森林浴は免疫細胞を活性化し、その効果は1か月も持続する(Men’sBeauty 2021.11.21)
自然の中に身をゆだねると、心身共にリラックスしてくるのは、誰でも体験したことがあるだろう。
医科大学の衛生学公衆衛生学教室の准教授は、その感覚を医学的に検証している。そこで、筆者が教わった内容を公開することにしよう。
このご時世、人との密を避け、免疫力を高めたいという読者諸兄の参考になれば幸いだ。
森林浴の効果は、ここまで解明されている
准教授「東京都内で働く健康な男女37人(25~56歳)に森林環境の中で2泊3日滞在してもらい、森林浴を毎日午前と午後それぞれ約2時間実施し、NK細胞(※1)の様子を調べました。
※1)NK(ナチュラルキラー)細胞とは、ガン細胞やウイルスに感染した細胞を見つけて、それを破壊する免疫細胞(リンパ球)。ストレスによりNK細胞の働きは悪くなる。また、40歳以降から加齢と共にNK細胞の数は減る。
その結果、森林浴後にはNK細胞の数が増え、NK細胞自身の活性も高まり、結果的に免疫機能が高まっていることが明らかになりました」
さらに准教授は、森林浴の実験が終了した7日後、30日後に採血をし、NK細胞の様子を調べたそうだ。
准教授「すると、実験終了後でもNK細胞の活性は保たれ、1か月が経過しても、森林浴をする前よりも活性が上昇した状態が続くことがわかったのです。
これにより、月に1度の森林浴でも、NK細胞の活性が上昇し、ガンなどの病気予防に繋がるといえるでしょう」
森の音には脳をリラックスさせる効果あり
森の音に関しても、准教授は興味深い研究をしている。
准教授「森で聞こえる代表的な音と、『ピュアトーン』という人工的な“ピー音”を聞いてもらい、快適感と脳の血流量を調べました。
すると、快適な森の音を聞くと脳の活動が鎮静化され、リラックス状態になるという結果を得たのです」
木に触れると血圧が低下してリラックス状態に
また、フィトンチッド(※2)という植物が放つ香りについても調べたという。
※2)リフレッシュ効果などの森林浴効果をもたらす香りをフィトンチッドという。樹木が発散する揮発性物質で、主な成分はテルペン類と呼ばれる有機化合物。本来は樹木が自分自身を守るために発散するもので、リフレッシュ、消臭、脱臭、抗菌、防虫など、人体や暮らしに有益な効果が知られている。
准教授「好き嫌いの個人差はありますが、ヒノキの精油やスギ材のチップの香りなど、リラックス効果や作業能率を上昇させる効果が認められました。
さらに、ヒノキとスギなどに触れた場合と、金属に触れた場合で血圧を比較すると、樹木に触れたときのほうが血圧は低下し、よりリラックス状態になることがわかりました」
【森林浴の楽しみ方】
●森全体、そして樹木や草花の放つ香りをかぐ
●森や樹木、草花、鳥などをじっくり眺める
●気に入った樹木に触れて抱いてみる
●葉に触れ、樹皮をなでる
●森の中で聞こえる音に耳をすます
●ゆっくり歩く
●気に入った場所では、ゆっくり休憩する
●休憩中に目を閉じてみる
●川や滝、池や湖など水辺を歩く
●時々、深呼吸をする
癒されたいなら『森林セラピー基地』を目指そう!
日本全国には『森林セラピー基地』と呼ばれる、医学的にリラックス効果が認められた森が60か所以上ある。
そのリラックス効果は、森林医学の面から専門家に実証されている。さらに、関連施設などの自然・社会条件が一定の水準で整備されている地域なのだ。
月に1度の森林浴をすれば、1か月は効果の持続が期待できる。ストレスを解消する効果と、フィトンチッドのような植物が放つ香りの相乗効果で、心身共に健康な状態を目指そうではないか!
関連情報
https://www.fo-society.jp/quarter/
取材・文/ウェルネス・ジャーナリスト 藤田麻弥
雑誌やWebにて美容や健康に関する記事を執筆。美容&医療セミナーの企画・コーディネート、化粧品のマーケティングや開発のアドバイス、広告のコピーも手がける。エビデンス(科学的根拠)のある情報を伝えるべく、医学や美容の学会を頻繁に聴講。著書に『すぐわかる! 今日からできる! 美肌スキンケア』(学研プラス)がある。