大阪カジノ、年間来場者2000万人に「風呂敷を広げすぎ」と専門家…審査報告書では「1000点満点で657.9点」と散々(FLASH編集部 2023.04.16 18:17)
4月14日、大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)にカジノを含む統合型リゾート(IR)を整備する計画を、国土交通大臣が認定した。2029年秋~冬の開業を目指し、日本初のカジノが動き出すことになる。
計画では、米カジノ運営大手MGMリゾーツ・インターナショナルやオリックスなどが出資する「大阪IR株式会社」が、カジノやホテルの運営を担う。
開業3年後の年間来場者を約2000万人、年間売り上げは約5200億円を想定しており、8割程度をカジノが占める。初期投資額は1兆800億円で、年間約9.3万人の雇用創出も見込んでいる。
府は2022年4月、IRの概要をまとめた整備計画を国に申請。国土交通省は、経済や観光、ギャンブル依存症の専門家ら7人でつくる審査委員会を設置し、国際競争力や経済効果、依存症対策などさまざまな面を審査した。
国交省が公表した審査報告書によると、計画は1000点満点で657.9点。認定条件の600点以上はクリアしたが、6段階評価で上から3番めの「B(優れている)」となった。
『大阪破産』などの著書もある在阪ジャーナリストの吉富有治氏に話を聞いた。報告書で気になる点が2つあるという。
「まず気になるのは、来場者予想数について、『根拠は不明瞭』としている点です。国内約1360万人、海外から約630万人で計1990万人。隣接するUSJでさえ、最高で年間1460万人(2016年度)です。
最初は物珍しさから来るとは思うんです。でも、それが何年も何十年も続くかは疑問。収益見込みは年間売上が5200億円で8割がカジノ頼み。風呂敷を広げすぎではないでしょうか。
数字を出してきたのはカジノ事業者のほうです。当事者が風呂敷を広げるのはわかりますが、やるならやるで第三者が検証できるような、もう少し冷静な数字を出してはどうかと前から思っていました。
私自身はカジノに賛成でも反対でもないんです。ただ、やるなら成功させないといけない。風呂敷を広げすぎて、実際にスタートしたら来場者が少なくて撤退する、では困るわけです。
民間の事業ですが、カジノIRの収益から年間1000億円以上が大阪府・市に入ることになっています。松井一郎・前大阪市長は『カジノをうまく利用して、儲けたお金を福祉に回す』と言っていました。そのため、広げすぎた風呂敷を前提にして予算を組むと、そちらも狂ってしまうわけです」
当初、公費負担はないとされたが、大阪市は事業者に求められ、すでに土壌対策費約790億円を負担することが決まっている。
「府市の事業者公募に手をあげたのが、MGMとオリックスのグループだけだったことで、足元を見られていると言われても仕方がない。賃料も安いと言われています。
手をあげている事業者が複数あれば、大阪府・市も強気に出られたのでしょうが、結局、土壌対策費を計上したのは、カジノ事業者の言いなりだと思うんです。
しかも、約790億円に地盤沈下の対策費は入っていない。当然、さらなる支出を求められる可能性がある。だからこそ、カジノだIRだと騒ぐのではなく、もう少し冷静に、第三者がチェックする計画であってほしいんです」(吉富氏)
吉富氏がもう一つ気になるのが、審査報告書で、得点率が54%と最も低かった評価項目「地域との良好な関係構築」だ。
「今回の統一地方選で、反対陣営はカジノ・IRを争点にあげていたのですが、吉村洋文大阪府知事ら大阪維新の会は争点にあげていなかったんです。府市W選で勝利したあと、吉村知事は『一定の理解を得た』と言いましたが、どう見ても後出しジャンケンです。
メディアによって数字は違いますが、世論調査では賛否が拮抗していて、だいたい半々。およそ半数の人が反対しているのに、このままでは、なかば強引に進むことになる。
報告書が、1000点満点中657.9点としたのは、大学の成績でいえば、『優』『良』『可』の『可』なわけです。それでよしとするんじゃなくて、もっとしっかりした計画を出してほしい。
私が指摘したことは政府の報告書が言っていることで、課せられた宿題です。認定を受けたからとはしゃいで、あとで失敗じゃ、シャレになりません。昔、大阪市が箱モノ行政をやって大失敗しましたが、二の舞にならないようにしてほしいですね」
4月10日に初登庁した横山英幸・大阪新市長は、国交省の審査報告書に対し、「厳しい意見だが、1人でも多くの人に伝えていくことで住民理解も進む」との見方を示した。「無謀な計画」と言われないよう、より精緻な計画を示してほしいものだ。
( SmartFLASH )