新型コロナ第8波のピークはいつ? 先行指標「発熱相談件数」「検査陽性率」が増加 医療逼迫は防げるか(YAHOO! JAPAN ニュース 2022/11/6(日) 8:06)
倉原優 呼吸器内科医
新型コロナの波の先行指標として「発熱相談件数」「検査陽性率」があります。これらが増加に転じてきました。第8波が始まったと考えられますが、ピークはいつ頃が想定されるでしょうか。
「発熱相談件数」「検査陽性率」の増加
11月5日の全国の新型コロナ新規陽性者数は7万4,170人と増加傾向です。この1~2週間でコロナ病床の使用率がじわじわ増加しており、第8波の始まりを見ていることは間違いありません。
新型コロナの波の先行指標である「発熱相談件数」や「検査陽性率」を、東京都は毎日開示しています。第7波が落ち着いた10月以降は低い水準でしたが、このたび再びいずれも増加に転じています。
東京都の「発熱相談件数」は9月25日以来となる1日2,000件超えになっています(1)。同じく「検査陽性率」も、27.3%まで上昇しています(2)(図1)。検査陽性率は、数値が高いほど見逃されている新型コロナが多いことを意味します。
第8波のピークはいつか
こういった現象が観察され始めてから、過去の波は約1か月後にピークが到来しており、11月下旬~12月上旬あたりが第8波のピークではないかと身構えています。
ただ、インフルエンザが同時流行したり、第6波のように長期間波が続いたりすると、影響は年末までもつれ込むかもしれません。
新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに提出された資料においても、基本シナリオ(実効再生産数1.2~1.3)であれば11月中に波のピークが来ると考えられています(3)。
現場としてはインフルエンザとの同時流行を懸念していますが、現時点ではインフルエンザの定点報告は増加に転じていません(4)。
医療逼迫の懸念と対策
新型コロナやインフルエンザ等の発熱者が増えた場合、発熱外来を含めた外来医療がまず逼迫します。その後、救急医療や入院医療が逼迫し、患者数が多いと重症病床にまで影響が及ぶようになります(図2)。
国民皆保険制度も後押ししてか、日本の受療率は高く、軽症であっても多くの人が受診できる仕組みになっています。
これによる医療逼迫を抑えるために、政府は新型コロナの自己検査や自己登録をすすめています(5)(図3)。
医療逼迫を避けるための「5類相当」あるいは「5類感染症」に変更するという見解もあろうかと思います。これについては、先日別記事で私見を書かせていただいたので、ご参照ください(6)。
「5類にすれば全ての医療機関が新型コロナを診る」という意見がありますが、非コロナ患者さんばかりが入院している医療機関に救急搬送されたとき、新型コロナが陽性と判明しても、果たしてそのまま入院させてくれるのか、という問題があります。
「全ての医療機関は新型コロナを診療してください」と要請を出せるのが現在の「新型インフルエンザ等感染症」の強みなので、「5類」にダウングレードすることによって当該要請ができなくなる可能性もあります。
まとめ
コロナ禍で8回目の波です。マンパワーが湧いて出てくるわけではないので、一定数の感染者数が出てしまうと、やはり医療は逼迫してしまうかもしれません。
65歳以上の高齢者や小学生以下の子どもなど重症化リスクがある人が優先的に受診できるよう、配慮いただけると幸いです。
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(参考資料)
(1) 東京都発熱相談センターにおける相談件数(URL:https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/cards/number-of-reports-to-tokyo-fever-consultation-center/)
(2) 検査の陽性率(URL:https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/cards/positive-rate/)
(3) 第104回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード. 資料3-3-②西浦先生提出資料. (令和4年10月26日)(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001005781.pdf)
(4) 国立感染症研究所. IDWR速報データ 2022年第42週(URL:https://www.niid.go.jp/niid/ja/data/11583-idwr-sokuho-data-j-2242.html)
(5) 検査なし・オンライン診療でインフルエンザの遠隔診断が可能に 同時流行時の注意点(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20221014-00319383)
(6) 30分の1に低下した新型コロナの致死率 「5類」にすべきか?(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20221031-00321811)
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倉原 優 呼吸器内科医
国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。
2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。
※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。