【基礎から分かる】統一教会はどのように生まれ、何を教えているのか

ノアの方舟 社会

【基礎から分かる】統一教会はどのように生まれ、何を教えているのか 安倍元総理暗殺事件で注目(デイリー新潮 2022年07月16日)より抜粋

一体、統一教会(現:世界平和統一家庭連合)とはどういう宗教団体なのか。

そのなりたちや協議について宗教学者の櫻井義秀氏の著書『霊と金―スピリチュアル・ビジネスの構造―』をもとに見てみよう(以下、引用はすべて同書第2章「統一教会と霊感商法」より・記述はすべて同書刊行時=2009年のものです)。

統一教会の歴史

統一教会の正式名称は、世界基督教統一神霊協会(The Holy Spirit Association for the Unification of World Christianity)である。統一教会(略称)は、1954年に韓国で文鮮明により創設され、日本では1959年から伝道が開始された。日本では50年近い宣教の歴史があり、数万人の信者がいると推定される。

教祖・文鮮明氏 1920年、北朝鮮平安北道定州郡に生まれる

教祖の文鮮明は1920年に現在の北朝鮮、平安北道定州郡に生まれ、16歳でイエスから啓示を受けたという。1941~43年、早稲田高等工学校に在籍し、卒業後鹿島組で働くが、終戦後、退職して韓国のイスラエル修道院で補助引導師になる。1946~50年、平壌で伝道活動を行うがスパイ容疑で逮捕され、興南監獄に収容される。国連軍の進撃で解放され九死に一生を得た後、今度は釜山で伝道を再開する。この時期、キリスト教は燎原の火のように韓国人の心をとらえ、どこを歩いても掘っ立て小屋の教会や牧師の熱烈な説教に出くわしたといわれている。統一教会はそのような新興教会の一つであった。

文鮮明の教説を弟子の劉孝元が1957年にまとめたものが「原理解説」(「原理講論」の完成は1966年)と呼ばれる教典である。1955年、韓国の名門梨花女子大の教師5名と学生14名が入教を理由に退職・退学させられ、文鮮明は信者たちを教会に不法監禁したとして検挙された。教祖と信者の女性たちが「血分け」と呼ばれる性的秘儀を行ったというスキャンダルであったが、実態は語られていない。結局、無罪判決を得ている。

その後、教勢は徐々に伸びたが、財団法人の認可を得たのは1963年であった。文鮮明は1965年に世界巡回路程に出発し、1971年以降はアメリカに居を構え、世界宣教を指揮することになる。

日本 1964年に宗教法人 初代会長は久保木修己氏

日本では1964年に久保木修己を初代会長にして宗教法人の認可を得る。同年、全国大学連合原理研究会が創立され、大学生・青年への伝道が活発化する。この団体は40年以上も日本の主要大学で活動を継続しているので、読者の中に私も誘われたという人がいるかもしれない。「原理の勧誘に気を付けろ」と大学の新聞会や寮の先輩から新入生へアドバイスがあったと思う。

統一教会は、伝道のみならず、政治活動にも積極的に関わるようになる。1968年に国際勝共連合を設立し、反共政治活動を始める。これによって保守派の自民党大物政治家とも友好関係を築いた。

1974年には世界平和教授アカデミーを設立し、言論界に共鳴者を求める。大学人の中には統一教会の経費で国際会議等に出席した者も少なくなかった。こうした政治的対外活動には多額の経費がかかったし、韓国、アメリカでの宣教活動にも莫大な資金を必要とした。文鮮明の指示の下、日本の統一教会は資金調達を一手に引き受け、「資金作りをミッションとする信徒」を養成する教会となったのである。筆者としても日本の信徒が流した汗と涙に敬意を表し、この点を詳しく説明したい。

創設期は廃品回収や花売り 80年代から霊感商法

創設期の信徒たちは廃品回収や花売りを細々とやっていたが、世界宣教の経済基盤を築くという目的で会社組織を作り、物販で財源の確保を目指すようになる。なかにはペンタブレット等のIT製品製造で成功したワコムのような企業も現れた。ただし同社は、その後社長が統一教会系グループと縁を切り、本業に専心している。事業が軌道に乗った例外的事例である。

