日本人がこれから直面する「本当の不景気」の怖さ(MONEY TIMES 2023年5月10日)
バブル経済崩壊後、1990年初頭からの「失われた30年」は今なお継続しており、このままだと「失われた40年」になってしまう。そうなれば、これまでの不景気とは比べものにならない「本当の不景気」をわれわれは体験することになるだろう。
バブル経済が弾けてからの「失われた30年」
平成最初の大納会(株式市場の年間最終取引日)となった1989年12月29日の日経平均株価は、史上最高値の3万8,915円を記録。このまま上がり続けて、いずれは5万円に達するという予想もあった。
ところが、年明けから株式相場は下落し、翌1990年の大納会の日経平均株価は2万3,848円となり、実に1年で約39%の大幅な下落となった。
以降、株価は長期的にはピーク時の約4割あたりでの値動きを継続し、現在でも日経平均株価2万8,593円と振るわない(2023年4月24日の終値)。
バブル経済が弾けてから現在までの株価と経済成長の低迷を「失われた30年」といい、90年代に就職時期を迎えた当時の若者は「就職氷河期世代」と呼ばれた。しかし、生活がグッと貧しくなった実感を持つ人はそこまで多くなかったようだ。
それは、景気が低迷したときには政府が財政出動で景気を刺激するなどの対策を行ったからだ。ただし、それに伴う財政赤字を埋めるために消費税率を徐々に引き上げ、増税によりまた景気が低迷する堂々巡りを繰り返してきたのが実情といえる。
年々進行する少子高齢化による生産力低下もまた問題で、場当たり的な対応でその場その場をごまかしているうちに、日本経済の底力は確実にそぎ落とされてきている。
日本のビックマック指数は衝撃の「-41.2%」
ビッグマックは、ハンバーガーチェーン世界大手の「マクドナルド」で販売されている商品のひとつであることは有名だ。
このビッグマックのアメリカにおける販売価格を基準とし、各国それぞれの通貨でどれくらいの価格で販売されているのかを調べることで「ビッグマック指数(BMI)」が算出される。
算出元はイギリスの経済紙『エコノミスト』で、毎年2回数値を発表している。2023年1月に発表されたデータではスイスが「+35.4%」で1位、ウルグアイが「+27.8%」で2位となっている。
一方、日本は「-41.2%」で42位となっており、全体でもかなり下位となっている。
つまり、日本ではビッグマックがアメリカよりも大幅に安い価格で購入できるということだが、このことがなぜ日本の先行きに暗い影を落とすのか…。
その理由は、ビッグマック指数はその通貨の「購買力」を示しており、ビッグマック指数がマイナスになることは、円の価値がドルに比べて大きく過小評価されているということになるからだ。
日本円だけ持ち続けると大損する!?
空前の円安進行により、保有する金融資産の配分を日本円以外に振り分けようとする動きが出ている。円が安くなれば外国産の物品は高くなり、相対的に購買力が下がるということを意味する。
はたして、日本円をこのまま持ち続けていいのだろうか?
グローバルな経済情勢が目まぐるしく変わる可能性がある以上、「今後はこうなる」と決めつけるのはリスクが高い。投資の大原則「タマゴは一つのカゴに盛るな」の通り、幅広い資産に分散投資することが望ましいかもしれない。
今回のテーマで言えば、ドル建て資産と円建て資産を半々で持っておくなどが該当する。また、預金だけでなく株式や債券など複数の商品に分けることで、いつ何が起こってもリスクに備えることができる。
ただでさえ円預金の利率がほぼゼロの中、長い目で見た資産運用のスタート段階として、この不確実な時代を逆手にとって、分散投資について学ぶ機会とするのもいいかもしれない。
2030年以降、「本当の不景気」がやってくる
日本経済団体連合会(経団連)の21世紀政策研究所が以前発表した報告書「グローバルJAPAN-2050年シミュレーションと総合戦略」には、人口減少による労働力人口減少と資本ストックの減少により、2030年以降の日本経済は恒常的にマイナス成長に陥るおそれがあると指摘されている。
この指摘が当たると、これから10年後に「本当の不景気」が始まり、目に見える形でじわじわとわれわれの生活はそれに侵食されていく。
すでに、水道インフラの老朽化が問題になっているが、これからは耐用年数を超えたインフラを補修・交換できる費用を捻出できず、発展途上国なみの生活環境に後退する地域も出てくるだろう。
そうした「本当の不景気」に日本人が直面するのは決して遠いことではない。それを避けるには、目先の景気刺激策に右往左往するのではなく、長期的なビジョンを持った経済政策を掲げ、その実行に必要な国民の同意を得られるだけのリーダーシップが政府には求められる。
文・MONEY TIMES編集部