原料は雑草と牛の胃に住む微生物!?災害時にも役立つエネルギー「雑草発電」の可能性(@DIME 2022.05.20)
牛の胃に住む生物が大活躍!
災害などの緊急時に〝雑草〟が人々を救う未来を目指し、複数の企業や研究機関が「雑草発電」の研究を行なっている。そのひとつが、石川県立大学生物資源工学研究所だ。講師の馬場保徳さんによると、鍵を握るのは何と、牛の胃に住む微生物だという。
「植物の細胞壁はリグノセルロースという硬い組織からできており、簡単に分解できませんが、牛の胃に住む微生物なら分解可能です。さらに発酵させることでメタンガスを作り出します」
メタンガスは都市ガスの主成分なので、燃料として使用可能だ。さらに馬場さんはメタンガスを原料とする発電機を企業と共同開発した。今後はスーパーや道の駅などへの普及を目指す。
「スーパーでは毎日大量の野菜くずや残飯が発生し、多額の費用をかけて処分していますが、メタン発酵なら安価かつガスや電気も作れます。発酵後の残渣(残りかす)も肥料になるので、農家の方々と協力し活用を目指したいです」
2021年2月には、山梨大学でも刈草から安定かつ高収量のメタンガスを生成する微生物群の確立に成功。捨てられるだけだった雑草が、エネルギーを生み出すバイオマスとなる未来は近い。
紙類も同様に分解・発酵可能なので、廃棄紙資源を有効活用できる。さらに研究が進み、木材の分解も可能になれば、幅広い資源を電気やガスとして変換できるだろう。
メタンガス発電システム
写真左側の装置が可溶化槽、右奥の装置がメタン発酵槽。石川県立大学では、冬の停電時でも装置が使えるように、温度管理を必要としない発酵技術を確立中だ。
取材・文/桑元康平