「コロナ対策」交付金、複数の自治体で関連不明の支出…公用車、シャンパンタワー、巨大なイカの像 海外まで話題が波及

コロナ交付金で巨大なイカの像を設置 政治・経済

「コロナ対策」交付金で公用車、シャンパンタワーも 複数の自治体で関連不明の支出

「コロナ対策」交付金で公用車、シャンパンタワーも 岸田首相「しっかり検証」 複数の自治体で関連不明の支出(東京新聞 2022年5月31日 06時00分)

新型コロナウイルス対策で自治体を支援する地方創生臨時交付金で、感染症対応との関連性が明確でない事業への支出がいまだ相次いでいた。一部の自治体では、幹部が出張する際の公用車購入や、県民による結婚式の費用に充てられていた。30日の参院予算委員会で、岸田文雄首相は「政府としてもしっかり検証しなければならない」と話した。

「コロナ対策」交付金で公用車、シャンパンタワーも

臨時交付金は、コロナの感染拡大で影響を受けた地域を支えるため2020年度に創設された。自治体が「コロナ対策」とすれば原則使い道は自由とし、約15兆円計上してきた。22年度補正予算案で穴埋めする予備費1兆5000億円のうち、8000億円が交付金の拡充に使われる見通しだ。

この日の参院予算委では、臨時交付金の使途について、立憲民主党の蓮舫議員が政府をただした。福井県では対象期間中に婚姻した夫婦を対象に5万円分のカタログギフト贈呈を行い、結婚式費用やシャンパンタワーに使えるようにしていた。本紙の取材に、県の担当者は「ブライダル業界が苦境で、業界支援と人口減対策のため」と答えた。

公用車購入も相次いでいた。長崎県川棚町では幹部出張用として385万円で、21年4月にトヨタ自動車「アルファード」を買っていた。同町の担当者は「感染リスクを下げるため」として、使い道に問題はないとの見解を示した。

内閣府によると、臨時交付金の初年度だった20年度中に完了した事業のうち、自治体が政策効果を示したのは約2割にとどまる。

政府の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は20年11月の会合で「便乗にしか見えない事業が多い」と問題を提起し、今年4月にもコロナ対策と関連が不明確な例が引き続き散見されると批判していた。

コロナ交付金で巨大なイカの像を設置「海外まで話題が波及するとは…」

コロナ交付金で巨大なイカの像を設置「海外まで話題が波及するとは…」 多額の税金投入で注目(東京新聞 2021年5月8日 11時20分)

石川県能登町越坂の観光交流施設「イカの駅つくモール」に設置された巨大なイカのモニュメントに多額の税金が投じられたことについて、英BBC放送など海外メディアが続々と報道している。主な理由は、国の新型コロナウイルス感染症対策の地方創生臨時交付金2500万円が設置費用に充てられたためだ。町内でも賛否が割れる交付金の使い道は、海を越えて波紋を広げている。

「日本の海沿いにある町が新型コロナの交付金で巨大なイカの像を設置し、物議を醸している」。BBCはウェブサイトに掲載した4日付の記事で、こう切り出す。コロナ禍で能登町の観光客が減っていると記述。「交付金は直接のコロナ対策に充てる必要はない。だが、パンデミック(世界的大流行)が収束しない中、巨大イカに多額の費用が使われたことに批判の声がある」などと指摘した。

モニュメントは高さ4メートル、全長13メートル、幅は最大9メートル。4月に完成した。航空機やレーシングカーなどに使う繊維強化プラスチック(FRP)製で、制作費は計3000万円。内訳は交付金2500万円、町費500万円。全国有数の水揚げを誇る能登町の小木港特産のスルメイカをPRするのが狙いだ。

英紙ガーディアンは5日付電子版に映像を掲載した上で「ピンクと白の生き物が触腕と口を開いており、開口部でポーズを取って写真を撮ることができる」と描写した。米国のニューヨーク・タイムズや韓国メディアなども取り上げている。

人口1万6000人ほどの小さな町が世界の注目を集める事態に、地元では困惑の声が上がる。

「海外まで話題が波及するとは…率直に驚いた」と打ち明けるのは、町ふるさと振興課の担当者。6日にも複数の欧米メディアから取材を受けたと話し「(臨時交付金の使途として)批判があることは受け止めている。観光誘客などに最大限活用し、理解を求めたい」と強調した。

一方、町民の胸中は複雑だ。60代女性は「こういう形で能登町が世界に知られるのは恥ずかしい。コロナ検査の充実など他に使い道があり、海外の人にとってもモニュメントとコロナ対策は結び付かないのでは」と指摘。40代男性は「結果的に人が集まったとしても、今後は税金の使い道はしっかり議論してほしい」と注文した。

6日にイカの駅を取材で訪れた独ニュース制作会社「ラプリーTV」の女性記者(43)は、BBCの報道で世界の関心が高まったと分析。「交付金の使途の是非という論点に加え、フィギュア文化の根付く日本らしいカルチャーとしても受け止められ、高価で巨大なイカの像に驚いているようだ」と話した。

能登町は能登半島の北東部に位置し、イカ釣り漁業とブリなどの定置網漁業が全国的にも有名。「イカの駅つくモール」の名は、眼前の九十九湾にちなむ。