赤字国債が続く現代、「日本の将来に不安はない」といえる理由(幻冬舎ゴールドライフオンライン 2022年10月20日)
The Great Reset of JAPAN 日本の再生方法【第7回】
論説 伊藤弘明
再び、世界のトップを狙える国へ。現役市議会議員が、働く場と所得の増加を軸に、6つの政策を提言。30年以上、経済の停滞から抜け出せずにいる日本。かつての輝きと体力を取り戻すには、“新しい挑戦=リセット”を恐れず、実行していかねばならない。※本記事は、伊藤弘明氏の書籍『The Great Reset of JAPAN 日本の再生方法』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。
第三章 日本の「とてつもなく巨大な宝物」
日本人の莫大な貯蓄
日本銀行の資金循環統計によると、日本国民の家計が有する金融資産残高は2020年12月の段階で1948兆円に上るという。そのうち、俗にタンス預金と呼ばれる直接所持する現金と、銀行などに預けている預金を合わせた総額は1031兆円に及ぶ。日本の国家予算は一般会計で100兆円程度であるから、日本国民はその10年分も現金で貯蓄していることになる。
それ以外に、株、投資信託、保険、年金基金の総額が900兆円に達するらしい。いかにも勤勉な日本人らしい話ではあるが、実はこれは驚くべきことなのである。
お金は使ってこそ、その価値が生じ、いろいろと人生を楽しむことができるのに、日本の国民は使い楽しむことをじっと我慢して、ただ銀行に置きっ放しにしている。このゼロ金利時代にほとんど利息も付かないのに、である。
私には、この金融資産残高は日本人が手にする「とてつもなく巨大な宝物」に思えてならない。
貨幣というものは血液みたいなものである。血液は生物の体の中を循環し生命を維持している。資本主義経済において貨幣が血液の役割を果たし、人々の間をまんべんなく循環して利益を配分し、人々の暮らしを守っていく。それが正常な状態であろう。
しかし、何とほぼ2000兆円にも及ぶ貨幣が滞って循環しないのである。人間で言えばあちこち動脈硬化を起こしすぎて何回も死んでいる状態ではないだろうか。しかし、日本にはまだまだ循環する貨幣が存在し、株価もかつてよりは随分と高止まりしている。
外国資本も大量に入っているせいもあろうが、日本は本当に驚くべき国であると思うのだ。
ただ、この約2000兆円を動かす方法はないのだろうか。これを動かせば絶大なる経済対策になる。特に、日本人の年間の総消費額は300兆円といわれているが、毎年100兆円でも200兆円でも消費に回ってくれれば、経済は大きく立ち直っていくに違いない。
なぜ日本人はお金を使わなくなったのか。その一つの原因に財務省が予算を捻出する際に使用する国債があると思う。特に歳入の足らない部分を賄う赤字国債というものを長期間にわたって乱発し積み上げてきた結果、2021年3月末には1216兆円を超える借金ができてしまった。将来へのつけが1人1000万円といわれる。日本の国民はこの情報が頭にこびりついて将来に不安を感じ、その呪縛から逃れられず、何が起こってもいいようにお金だけは貯めておこう、という考えに支配されてしまった。
日本銀行が国債を買いまくっている
安倍晋三元内閣総理大臣が、2012年に総理大臣に返り咲き「アベノミクス」を提唱して、大幅な金融緩和により日本銀行は市中銀行の国債を大量に購入した。今や日本銀行は500兆円をゆうに超える国債を保有するという。
日本銀行は買い入れた国債について、政府に返済を迫っていない。日本銀行の資産に残したままである。国債に関する法律第9条には、国債の消滅時効のくだりがあり、国債の返済義務が元本で10年、利子で5年、それを超えたら返済の必要がなくなると規定されている。つまり、今まで財務省が出してきた国債は日本銀行が買い入れた分について時効が次々と成立していき、それに伴って政府の返済義務は次々と消滅していくのである。
これだけで国民の皆さん1人につき1000万円の借金が500万円まで減っていく。さらに付け加えると国の借金といわれるものの中には、政府の関連する機関、例えば日本政策投資銀行(日本開発銀行と北海道東北開発公庫を統合してできた政府系金融機関)などの特殊法人や都市再生機構(UR都市機構)などの独立行政法人に対する貸付金や出資金などが300兆円ほどあり、それらは国民に返済義務はなく各機関から回収すべきものであり、それらの分を差し引くと借金は200兆円まで減ってしまう。
つまり国民の皆さん1人あたりの借金は200万円となるわけだ。
1人200万円の借金は大変だと言っては大変だけれど、他の先進国と比較しても大した額ではない。
ここまで書いてきて何が言いたいのかというと、日本の将来に不安はないですよ、ということを声を大にして言いたいのだ。
※本記事は、2022年3月刊行の書籍『The Great Reset of JAPAN 日本の再生方法』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。
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