ロシアに強制連行されたウクライナ住民を待つ「極東で強制労働」の過酷な未来

シベリアでキャベツの苗を植え付ける日本人捕虜 国際

ロシアに強制連行されたウクライナ住民を待つ「極東で強制労働」の過酷な未来(女性セブン 2022.04.15 07:00)

避難民の銃殺やレイプなど、ロシア軍によるウクライナ侵攻における非道な行いが続々と発覚するなか、新たに指摘されたのが「子供の強制連れ去り」だ。4月8日、ウクライナ最高会議の人権担当者であるデニソワ氏は、フェイスブックに以下のような投稿をした

「ロシアのウクライナへの侵攻以降、12万人以上の子供たちがロシア軍によって強制的に連れ去られた」

マリウポリ市議会は3月19日、ロシア側の行為についてSNSを通じ、以下の声明を発表した。

「第二次世界大戦中のナチスによる強制連行のような蛮行が21世紀に起きている。市民がよその国へ連れ去られるとは、想像を絶する事態だ」

一方、ロシア国防省は、ウクライナ側から65万8000人以上が「避難した」と発表した。うち12万人以上が子供だと認めた上で、「ウクライナ国民を救うための包括的支援の措置の一環」であると主張した。

ウクライナ住民は、いったん乗ると自分の意思では降りることができない「封印列車」で運ばれているようだが、いったいどこに連れていかれるのか。

「12万人の子供たちは、家族とともにロシアの極東であるシベリアやサハリン(樺太)に送られる可能性が高い」

そう語るのは、プーチン大統領研究の第一人者である筑波大学教授の中村逸郎さんだ。

「サハリンはソ連邦崩壊後に人口が急速に減少し、半分ほどになりました。現地では都市部に移住したロシア人に代わって中国人が大量に移住して、地域によっては中国人が人口の20%を占めるようになりました。その土地にロシア語を理解して文化が近いウクライナ人を移住させ、極東の“中国植民地化”を食い止めるのがロシアの狙いと思われます。

ロシアはウクライナ住民を家族ごと移住させて、農作業や森林伐採の労働をやらせるつもりでしょう。コロナ禍もあって投資が集まらないなか、労働力不足を補うためにウクライナ住民を酷使するはずです」(中村さん)

ロシア(旧ソ連)は敵国の住民を何度も自国に強制的に連れ去った歴史を持つ。その中に、日本も含まれることを忘れてはならない。

「第二次世界大戦前、旧ソ連は西の国境付近にいたドイツ人やオランダ人をシベリアに強制移送し、スターリン時代は朝鮮系の人たちを中央アジア付近に強制移住させました。さらに第二次世界大戦で日本が敗戦した際、満州に残っていた60万人近い日本人がシベリア送りになり、極寒の地で身も心も凍るほど過酷な強制労働を課せられました。日本政府の調べでは、抑留者のうち約5万5000人が死亡しています。

今回のロシアの65万人連れ去りは、かつてのシベリア抑留を彷彿とさせる残虐な行為であり、日本にとっても他人事ではない大問題です」(中村さん)

ウクライナ住民の連れ去りはシベリア抑留以上の悲惨な結末が待つかもしれない。

「日本のケースでは抑留者が帰ることができる母国があり、約47万人が抑留後に帰国しました。ところがウクライナ住民は戦争によって自分たちが帰る国がなくなるかもしれず、強制連行されたウクライナ住民は極東に永住することになる可能性が高い。

ロシアという国には、人間をモノのように右から左に動かしてきた歴史があります。ウクライナ住民も同様に、移住先ではいくつもの家族が狭い1つのアパートに押し込められて、周囲に警察官が立って自由な行動ができなくなるでしょう。強制収容所にいるような暮らしを強いられ、過酷な強制労働を課せられるはずです」(中村さん)

12万人に達する子供たちはロシアの「手駒」として利用されそうだ。軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんが指摘する。

ロシア軍はウクライナの子供たちを自国の宣伝に使うと予想されます。例えば、ウクライナの子供にマイクを向けて、“ウクライナ兵は私たちを置いて逃げたひどい人たちだ”と言わせて、ロシア国内の世論が“やっぱり正しいのはプーチンだ”とプーチン支持で結束するように仕向ける。プーチンの支持率を堅持するための物語にウクライナの子供たちを利用するわけです」

さらに恐ろしい事態も想定される。

「子供たちを親ロ派として育て、脱ウクライナ化やロシアのイデオロギーを教え込む可能性があります。そうなると、彼らが大人になった際、ウクライナ人同士が戦う構図が生まれるかもしれません。

また、ロシア軍やロシアに属するチェチェン共和国の部隊が連れ去ったウクライナ人の幼い子供を洗脳し、ロシアのために戦う軍人として育て上げる可能性があります。実際、チェチェン共和国の私兵がウクライナの孤児院に潜入し、幼児の連れ去りを画策したとの疑惑もある」(国際ジャーナリスト)

暗黒の歴史と悲劇が繰り返されるのだろうか。

※女性セブン2022年4月28日号