ナワリヌイは言った「僕が殺された場合のメッセージは単純だ。“諦めるな”だ」

ドイツ・フランクフルトのロシア総領事館近くに置かれたナワリヌイ氏の写真とろうそく 国際

ナワリヌイは言った「僕が殺された場合のメッセージは単純だ。“諦めるな”だ」(JBpress 2024.2.21(水))

勢古 浩爾

ナワリヌイが映画で語った自らの「死」

ナワリヌイの周囲にはつねに「死」の予感が漂っていた。

映画の冒頭、ナワリヌイは、ダニエル・ロアー監督に、「嫌だろうけど考えてくれ、もし殺されるとしたら、ロシアの人々にどんなメッセージを残す?」と訊かれる。

ナワリヌイは、勘弁してくれよというような表情をしながら、「カモーン、ダニエル。そんな質問するなよ。僕の追悼映画みたいだ。その質問への答えはある。でも2本目の映画にとっておこう。僕が殺されたら退屈な追悼映画を作ってくれ」といい、そこでインタビューはいったん終わる。

そして、映画の終わりの場面。ナワリヌイは妻のユリアとともに、ドイツからモスクワへ帰り、逮捕連行される。緊迫の場面がつづく。

刑務所の全景が映し出される。丸坊主になったナワリヌイが鉄格子の間から両手を出し、Vサインを示す。

そこでインタビューのつづきが映し出される。

監督から「もし逮捕され、投獄されるか、殺されるとしたら、ロシアの人々にどんなメッセージを残すか?」と訊かれたナワリヌイは、こう答えている。

「僕が殺された場合のメッセージは」といったあと、しようがないなというように「フッ」と半笑いをして、「単純だ。“諦めるな”だ」という。

監督にロシア語でも答えてくれ、といわれ、ナワリヌイはつづけてこういった。

「僕が命を狙われたのは、僕らが信じられないほど強いからだ。(略)僕らが持っている巨大な力は悪い連中に押しつぶされている。本当は強いのに僕らに自覚がないからだ。悪が勝つのはひとえに善人が何もしないから。行動をやめるな」

こういって、わかったかい? というように視線を一瞬定め、それから晴れやかに笑った。晴れやかだったのか?