トラス氏、どんな人? 「意識高い系」に反対、過去に不倫疑惑も(毎日新聞 2022/9/5 20:42 最終更新 9/5 21:04)
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ジョンソン英首相の後任として、第78代首相にリズ・トラス外相(47)が就任する見通しとなった。英国の新たな「顔」となるトラス氏とはどんな人物なのか。
ストレートな物言いに支持
「私は率直に物を言う女性です」。8月19日に英中部マンチェスターで開かれた与党・保守党の党員集会で、トラス氏は自らをそう「定義」した。決選投票を争ったライバルのスナク前財務相は弁舌上手で知られたため、あえて自身を「口下手だが正直」と印象付ける狙いがあったとみられる。
特にストレートな物言いで訴えたのは、保守党の伝統的価値観の擁護だ。欧米では現在、ジェンダーや人種を巡る差別や不公正に高い意識を持つウオーク(woke)との言葉が急速に広まっている。wake(目覚める)が由来とされ、英国の新聞では見出しになることも多い。日本語の「意識高い系」に似ており、これが党首選でも話題になった。
トランスジェンダーの人のためのトイレ男女共用化や、「母親」を「出産する人」に言い換えることなどを主張する動きだが、トラス氏はこれに異を唱え、「反ウオーク」を貫く。「女性といえば女性のことだ。私は男女別々の空間を支持し、女性の権利を守る」。トラス氏がそう演説する度、会場から大きな拍手が起きた。減税や対ロシア強硬論といった政策も比較的分かりやすかったが、保守層の心理に訴えるこうした姿勢も支持拡大の一因とみられる。
左派家庭で育ち、保守に転向
トラス氏は1975年7月、南部オックスフォード生まれ。父は数学者、母は反核運動に熱心な教師で、左派色の強い労働党支持の家庭で育った。弟が3人いる。子供の頃に母に反核デモに連れていかれて政治に興味を持ったという。
負けず嫌いの子供だったらしい。英メディアによると、家族で「モノポリー」などのボードゲームをしていても、負けそうになるとどこかに行ってしまい、「勝てないリスク」を回避したという。10代を共に過ごした学校の同級生たちは英紙に「まったく普通の生徒」「内気」「猛烈な勉強家」「スポーツや音楽に夢中になる子ではなかった」などと語った。目立つ子ではなく、記憶に残っていないという証言もあった。
オックスフォード大学時代、一時は中道左派・自由民主党に所属し、「王室廃止論」まで主張した。後に保守党に移った後、当時の発言について「後悔している」と振り返っている。
大学卒業後は石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル(現シェル)などに勤務。2010年の下院議員当選後はその実務能力が評価され、環境相、司法相などを歴任した。
英国の欧州連合(EU)離脱=ブレグジット=を巡っては、当初は残留派だったが後に離脱派に転向。国際貿易相だった20年には日本との経済連携協定(EPA)締結にも尽力し、21年からは外相を務めた。
尊敬する人物はサッチャー元首相
尊敬する人物は「鉄の女」と呼ばれた故サッチャー元首相。一方で「女性政治家が必ずサッチャー氏と比べられることに私はいらだちを覚える。私は私だ」とも述べている。
会計士の夫との間に2人の子供がいるが、06年には当時保守党の下院議員で既婚者だったマーク・フィールド氏との「ダブル不倫」疑惑が報じられ、フィールド氏は離婚した。当時トラス氏は議員に当選する前で、フィールド氏が政治を教える「指南役」だった。この疑惑のため、10年の総選挙へのトラス氏の立候補に反対する声もあったという。
米人気歌手のテイラー・スウィフトさんのファン。大のエスプレッソ好きで知られる。