ステルス・オミクロン”BA.2″について現時点で分かっていること

忽那賢志医師_オミクロン株亜種について語る 社会

オミクロン株の亜種”BA.2″について現時点で分かっていること 「ステルス・オミクロン」の意味とは?(忽那賢志 感染症専門医 YAHOO!ニュース 1/29(土) 13:10)

オミクロン株の亜種”BA.2″がデンマークをはじめいくつかの国で広がっています。日本でも市中感染例が報告されており今後の拡大が懸念されます。BA.2について現時点で分かっていることについてまとめました。

欧米諸国がピークアウトする中、デンマークでは増加が止まらず

人口100万人当たりの新規感染者数の推移(Our World in Dataより)

日本よりも先にオミクロン株による新型コロナの流行がみられていたイギリス、アメリカ、イタリアなどの国では感染者数はピークアウトし減少に転じています。

しかし、その中でデンマークは今も感染者が増え続けています。1日の感染者数が人口100万人当たり7600人を超えており、これは日本で例えると1日90万人の感染者が出ているという凄まじい状態です。

デンマークで感染者が増え続けている原因の一つとして、オミクロン株の亜種「BA.2」の拡大が挙げられています。

オミクロン株の亜種「BA.2」とは?

BA.2が検出された国および数の推移(UKHSA publications gateway number GOV-11175より)

現在、オミクロン株(B.1.1.529)は、その下位系統として

BA.1(B.1.1.529.1)
BA.1.1(B.1.1.529.1.1)
BA.2(B.1.1.529.2)
BA.3(B.1.1.529.3)

の4つの亜種に分かれています。このうち、日本を含め世界で主流になっているのはBA.1です。しかし、BA.2という亜種も世界各国で報告が増えてきており、日本でもこれまでに検疫ですでにBA.2は報告されています。

また1月28日には日本国内でも市中感染例が報告されましたが、現時点では全くリンクのない市中感染例は報告されていません。

デンマークにおける変異株の占める割合の推移(Outbreak.infoより)

デンマークでは、2021年12月からBA.1が拡大していましたが、後から侵入してきたBA.2が現在はこれを超えて広がり、現時点でゲノム解析が行われているウイルスのうち60%を占めています。

またデンマーク以外にも、フィリピン、インド、イギリスなどでBA.2の感染者の占める割合が増加してきています。

「ステルス・オミクロン」の意味は?

このオミクロン亜種BA.2は海外の報道では「ステルス・オミクロン(Stealth Omicron)」とも呼ばれているようです。

ステルスは「内密」「こっそり行う」という意味があり、軍用機などの機体を敵のレーダーに捕捉されにくくする技術などを指します。

BA.1などのオミクロン株には「del69/70」というスパイク蛋白の欠失箇所があり、これらのスパイク蛋白の欠失箇所をPCR検査で検出する「S gene target failure (SGTF)」という方法でオミクロン株を検出する方法を行っている国が多くなっていますが、BA.2ではこの「del69/70」という欠失箇所がないためSGTFで検出されません。

このため「オミクロン株なのにSGTFで検出されない」という意味でステルス・オミクロンと呼ばれています。

しかし、日本ではデルタ株に特徴的な「L452R」という変異がないことをもってオミクロン株の簡易検出法としていることから、日本ではBA.2もBA.1と同様の方法で検出されます。

この意味で日本ではステルスではありませんが、今の検出法ではBA.1とBA.2が区別できないことから、むしろ今後はBA.1とBA.2を区別するためにSGTFなどの方法で簡易検出をすべきかもしれません。

BA.2の感染力は?

イギリスからの報告では、感染者数の増加率(growth rate)はBA.1よりも高いことが報告されています。また、家族が発症した場合にその濃厚接触者が感染する割合もBA.2の方がそれ以外のオミクロン株よりも高かった(13.4% vs 10.3%)とのことです。

京都大の西浦博先生らの調査では、BA.2の実効再生産数はオミクロンBA.1株のそれよりも18%高いと発表されています。

デンマークでの拡大状況を見ると、今後他の国でもBA.2が広がっていく可能性があります。

BA.2の重症度は?

現時点ではBA.2がこれまでのオミクロン株と比べて重症化しやすいのかについて十分な情報はありません。

デンマークの国立血清研究所(Statens Serum Institut)からの発表では、現時点ではBA.1とBA.2での入院率に差はないとされています。

BA.2に対するワクチンの効果は?

オミクロン株では、従来の新型コロナウイルスと比較して新型コロナワクチンによる感染予防効果が大きく落ちていることが特徴です。

BA.2に対するワクチンの効果は、現時点では症例数が少ないため予備的なデータのみが発表されていますが、発症予防効果は

・2回接種から半年以上経過した時点:13%(BA.1では9%)
・3回接種から2週後:70%(BA.1では63%)

であったとのことです。大きくBA.1とワクチン効果が異なることはなさそうです。

BA.2に対する今後の対策は?

今後日本国内でもBA.2が拡大していく可能性があります。今の日本国内での一般的なオミクロン株の簡易検出方法ではBA.1とBA.2との区別がつかないことから、SGTFなどの別の方法で区別する必要があるでしょう。

本来は、このBA.2が検出された感染者の周囲の濃厚接触者を特定し、しっかりと隔離をすることで拡大のスピードを抑えるという対策が行われますが、現在の保健所業務の逼迫状況からは難しい状況と考えられます。

私たち一人ひとりにできる感染対策は変わりません。手洗いや3つの密を避ける、マスクを着用するなどの感染対策をこれまで通りしっかりと続けることが重要です。

特にマスクを外した状態での会話が感染リスクとなりやすいことから、会食や職場の昼食時などは黙食・マスク会食を徹底するようにしましょう。

また、高齢者や基礎疾患のある方においては新型コロナワクチンのブースター接種で重症化予防効果を再び高めることが重要です。

ただし、ワクチンだけで感染を防ぎ切ることは困難であり、ワクチン接種後もこれまで通りの感染対策は続けるようにしましょう。

忽那賢志(くつなさとし)

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。『専門医が教える 新型コロナ・感染症の本当の話』発売中ッ!

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