世論は77%反対でも与党が「解禁」目指す理由 殺傷武器の第三国輸出 「隣の韓国の受注額は…」

慎重な姿勢から一転した公明 政治・経済

世論は77%反対でも与党が「解禁」目指す理由 殺傷武器の第三国輸出 「隣の韓国の受注額は…」(東京新聞 2023年7月1日 06時00分)

自民、公明両党は、防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」を巡る与党協議で、要件緩和にかじを切った。輸出拡大によって防衛産業を支援したい自民党側の要求を、公明党が条件付きで容認した形。英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機など、殺傷能力のある武器の輸出解禁が現実味を帯び始めている。

「英国から買えば日本は大損」

「日本の技術で他国と一緒につくった戦闘機をほしいと言われても『日本には三原則があるので英国から買ってください』では日本として大損してしまう」

与党協議の座長を務める自民党の小野寺五典元防衛相は6月、民放番組でそう強調した。自民党には「隣の韓国は(受注額)2兆円だ」と、日本が「武器輸出大国」を目指すべきだと主張する議員もいる。

自民党の輸出推進派は岸田文雄首相に提出した提言で、日本の防衛産業が衰退の危機にあると指摘し「三原則という厳しい自己規制を課してきたことが原因だ」と主張。殺傷能力のある武器の輸出解禁に関し、今回の論点整理案には次期戦闘機を念頭に、共同開発する場合は日本も第三国に輸出できるようにすべきだとの意見が盛り込まれたが、現行ルールが定める制限の撤廃を求めていく構えだ。

慎重な姿勢から一転した公明

公明党は、自民党の要求に押されて慎重から容認の姿勢に傾いた。次期戦闘機の第三国輸出について、北側一雄副代表は6月29日の記者会見で「国際開発に支障のないようにと思っている。移転の条件、環境をどう整備していくかが課題だ」と指摘。与党協議メンバーの議員は「メディアは紛争助長と書き立てるが、例えばベトナムは、中国と日本のどちらサイドに付くか分からないが、輸出で関係強化を図れる」と強調する。

だが、共同通信の5月の世論調査では、殺傷能力を持つ武器の輸出を「解禁すべきだ」と答えたのは20%にとどまった。「殺傷能力のない武器輸出にとどめるべきだ」が54%に上り「武器輸出は全面的に禁止すべきだ」の23%と合わせると、殺傷能力のある武器輸出に反対する意見は77%。与党の議論が世論の理解を得られていない状況が浮き彫りになった。

公明党の石井啓一幹事長は6月30日の記者会見で「三原則は厳守し、その上で運用をどうするかだ。殺傷武器をどんどん輸出する方向にはなり得ない」と主張するが、解禁という点では足並みをそろえた。

過去の武器輸出三原則と現在の防衛装備三原則