方票が入れば圧倒的に強い。菅・二階が石破で議員票をまとめれば、総理の座に押し上げられます。まだ具体的には動いていませんが、菅・二階が石破総理を思い描いていることは間違いありません」(前出・自民党中堅議員)
岸田政権が倒れる。そのときに備えて、菅は表舞台に積極的に姿を現し始めた。12月2日には渋谷区役所で行われた「ハチ公生誕100周年記念イベント」に出席。
「これは菅さんが秋田県出身だから出席したという単純な話ではありません。イベントの主催者は秋田犬保存会で、その会長は日本維新の会の遠藤敬国対委員長。つまり、菅さんは維新とのつながりを周囲に誇示してみせたわけです。もとより、菅さんは公明党=創価学会とのパイプも太い。今後、自公だけで政権を維持できないときに向けて、ますます菅さんの影響力が大きくなる」(全国紙政治部記者)
菅の持論である「ライドシェア」解禁に向けては、目をかけている小泉進次郎が世話人となり、自公、立憲民主、維新、国民民主が参加する超党派の勉強会が発足した。
石破が「選挙の顔」となり、菅が政策や人脈を下支えすれば、石破総理が誕生する。そして、菅はキングメーカーとなり、再び権力をほしいままにするのだ。
「肝っ玉かあさん」の色気
そうした動きを牽制するために、永田町で「ポスト岸田」として急速に名前が広がっているのが、上川陽子外相である。世間的にはほぼ無名の彼女が、次期総理候補に名を連ねるのはなぜか。
「岸田総理は、もちろん一日でも長く政権を維持したいのは事実ですが、政権が立ち行かなくなったら、宏池会政権を維持させることが至上命題となります。その有力候補の一人が上川外相なのです。
宏池会のナンバー2は林芳正前外相ですが、選挙で勝てる顔かというと心もとない。そこで、麻生(太郎)副総裁が岸田総理に進言して将来の後継候補として、9月の内閣改造で上川氏を外相に登用した」(全国紙政治部デスク)
こうして政局の渦中に引っ張り出された上川だが、その評判は他派閥でも悪くない。むしろ、これまでの自民党色を払拭する逸材との評価もある。
「宏池会に所属していますが、派閥色はまったくありません。また、女を武器にするような政治家ではまったくないので、女性票も見込める。
’18年には、安倍政権で法相を務め、オウム真理教の麻原彰晃ら死刑囚13名の死刑執行を命じていることから、閣僚経験者の間で『肝っ玉かあさん』と呼ばれ、一目置かれています」(同前)
麻生の石破嫌い
今回の外相への抜擢は「想像もしていなかった」と言うが、外相就任後、各地の国際会議に出席することで、さらに上を狙う野心が芽生えている。
「米ハーバード大学大学院出身で、国際会議や会談でも物怖じすることはありません。外交的な会話には通訳が入りますが、雑談なら英語でやり取りできる。外相という重責あるポジションを務め、次の総理に向けて色気が出てきた様子です」(外務省関係者)
日経新聞が11月27日に発表した世論調査では、「次の自民党総裁候補」の選択肢に上川が初めて入り、小渕優子や野田聖子と肩を並べた。一般の認知度もじわじわと広がりつつある。
「麻生の石破嫌いは徹底していて、石破が総理になるくらいなら、上川を支援する。茂木(敏充幹事長)も今回は火中の栗を拾いたくないだろう。麻生派、茂木派、岸田派の主流3派は上川を旗印にしてまとまるはずだ」(前出・自民党ベテラン議員)
派閥の裏金問題が疑獄事件に発展すれば、岸田政権と自民党の支持率は暴落。「脱派閥」をキーワードに大政局となる。
無派閥の石破茂か、史上初の女性宰相となる上川陽子か。それとも―。「ポスト岸田」をめぐる権力争いの火蓋が切られた。
(文中一部敬称略)
「週刊現代」2023年12月16日号より
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