プーチン氏の「カネ」知る大富豪〝怪死〟 裏切り者を口封じか 妻と娘と無理心中、一家心中、霊媒師宅の地下室で死亡…すでに8人(zakzak 2022.5/22 10:00)
ロシアのプーチン大統領が、経済的にも追い込まれている。米国が露国債のデフォルト(債務不履行)認定に踏み切る見通しが強まったほか、西側からは外貨準備や新興財閥「オリガルヒ」の資産を没収する案も浮上する。プーチン氏の「カネ」と「秘密」を握るとされるオリガルヒは8人が連続不審死したが、プーチン政権から離反する動きは止まらないと専門家は予測する。
■G7も没収議論
イエレン米財務長官は18日、米国人が25日までロシア国債の利払いを特例で受け取ることができる措置を、そのまま失効させるのが「合理的だ」と述べ、デフォルトに追い込む考えを示唆した。
先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、ロシアの外貨準備など凍結資産を没収する案も議論された。
さらに欧州連合(EU)欧州委員会のフォンデアライエン委員長は19日、差し押さえたオリガルヒの資産を没収し、ウクライナの復興資金に充てる方法を模索していると述べた。
ロシア政治に詳しい筑波大名誉教授の中村逸郎氏は「オリガルヒの資産は本人名義でないものも含めて全容を把握するのは難しく、個人資産を没収できるかは不透明だ。ただ、欧米の姿勢はオリガルヒに『自分の名前が割れているのではないか』と恐怖を与える脅しの効果がある。西側の情報戦の一環だろう」と分析する。
■浴室、ガレージ
オリガルヒの富豪をめぐっては、1月に投資会社ガスプロム・インベスト幹部のレオニド・シュルマン氏が浴室で、ウクライナ侵攻後の2月には同グループのガスプロム幹部のアレクサンドル・チュリャコフ氏が自宅ガレージで、それぞれ遺体で発見された。
4月にガスプロムバンク元副社長のウラジスラフ・アバエフ氏が妻と娘と「無理心中」した翌日、天然ガス大手ノバテク元副会長のセルゲイ・プロトセニャ氏一家の「心中」も発覚した。今月8日には石油会社ルクオイルのアレクサンドル・スボチン氏が、霊媒師とされる人物宅の地下室で死亡するなど、少なくとも8人のオリガルヒとその家族らが不審死している。
■マフィア殺害か
「8人もいるだけに自殺の可能性は低い」と疑うのは、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏。「ロシアにはとどまれないとみて海外逃避をもくろむ富豪間でトラブルが発生し、マフィアらを用いて、殺害に及んだ可能性もある」と推測する。
米紙ニューヨーク・ポストは、ロシアの諜報機関がエネルギー産業幹部の名前を含むリストを作成していたと報じた。対外諜報機関による秘密工作の資金調達に関する情報漏洩を疑ったためだという。
前出の中村氏はオリガルヒの不審死について「連邦保安局(FSB)第6局が関与した可能性がある。プーチン氏とオリガルヒの利益を守るために創設された部署といわれており、内部情報を知る『裏切り者』を見せしめに殺害した可能性がある」との見方を示す。
オリガルヒの動向はプーチン政権にとってもダメージが大きい。中村氏は「西側が制裁を打ち出すことによってオリガルヒの分断は加速し、政権に不利な状況が続くだろう」と語った。