国民の高い期待を受けてスタートした菅義偉内閣 支持率は昨年12月から急降下、回復は難しい

支持不支持 政治・経済

2020年9月16日に発足した菅内閣は、国民の高い期待を受けてスタートしたが、「ハネムーン」の100日を迎えた12月頃から支持率は大きく降下した。

朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、NHK、共同通信がそれぞれ定期的に実施している世論調査の結果をグラフにした。

いずれの世論調査も「高い支持率でスタート、12月頃から急降下」

安倍晋三総理は2020年8月28日、健康上の問題を理由に突如辞任を表明した。その後自民党総裁選挙を経て、9月16日に国会で菅義偉氏が首班に選ばれ、菅内閣が発足した。

発足直後の世論調査では、、2000年以降で小泉純一郎内閣、鳩山由紀夫内閣に次ぐ高い支持率となった。2012年に発足した第2次安倍内閣を上回った。

菅内閣の支持率の推移を下のグラフに示した。

マスコミ各社の世論調査「内閣支持率」の推移

世論調査_内閣支持率20210125

一般に、内閣の発足から約100日間は「ハネムーン」期間と言われ、その間はマスコミは厳しい批判を控え、国民も期待する傾向にある。

ハネムーンを勘案しても歴代内閣の中で高い支持率のスタートとなったのは、「秋田県の農家の長男に生まれ」「高校卒業後上京して2年間はダンボール工場で働き」「工場を辞めてアルバイトで学費を貯め、法政大に進学」「地縁・血縁のない中、ゼロからスタート」などのサクセスストーリー、及び、テレビで何度も放映された「新元号『令和』の色紙を掲げる『令和おじさん』」やネットで拡散した「大きな口を開けて大好物のパンケーキをほおばる姿」が、国民の好感度を上げたのだろう推察する。

しかし、政治は一時の雰囲気で判断するのは、極めて危険である。当「Nの広場」は巷の評価に惑わされることなく、事実に即して判断して来た。

【参考】表面は優しい「令和おじさん」 実態は冷徹で恐ろしい総理 (2020年9月21日)

発足当初に日本学術会議の会員候補6人を任命しなかったことが問題になり、内閣支持率は10月にやや下げたが、11月には持ち直している。

【参考】日本学術会議問題
いよいよ本性がバレてきた菅総理 自分に不都合な人物は消す (2020年10月6日)
菅総理出身大学の総長が声明、任命拒否は「学問の自由に違反」 (2020年10月7日)
学問の自由、表現の自由を侵害する菅義偉総理 (2020年10月8日)
世界最高権威の学術誌「サイエンス」と「ネイチャー」が、菅首相を批判 (2020年10月8日)

大きく下げたのは12月及び翌年1月の調査である。

朝日新聞社の調査では、前回11月14日-15日の調査で56%だったのが、12月19日-20日の調査で39%に、17ポイントも下がった。観光支援策GoToトラベルを年末年始に全国で一時停止することを決めたタイミングについて「遅すぎた」が79%だった。新型コロナ対策を「評価しない」は56%で、11月の40%から大きく増えた。

読売新聞社は、11月6日-8日、12月4日-6日、12月26日-27日に調査を実施しており、内閣の支持・不支持は、

支 持: 69% ⇒ 61%(8ポイント減)⇒ 45%(17ポイント減)
不支持: 22% ⇒ 27%(5ポイント増)⇒ 43%(16ポイント増)

読売新聞は、支持率が減少し不支持率が増加した原因として、政府の新型コロナ対策やGoToトラベル事業に対する厳しい評価に加え、安倍前首相や吉川貴盛・元農相らの「政治とカネ」問題が影響したことなどを指摘している。

毎日新聞社の調査では、支持率が前回11月7日調査の57%から12月12日調査の40%に17ポイントも下げた。不支持率は49%(前回36%)となり、支持率を上回った。新型コロナ対策について「評価する」は14%で、前回の34%から20ポイントも下がり、「評価しない」は62%(前回27%)に上昇した。毎日新聞は、新型コロナ対策の評価が低下したことが、支持率の大幅減につながったと分析している。

2021年1月の調査では、内閣支持率はさらに下落し、不支持率が上がっている。5社の調査では、内閣の支持率と不支持率が逆転した。

いずれのマスコミも、支持率が大きく降下し不支持率が増加した原因として、政府の新型コロナ対策、GoTo事業、政治とカネの問題などを挙げている。

マスコミは遠慮した表現をしているが、もっとはっきり言えば、総理に新型コロナを収束させる強い熱意と責任を感じないこと、また政治とカネの問題に関して総理は率先して解明する気持ちが全くないことなどが内閣支持率を下落させている。

総理は予算委員会で答弁を求められても、自らが答弁することから逃げて他の大臣に答弁させているようでは、総理への国民の期待はますます薄れる。

夏の東京オリンピック・パラリンピックは、再延期・中止が80%

東京オリンピック・パラリンピックの開催に関して、朝日新聞の1月の調査(カッコ内は前回2020年12月調査)では、

今年の夏に開催する … 11%(30%) 19ポイント減
再び延期する … 51%(33%) 18ポイント増
中止する … 35%(32%) 3ポイント増
その他・答えない … 3%(5%) 2ポイント減

NHKの1月の調査(カッコ内は前回2020年12月調査)では、

開催すべき … 15.9%(27.1%) 11.2ポイント減
さらに延期すべき … 38.5%(30.7%) 7.8ポイント増
中止すべき … 38.2%(31.5%) 6.7ポイント増
わからない、無回答 … 7.4%(10.6%) 3.2減

となっている。

今夏の開催は、11%、15.9%でしかも前回調査より10数ポイント減少している。それに対して、再延期は51%、38.5%で前回よりも増加、中止は35%、38.2%で前回よりも増加している。

国民は、新型コロナが収束しない限り、今夏の開催は難しいと見ている。また、日本がたとえ収束したとしても世界が収束しているとは思えない。そういう状態ではオリンピック開催は困難である。残念なことであるが、遠からず判断されるものと思う。