COP27閉幕 途上国支援の「損失と被害」基金設立で合意

COP27閉幕 途上国支援の「損失と被害」基金設立で合意 国際

COP27閉幕 途上国支援の「損失と被害」基金設立で合意(毎日新聞 2022/11/20 18:06 最終更新 11/20 18:07)

エジプト・シャルムエルシェイクで開催されていた国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)は20日、気候変動に伴う被害を受けた途上国支援のための基金を設立することに合意し、閉幕した。地球温暖化の被害支援に特化した国際的な基金の設立は初。

また、2021年のCOP26での合意を踏襲し、石炭火力発電の「段階的削減」などを盛り込んだ「シャルムエルシェイク実施計画」を採択した。

気候変動の悪影響に伴って生じた被害は「損失と被害(ロス&ダメージ)」と呼ばれる。防災分野など被害防止・軽減策に対する基金はあったが、既に発生した被害の補償に特化した仕組みはなく、海面上昇などの影響を受ける島しょ国などが30年以上前から支援を求めてきた。

COP27では、議長国エジプトが損失と被害を主要議題に掲げ、同条約の会議では初めて、被害への資金支援のあり方が正式議題になった。

気象災害の激甚化などを背景に、途上国側は新たな基金創設を求めたが、先進国は既存の支援の仕組みを活用することなどを主張し、交渉は難航。最終盤で欧州連合(EU)や米国、英国などが基金新設案を提案し、18日までの予定だった会期を延長して協議を続けた。

決定文書では、支援の対象を「気候変動の悪影響に対して特に脆弱な途上国」とした。基金設立に向けた専門の委員会で支援の具体的な対象範囲や資金調達のあり方などを検討し、23年のCOP28までに詳細を決める。

ロシアによるウクライナ侵攻後のエネルギー危機で、化石燃料回帰の動きもある中、COP27では気候変動対策の後退を食い止められるかも注目された。

採択されたシャルムエルシェイク実施計画では、「産業革命前からの世界の平均気温の上昇を1・5度に抑えるためのさらなる努力を追求する」と明記。気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」では努力目標だった「1・5度」を、21年のCOP26で事実上の世界共通目標に引き上げたが、同様の表現を踏襲した。

また、温室効果ガス排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の「段階的削減」や、非効率な化石燃料への補助金の「段階的廃止」などを盛り込み、COP26で合意した方向性はかろうじて維持した。「化石燃料の段階的廃止」など、1.5度実現に向けてCOP26よりさらに踏み込んだ合意を求める意見も出たが、実施計画には盛り込まれなかった。

COP27合意の骨子

・産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えるためのさらなる努力を追求する

・1.5度実現には2030年までに世界の温室効果ガス排出量を19年比43%削減することが必要であると認識する

・排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の段階的削減、非効率な化石燃料への補助金の段階的廃止に向けた努力を加速する

・「損失と被害」支援に特化した基金を設立する

・「途上国に年1000億ドルの資金援助をする」という目標を実行するよう先進国に要請する