新型コロナウイルス感染、『自助』では日本の冬を乗り切ることが出来ない。命と経済を守る提言 !!

コロナ感染_国内20201129 政治・経済

新型コロナウイルス感染は、冬の季節を前にして、現在、4月の第1波、8月の第2波を超える勢いで第3波が全国を襲っている。全国で1日の新規感染者が2500人を超える日が続き、各都道府県では記録を更新している。

夏の第2波は無症状或いは軽症で済む若者の感染拡大が特徴だったが、第3波は高齢者への感染拡大が増えており、当然重症化の危険性が高くなり、病院で重症患者を受け入れることが難しいという医療崩壊の危機に直面している。

観光業界や飲食業界、また元気な若者からはGoToトラベル&イートキャンペーンの継続を求める要望がある反面、医療関係者からは医療崩壊の危機を訴える声が高まっている。

感染状況を一目でわかるように、データをグラフで視覚化した。

全国の感染状況…新規感染者数・重症者数・死亡者数の推移

1日ごとの新規感染者数、重症者数、死亡者数の推移をグラフにした。新規感染者数(ネービーブルー)と重症者数(ピンク)は縦棒グラフで、死亡者数(赤)は7日間移動平均を折れ線グラフで記した。

新型コロナウイルス 全国の感染状況・・・1日ごとの新規感染者数、重症者数、死亡者数

グラフを見てわかるように、第1波よりも第2波、第2波よりも第3波が大きい。重症者数は感染者数に比べて2~3週間遅れて増減している。重症患者数と死亡者数のタイムラグは0~1週間である。第3波による重症者数と死亡者数は、第1波、第2波を超える傾向にある。

年齢階級別に見た陽性者数と死亡者数を表とグラフにした。データ元は厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(令和2年11月18日18時時点)」である。

年齢階層別の陽性者数、入院治療を等を要する人数、死亡者数、及び割合(%)

検査で陽性が確認された人は20代が圧倒的に多く、次いで30代、40代、50代である。重症化率は60代を超えると急速に高くなる。死亡者は50代を超える階層から急に多くなり、70代、80代以上は死亡者数も死亡率も異常に高くなる。若い人が安全という訳ではない。回復後に後遺症に悩まされるケースが報告されている。

この冬は、高齢者や疾患のある人は特に注意が必要である。若者は重症化や死亡率は低いが、家族の高齢者に感染させないよう十分に気をつけないといけない。

全国の感染状況 東京、大阪、北海道、愛知が危ない

感染者の多い全国6地域の感染状況をグラフにした。北から順に、北海道、東京都、愛知県、大阪府、福岡県、沖縄県である。それぞれの都道府県に隣接する地域はおおむね同様の傾向が見られる。

全国6地域における感染状況

1日当たりの感染者数の多い順に、東京都、大阪府、北海道、愛知県が高い値になっている。9月、10月は全国的に感染が弱くなったが、東京都は収束せず高い状況続いた。大阪府も収まらなかった。

そのような状況下で、7月22日からGoToトラベルキャンペーンが東京を除いて始まり、10月1日からは東京都もキャンペーンの対象になった。

福岡県は8月に高いピークとなったが、秋以降の第3波は他の地域に比べて低い状態にある。

次に、直近の7日間(11月22日~28日)の新規感染状況及び人口10万人当たりの数値を表にした。

直近の傾向で感染の高い地域は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の首都圏、大坂府と兵庫県、北海道、愛知県である。次は、8月にピークとなった沖縄県である。注意すべき新しい傾向として、首都圏近隣の茨城県と群馬県、中部の静岡県、関西圏の京都府と奈良県に、危険の兆候が見られる。

危険な10地域 北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大坂、兵庫、福岡、沖縄

各都道府県の感染状況をグラフで視覚化した。感染状況が一目でわかる。

北海道の感染状況

北海道では、第3波の異常さが著しい。

首都圏の感染状況 埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県

首都圏に属する1都3県は、感染状況が似ている。

愛知県の感染状況

関西圏の感染状況 大阪府、兵庫県

大坂府と兵庫県は似た感染状況である。

福岡県の感染状況

福岡県は8月に異常に大きい第2波となったが、第3波はこれからである。

沖縄県の感染状況

沖縄県は8月の第2波以降、収束を見ないまま第3波に入った。

安倍内閣・菅内閣は新型コロナ対策に失敗。命と経済活動を守る提言 !!

