ロシア一部銀行のSWIFT排除で合意、米欧が追加制裁
ロシア一部銀行のSWIFT排除で合意、米欧が追加制裁(By Reuters Staff ロイター 2022年2月27日7:38 午前12時間前更新)
[ワシントン/ブリュッセル 26日 ロイター] – 米国、英国、欧州、カナダは26日、ロシアの一部銀行を国際銀行間の送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除することで合意した。ウクライナへの侵攻を続けるロシアへの新たな制裁措置の一環。
共同声明は、欧州委員会、フランス、ドイツ、イタリア、英国、カナダ、米国の首脳が署名。制裁にはロシア中央銀行の外貨準備に関する規制も含まれ、数日中に実行する。
声明は「われわれはロシアに(ウクライナ侵攻の)責任を取らせる。この戦争がプーチン(大統領)にとって戦略的な失敗に終わるよう、共同で取り組む所存だ」とし、「われわれはきょう発表した措置に加えて、ロシアにウクライナを攻撃した責任を取らせるため、さらなる措置を講じる用意がある」とした。
欧州委のフォンデアライエン委員長は「ロシア軍がキエフやその他のウクライナの都市を攻撃する中、われわれはロシアに巨額のコストを科し続けることを決意している。そのコストとは、ロシアを国際金融システムとわれわれの経済からさらに孤立させるものだ」と述べた。
SWIFTから排除されたロシアの銀行は、世界での金融取引の大半ができなくなり、ロシアの輸出入を効果的に止めることになると説明。「これらの銀行は国際的な金融システムから切り離され、世界で事業を展開する能力が損なわれるだろう」とした。
具体的にロシアのどの銀行がSWIFTから排除されるのかは、現時点では明らかになっていない。
日本もSWIFTからのロシア排除の取り組みに参加 岸田総理が表明
「暴挙には高い代償が伴うことを示す」日本もSWIFTからのロシア排除の取り組みに参加 岸田総理が表明(ABEMA NEWS 2/27(日) 20:16配信)
岸田総理は27日夜、「ウクライナへのロシアの侵略により、ロシアとの関係をこれまで通りにしていくということはもはやできない。日本はG7各国、国際社会ともにさらに厳しい制裁措置を取る」と述べ、「けさ発出された欧米諸国からの表明では、SWIFTからのロシアの特定銀行からの排除をはじめ、ロシアを国際金融システムや世界経済から隔離させる措置を講ずるとされている。欧米諸国から声明への参加要請があり、日本も取り組みに加わる。他のG7諸国からも強く歓迎する意向が示されている」とした。
また、プーチン大統領を含むロシア政府関係者への資産凍結のなどの制裁を措置を取るほか、ウクライナに対し1億ドルの緊急人道支援を行うことも表明した。こうした決定について遅れをとっているのではないかとの質問には「遅れたとは認識していない。日本はこれまでもG7をはじめとする国際社会と連携して対応してきており、その立場は変わらない」と答えた。
国際的決済網 SWIFTとは?
【詳細】国際的決済網 SWIFTとは?ロシア排除の影響は?(NHK 2022年2月27日 18時42分)より抜粋
SWIFT 貿易などの決済や送金に使うシステム
SWIFTは、ベルギーに本部があるSWIFT=「国際銀行間通信協会」が運営する決済ネットワークです。
およそ200の国と地域の1万1000以上の金融機関が国をまたぐ貿易などの決済や送金に使うシステムで、1日当たり4200万件の送金情報を取り扱っています。
決済額は1日当たり5兆ドル、日本円でおよそ575兆円にのぼります。
締め出しでロシア経済に大きな打撃を与えるねらい
欧米各国は、このネットワークからロシアの銀行を締め出し、貿易の決済を困難にすることでロシア経済に大きな打撃を与えるねらいです。
2012年には欧米の経済制裁でイランがSWIFTから排除され、この年のイラン経済のGDP=国内総生産の成長率がマイナス7.4%になるなど、深刻な景気低迷に陥りました。
ロシア排除で世界各国にも影響が
ただ、ロシアへの強い制裁によって、その影響が世界各国にも跳ね返ってくることが懸念されています。
市場では、すでに高止まりしている原油や天然ガスの価格がさらに上昇するおそれがあると指摘されているほか、ロシアから多くの天然ガスなどを輸入するヨーロッパの国にとっては、仮に輸入代金の決済が滞れば供給に影響が及びかねません。
アメリカの政府高官はこうした打撃をできるかぎり避けるための対応を検討し、数日以内に制裁を実施するとしていて、ヨーロッパ経済などへの影響を抑えつつ、ロシアに対して実効性を伴う形で強い圧力をかけられるのかが焦点になります。
一方、今回の制裁によってロシアが金融面でも中国との結び付きを強めて別のネットワークの構築を強化していくきっかけになるという警戒も出ています。
エネルギー価格への影響は?
ヨーロッパは石油の29%程度、天然ガスの34%程度をロシアからの輸入に依存しているだけに直接の影響が懸念されています。
さらに専門家は今後、ロシアが対抗措置としてヨーロッパ向けのパイプラインによる原油や天然ガスの供給を絞る手段に出た場合には原油価格や天然ガスの価格上昇に一段と拍車がかかる可能性を指摘しています。
ロシアにとっては石油や天然ガスの輸出は国の大きな収益源であり、取り引きができなくなれば経済的に大きな打撃になります。
ただ、今回の措置でヨーロッパなどへの影響を踏まえエネルギーの決済に使われる銀行を除外するようだとロシアへの影響は限定的なものになる可能性もあります。
世界、日本のGDP押し下げられる影響も
また、アメリカのバイデン政権の高官が今回の措置が、ロシアとエネルギーに関わる取り引きをしている国々に影響を及ぼさないようにする必要があると述べていることについては「すべての決済を止めてしまうとエネルギー価格の上昇などで、ブーメランのように欧米の経済に影響が及ぶため、現状では、ロシアの天然ガスのヨーロッパへの供給を止めないような措置にとどめられている。しかし、今後、ロシアの出方次第では、段階的に制裁を強化し、エネルギー価格にも影響が及ぶだろう」と指摘しました。
その上で、「エネルギー関連も含めて、ロシアのすべての銀行が最終的に制裁対象となれば、エネルギー価格の急騰や金融市場の混乱につながり、世界のGDP、日本のGDPも押し下げられる影響があると考えられる」と述べました。