【データで解析】 新型コロナウイルス ヨーロッパは2度目のロックダウン、日本は対策に失敗

covid-19_World20201123 国際

新型コロナウイルス(COVID-19)は、2019年11月中旬に中国の湖北省武漢市で最初に確認された以降、中国の全省に蔓延し、アジア、ヨーロッパ、北米、中南米、アフリカ、オセアニアなど世界各地に拡散した。

感染は、現在も世界的に拡大傾向にあり、10月に入り、新規感染者数の増加が激しくなっている。特に、冬を迎える北半球での増加が著しい。

米国ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、日本時間25日午後11時25分時点で、世界全体の新型コロナウイルス感染者の累計は5829.5万人、死者は138.2万人である。

新型コロナウイルス 新規感染者数と死者数が北半球で急増している

世界全体における1日の新規感染者数と死者数の推移をグラフに示した。数値は曜日によってばらつきが大きいので、7日間の移動平均値をとった。

新型コロナウイルス 世界全体の新規感染者数及び死者数の推移

新規感染者数は新型コロナ発生以来常に増加傾向にあるが、緩やかに増加している期間と、急増している期間がある。

2月には発生地とされる中国で、他国に先んじて増加した。しかし、徹底した都市封鎖と大量のPCR検査の実施により感染拡大を抑え込んだ。その後、感染は極めて少ない。

3月半ば以降、ヨーロッパと米国で急拡大した。欧米では医療崩壊が起こり、多くの人命が失われた。第1波による死者のピークは4月中旬に見られる。

北半球で夏の季節になると、ヨーロッパでは感染が下火になったが、米国では収まるどころか7月に第2波のピークを迎えた。南半球では冬の季節となり、ブラジルを始め南米の国々で感染が急増した。インドでは5月、6月と月を追うごとに新規感染者数が増え、9月半ばにピークとなり、その後、減少に向かった。

秋の10月になると、米国とヨーロッパで新規感染者が第1波をはるかに超える勢いで増加した。死者も再び高い増加傾向にある。

累計感染者数の多い世界トップ5 … アメリカ合衆国、インド、ブラジル、フランス、ロシア

感染者数(累計)の多い国・地域は、最多がアメリカ合衆国1209.5万人、順次、インド909.5万人、ブラジル605.2万人、フランス217.8万人、ロシア207.1万人である。トップ5が世界全体の感染者数の54.0%を占めている。(ジョンズ・ホプキンス大学、日本時間11月25日午後11時25分)

トップ5のそれぞれの国の感染者数(累計)及び1日ごとの新規感染者数の推移をグラフにした。

新型コロナウイルス 累計感染者数の多い5か国・地域の累計推移

累計感染者数の多い5か国・地域における毎日の新規感染者数の推移

新規感染者数は、ブラジルは7月後半から、インドは9月半ばから減少傾向ある。これから冬を迎える米国、フランス、ロシアでは増加傾向を強めている。特に米国の増加は凄まじい。

感染者(累計)及び死亡者(累計)の多い上位15位までの国・地域を、それぞれ表にした。参考のため、100万人当たりの感染者数と死亡者数も記載した。データの出典は、厚生労働省『新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年11月16日版)』である。

感染者数の多い世界トップ15か国・地域の感染者数、死者数、及び人口100万人当たりの人数

順位国・地域感染者(人)死亡者(人)人口100万人当たり
感染者(人)死亡者(人)
1米国11,715,316 252,535 35,602 767
2インド9,004,365 132,162 6,590 97
3ブラジル5,981,767 168,061 28,343 796
4フランス2,077,755 46,760 31,902 718
5ロシア1,998,966 34,525 13,704 237
6スペイン1,541,574 42,291 32,984 905
7イギリス1,456,940 53,870 21,575 798
8アルゼンチン1,349,434 36,532 30,134 816
9イタリア1,308,528 47,870 21,611 791
10コロンビア1,225,490 34,761 24,345 691
11メキシコ1,019,543 100,104 7,992 785
12ペルー939,931 35,317 28,912 1,086
13ドイツ891,525 13,662 10,675 164
14イラン815,117 43,417 9,831 524
15ポーランド796,798 12,088 21,030 319

