参院選の獲得議席、自民の圧勝が濃厚 野党第1党が維新に変わる転換点に?(AERAdot. 2022/06/01 08:00)
7月10日に投開票が行われる見通しの参院選。各党の獲得議席はどう変化するのだろうか。野党には地殻変動も見られるようだ。AERA 2022年6月6日号の記事から紹介する。
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参院選は全国45選挙区のうち、32を占める定数1の「1人区」が結果を左右する。前回2019年の参院選では、1人区で自民党が22勝した。
7月10日に投開票が行われる見通しの参院選はどうだろう。
報道向けのデータ収集を行うJX通信社(東京都千代田区)が4月23~25日に全国約2万7千人を対象に実施した情勢調査によると、1人区の7割超を占める24選挙区で自民候補がリードしていることがわかった。
獲得議席予想は自民52-71、公明10-15、立憲11-26、維新10-21、共産4-10、国民民主2-4、れいわ1-3、社民0-1などとなっている。
約半数の有権者はまだ態度を明らかにしておらず、各党の候補者擁立も完了していないため情勢は流動的であることが大前提。しかしこのままいけば、「自民圧勝」が濃厚といえそうだ。同社の情勢調査事業責任者でデータアナリストの衛藤健さんは「自民の強さの要因は野党にある」という。
「野党の票が割れているのが大きいと見ています。昨年の衆院選で『野党共闘は失敗した』と言われましたが、選挙結果を冷静に分析すると、着実に票の取り込みにつながっていて、実際には成功しています。ただ、立憲・共産両党の底力がそもそも弱くなっているため失敗に見えるのだと思います。今回もある程度候補者を一本化できれば、もっといい勝負ができる選挙区は少なくないでしょう」
旧民主党系は伸び悩み
立憲と共産は今夏の参院選の1人区について、野党候補の勝利が見込まれる選挙区を優先して候補者調整を進める方針を確認している。ただ、昨秋の衆院選のように各党首が署名する形での「政策合意」は見送るため、どこまで効果を得られるかは不透明だ。
野党には地殻変動も見られるという。
「現状の支持率は立憲のほうが維新より上ですが、最終的に維新が上回る展開は十分あると思っています。今回の参院選は二大政党の一翼を担ってきた旧民主党系の政党が伸び悩み、野党第1党が維新に変わる転換点になる可能性があります」(衛藤さん)
その理由は、民主党政権時代の政権担当能力への疑問が払拭されておらず、「立憲は無党派層の支持が弱いから」だという。かつては「投票率が下がれば自民党が有利」というのが選挙の常識だったが、今は様相が異なるようだ。
「無党派層からの支持が最も多いのは自民。野党では維新です。投票率が上がれば上がるほど自民党が有利になり、野党だと維新が伸びると見ています」(同)
「自民一強」は岸田内閣の支持率の高さにも表れている。全国平均は48.7%で、不支持率が支持率を上回る選挙区はゼロ。ちなみに全国最高は岸田文雄首相の地元の広島県で69.6%、最低は沖縄県で37.3%だった。
一方、野党で元気なのは維新だけといえそうだ。
今年2月に「政党イメージ」という観点から、「維新支持」の真相に迫る独自調査を実施した関西大学の坂本治也教授(政治過程論)は「維新の勢いは続いています」と言う。
「維新ブームが起きているというほどではなく、あくまで他の野党と比べて相対的に強いというレベルです。全国では自民が圧倒的に強いのが実情で、参院選でも自民が負ける要素はなかなか見当たりません」
弱者の味方1位は維新
坂本教授らの全国ウェブ調査によると、維新を「経済的弱者の味方になってくれる」政党だと捉える人は12.2%、「一般人の感覚に近い」政党だと捉える人は22.3%で、いずれも全政党の中で最も高かった。また、「政権担当能力がある」「外交や安全保障の問題で信頼できる」イメージについては、維新は自民には大きく後れをとっているものの、野党の中では首位。維新のこれらのイメージの良さは、議席面での野党第1党である立憲の2倍以上に上った。
坂本教授が注目するのは維新の「外交・安全保障分野」での立ち位置だ。
「維新は自民よりもタカ派と捉えられる面もありますが、特にロシアのウクライナ侵攻後は、適度にタカ派の政党のほうが安心して託せると考える国民は多いのではないかと思います。維新が立憲よりも政権担当能力が高いと見られている理由もそこにあります」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2022年6月6日号より抜粋