ビジネスの最終判断を文鮮明にあおぐ神頼みの商売には厳しいものがあった。そこで、むしろ宗教活動そのものを経済活動に転換できないかと知恵を絞って考案されたのが、姓名判断や家系図鑑定と絡めた商品の販売である。先祖の因縁や霊障を取り除く、あるいは開運のためといって、1980年代に韓国から朝鮮人参茶、高麗大理石壺等を輸入して販売した。このやり方が霊感商法として80年代後半から社会問題となった。

1987年に全国霊感商法対策弁護士連絡会が結成され、これまで商品の返還交渉や損害賠償請求の提訴が行われてきた。同会の調査によれば、全国の消費者センターや弁護士会に寄せられた2007年までの累積被害総額は1024億4720万425円に達するという。このような宣教資金調達のやり方とそれに付随して広まった悪評により、統一教会は宣教方法すら変えざるを得なくなった。統一教会=霊感商法というイメージから、名前をそのまま出すと一般市民は警戒して話を聞いてくれなくなったのである。そのため、とりあえず、正体を隠して市民に近づき、印鑑や壺の販売方法で培った手相・姓名判断、家系図鑑定を入り口にして信者を勧誘する独特な布教方法を採用するに至った。・・

統一教会の教義

創造原理、堕落論、復帰原理が柱

統一教会の教義は教典「原理講論」に加えて、教祖がこれまでの説教で語った膨大な「御言葉」、及び聖書の参照から構成される。創造原理、堕落論、復帰原理が柱となる。

創造原理では宇宙の根本原理、神の創造目的が説かれ、堕落論では不幸の原因である原罪の真相が解き明かされる。

創世記において、エバが善悪を知る木の実を蛇にそそのかされて食べ、その実をアダムにも食べさせると目が開き、二人は裸であることに気付いた。神は、取って食べるなという神の戒めを破ったので二人を楽園から追放したという、あの箇所である。

堕落はルシファーとの禁断の愛

文鮮明は、蛇とは後にサタンとなる堕天使にして元天使長のルシファー(統一教会ではルーシェルという)であり、人類始祖のエバがそそのかされて食べた禁断の果実とは、ルシファーとの禁断の愛であったと断じる。

神様はアダムが一人でいては寂しかろうと、アダムのあばら骨からエバを作ってくれたのであるから、エバはアダムの伴侶である。しかるに、エバはルシファーと不倫をおかし、次いでアダムとも慌てて性関係を持つなど堕落した。そして、サタンからエバ、エバからアダム、人類の始祖から子孫たる全人類に神に背いた悪の血統が相続された。人間が罪を犯すのはサタンの血をひく末裔(まつえい)のゆえとされる。

もちろん、このような堕落の真相やそれが原罪だといった説明は、聖書に全く書かれていない。

では、何を根拠として? 実は文鮮明がイエスや神から直接聞き及んだ話だという。そう言われてしまうとわれわれとしても、ひとまずなるほどと聞いておくしかないではないか。

神は人類の完全な救済のため、再臨主を遣わした

神は人間を神の側に取り戻す計画を考えられたそうだ。救世主の派遣である。

統一教会によれば、イエスは人間の娘を娶(めと)って善なる子孫を残す予定であったが、人間の不信により十字架で殺害された。そこで神は計画を変更せざるを得ず、イエスを天にあげられ、イエスの復活を信じるものたちに霊的救済のみを約束されたのだとする。

しかし、神は人類の肉体も含めた完全な救済(復帰の摂理)をお考えになり、人類に再臨主を遣わした。その再臨主こそ何を隠そう、私であるというのが文鮮明の言である。これまた本人がそう言い、霊界も証すところだということなので了承しよう。しかし、彼の母がマリアのように彼を処女懐胎(無原罪の宿り)したという話はない。・・

『霊と金―スピリチュアル・ビジネスの構造―』より一部抜粋、再構成。

デイリー新潮編集部