死者数の多いトップ15か国・地域の感染者数、死者数、及び人口100万人当たりの人数

順位国・地域感染者(人)死亡者(人)人口100万人当たり
感染者(人)死亡者(人)
1米国11,715,316 252,535 35,602 767
2ブラジル5,981,767 168,061 28,343 796
3インド9,004,365 132,162 6,590 97
4メキシコ1,019,543 100,104 7,992 785
5イギリス1,456,940 53,870 21,575 798
6イタリア1,308,528 47,870 21,611 791
7フランス2,077,755 46,760 31,902 718
8イラン815,117 43,417 9,831 524
9スペイン1,541,574 42,291 32,984 905
10アルゼンチン1,349,434 36,532 30,134 816
11ペルー939,931 35,317 28,912 1,086
12コロンビア1,225,490 34,761 24,345 691
13ロシア1,998,966 34,525 13,704 237
14南アフリカ759,658 20,671 12,973 353
15インドネシア483,518 15,600 1,787 58

深刻さを増すヨーロッパ諸国、2回目のロックダウンを実施

ヨーロッパでは夏が終わる頃から感染が再び増加し、現在は第1波をはるかに超える第2波が押し寄せている。

ヨーロッパで感染者数の多いトップ5か国の毎日の新規感染者数の推移

【フランス】
ヨーロッパの中でも感染拡大が一番激しく、10月中旬からは1日の新規感染者が連日4万人を超えた。フランス政府は春に続いて、10月30日から全土で2度目のロックダウンを実施した。生活必需品の購入や医療処置のための通院、運動のために毎日1時間外出する以外は自宅待機を命じられている。その効果はすぐに表れ、感染者数は大きく減少している。

【スペイン】
スペイン政府は10月25日、全土に緊急事態を宣言した。当初は2週間としていた緊急事態の期間を、29日、来年5月9日まで延長すると発表した。

【イギリス】
ヨーロッパの中で新型コロナウイルスによる死者が最も多い国がイギリスである。ボリス・ジョンソン首相は10月31日、新型コロナの感染再拡大を受け、イングランドで11月5日から12月2日までの4週間、2度目のロックダウンを開始すると発表した。
これはイギリス国内のイングランドを対象にしたもので、ウェールズやスコットランド、北アイルランドではそれぞれの自治政府が独自に行動制限を実施している。

【イタリア】
イタリアは、感染拡大が特に深刻な地域でのロックダウンが11月6日から行われることになった。病院のベッドの占有率や症状のある人の割合などの基準をもとに、州ごとに3つの危険度に分け、危険度に応じて移動の範囲が禁じられる。危険度に関係なく、全土で午後10時から午前5時までの間は外出禁止となり、禁止されている時間に外出する場合は自己証明書の携帯が義務づけられる。
イタリアはヨーロッパで最初に感染が爆発的に広がり、3月上旬から約2か月間、全土でロックダウンが実施された。夏に感染が収まったが、9月から再び感染拡大が始まった。

【ドイツ】
ドイツのメルケル首相は28日、再拡大する新型コロナウイルス流行に対応するため、11月2日から1か月間、緊急の部分的なロックダウン措置を実施すると発表した。レストランやバー、スポーツジム、プール、映画館、劇場が閉鎖される他、集会は2世帯、10人以下に制限され、不要不急の旅行の自粛などが促される。

こらから夏の季節を迎える南米諸国の感染状況

南半球の南米では、新型コロナ感染は5月頃から急速に増加し、特にブラジルは一時期、1日の新規感染者数が米国を超える日が続いた。8月以降、少しずつ感染者数が減少しているが、それでも累計で米国とインドに次いで第3位、死亡者数は米国に次ぐ第2位の多さである。

南米で、ブラジルに次いで多い国は、アルゼンチン、コロンビア、ペルー、チリである。アルゼンチンは10月中旬にピークを迎えており、ブラジルは11月に入り再び増加している。

南アメリカでの感染状況

アジアでも再び感染拡大、特にインドネシアと日本が危ない。

アジアとして、ここでは日本が位置する東アジアと東南アジアを取り上げた。国・地域は、
東アジア・・・日本、韓国、(北朝鮮=データがないので見送り)、中国、台湾、香港、モンゴル
東南アジア・・・フィリピン、ベトナム、ラオス、カンボジア、タイ、ミャンマー、シンガポール、マレーシア、インドネシア、東ティモール、ブルネイ
である。

感染状況を、多い順に表にした。

東アジア・東南アジアにおける感染状況(多い順)

順位国・地域感染者(人)死亡者(人)人口100万人当たり
感染者(人)死亡者(人)
1インドネシア483,518 15,600 1,787 58
2フィリピン413,430 7,998 3,824 74
3日本125,267 1,943 987 15
4中国86,398 4,634 60 3
5ミャンマー74,882 1,676 1,386 31
6シンガポール58,139 28 10,017 5
7マレーシア51,680 326 1,618 10
8韓国30,017 501 586 10
9香港5,492 108 739 15
10タイ3,892 60 56 1
11ベトナム1,304 35 14 0
12台湾609 7 26 0
13モンゴル555 0 172 0
14カンボジア304 0 18 0
15ブルネイ148 3 342 7
16東ティモール30 0 23 0
17ラオス25 0 3 0

トップ5国・地域における日々の新規感染者数の推移を、7日間移動平均のグラフを示す。

東アジア・東南アジアにおけるトップ5国・地域の新規感染者数の推移

感染者数最多のインドネシアは、3月に初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されて以来、感染の拡大に歯止めがかかっていない。人口2億7000万で東南アジアで最も大きい経済規模を持つインドネシアだが、国民の健康問題と経済の落ち込みが深刻な課題となっている。

フィリピンはインドネシアに次いで感染者数(累計)が多いが、新規感染者数は8月をピークに、その後は減少傾向にある。

日本は大変心配な状況にある。4月の第1波、夏の第2波に続いて、現在第3波に襲われている。感染力はこれまでにない勢いである。そのような状況で、果たしてGoToトラベル・イートキャンペーンは如何なものかと思う。

感染防止と経済活動の両方を目指すなら、PCR検査や抗原検査を徹底して実施し、無症状の感染者を早期に発見し、早期に保護・隔離・治療し、国民が安心して旅行が出来、会食を楽しみ、仕事が出来る環境の整備をすべきだ。日本政府の対応は、感染防止に関しては国民の『自助努力』に任せきり。国費を投入して検査体制と医療体制を強化すべきと考える。

ちなみに、日本のPCR検査の数は、人口100万人当たりに換算して比較すると、世界220国・地域の中で151位という非常に少ない数である。(出典:Worldometer

感染初期の頃、中国は大変だ、これからどうなるのか、と心配したが、国家権力をフルに発揮し、強い強制力で国民の移動の禁止・都市封鎖・患者の隔離を徹底し、新型コロナ撲滅に向かった。今では感染者数の累計は日本よりも少ない。

しばしば、感染状況を欧米と比較して、日本の対策は成功しているという論評がある。コロナ民間臨調も「結果オーライ」と評価した。これは間違った認識だ。

新型コロナ対応・民間臨時調査会の「結果オーライ」に異議あり !!」(2020.10.11)

上に掲載したグラフや表を比較すればわかるように、欧米人と比較してアジア人は、感染者数も死亡者数も、そして人口100万人あたりに換算した数値も、2桁少ない。この不思議な現象に関して、山中伸弥教授は『ファクターX』があるに違いない、と考えている。

従って、政府の対策を評価する場合、ファクターXの恩恵に与っているアジアの中で比較・検討すべきだ。アジアの中で、日本の感染者数(累計)は、インドネシア、フィリピンに次いで悪い、ワースト3位である。しかも、最近は日々の新規感染者数がフィリピンを越えて増えている。

日本政府は、コロナ対策に失敗している !!

【データの出典元】

ジョンズ・ホプキンス大学:COVID-19 Dashboard by the Center for Systems Science and Engineering (CSSE) at Johns Hopkins University (JHU)

オックスフォード大学:Our World in Data ”Coronavirus Source Data

厚生労働省『新型コロナウイルス感染症について

NHK 特設サイト『新型コロナウイルス』

コメント

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