安倍総理は第1波の感染拡大に対処するため、4月7日に、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に緊急事態宣言を発令し、4月16日に対象を全国に拡大した。

その効果もあって、5月の連休が明けてから感染は収束に向かった。5月14日に、北海道、東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、京都、兵庫の8つの都道府県を除く39県で緊急事態宣言が解除され、その後、5月21日に、大阪、京都、兵庫の3府県が、そして5月25日に、残りの首都圏1都3県と北海道が解除され。1か月半ぶりに全国で解除されることになった。

緊急事態宣言が解除されると、それまで我慢を強いられてきた国民は、飲食や旅行などに繰り出した。その結果、6月下旬頃から感染が東京、神奈川、埼玉など首都圏を中心に再び拡大し、徐々に全国でも広がり、第2波の山をつくった。

しかし、政府は、コロナ禍の影響で疲弊した観光産業を支援するために、GoToトラベルキャンペーンを、前倒しして7月22日から東京を除いて実施した。このキャンペーンは4月20日の閣議決定に基づいて実施されたが、そこには、「新型コロナウイルス感染症の拡大が収束し、国民の不安が払拭された後」、「新型コロナウイルス感染症の拡大が収束した後の一定期間に限定して」とあり、あくまでも、「感染拡大の収束」が前提になっている。

令和2年4月20日 閣議決定
「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の変更について

第2章 取り組む施策

Ⅲ.次の段階としての官民を挙げた経済活動の回復(26ページ)
新型コロナウイルス感染症の拡大が収束し、国民の不安が払拭された後は、反転攻勢のフェーズとして、今回の事態により甚大な影響を受けた分野に重点的にターゲットを置き、国民広くに裨益する、短期集中の思い切った支援策を講ずる。官民を挙げた大規模なキャンペーンを展開することを通じて、国内の人の流れと街の賑わいを作り出すとともに、消費需要を大胆に喚起し、日本経済を再び確かな成長軌道へ一気呵成に回復させていく。同時に、インバウンド復活への取組や農林水産業への経営支援等も通じ、地域経済の再活性化の機運を盛り上げる。

1.観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテインメント事業等に対する支援
今回の新型コロナウイルス感染症の影響により、売上等に甚大な打撃を被った観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテインメント事業を対象に、GoToキャンペーン(仮称)として、新型コロナウイルス感染症の拡大が収束した後の一定期間に限定して、官民一体型の消費喚起キャンペーンを実施する。具体的には、キャンペーン期間中の旅行商品を購入した消費者や飲食店を予約・来店した消費者、飲食店で使える食事券を購入した消費者、イベント・エンターテインメントのチケットを購入した消費者に対し、割引・ポイント・クーポン券等を付与する。その際、キャンペーン全体で統一的な事務局を設置の上、全国津々浦々から本事業に参加する事業者を募集する。また、全国の商店街等において賑わいを回復するためのイベント開催等のキャンペーン実施を支援する。この際、民間企業や自治体、商店街等と連携し、官民一体でわかりやすく周知するための広報を実施する

政府はこの閣議決定を都合よく解釈し、全国で感染拡大が始まっている事実を無視して、キャンペーンを強行した。人々が移動し交流が盛んになると感染はさらに拡大する。個人が心掛けて3密を避け、店舗が対策を講じても、感染を完璧に防ぐことは出来ない。キャンペーンを実施した当初、感染拡大を心配する声、需要が喚起されるとして歓迎する声、方針の二転三転に戸惑う利用者や業者など、様々な反応があった。

10月1日からは東京もGoToトラベルキャンペーンの対象となり、さらに同日に、GoToイートキャンペンも始まった。

ホテル・旅館業を初めとする観光業界や観光地のお店、及び飲食業界は久しぶりに潤いに与った。利用客はマスク着用と3蜜回避に心がけ、受け入れ側の業者は客の密を避ける工夫や、消毒や換気を徹底した。

しかし、冬を前にしてコロナ感染は、全国的に第1波、第2波を超える勢いで拡大している。

菅総理 「『トラベル』が主要な原因だというエビデンスは存在しない」

11月25日の衆参の予算委員会で感染拡大とGoToキャンペーンの関係を問われた菅総理は、「今日まで4000万人が利用しているが、コロナ陽性になったのは180人だ」、「『トラベル』が主要な原因だというエビデンスは存在しない」と繰り返し、「地域経済を下支えしているのは事実だ」と譲らなかった。

新型コロナ感染で厄介なのは、無症状の感染者が自覚のないままウイルスをまき散らすことだ。180名は陽性が判明した人であって、その何十倍もの人数の人が無症状・無自覚のまま、感染拡大に関与している。また、感染者の中には、GoToキャンペーンでの行動履歴を詳細に報告しない人もいる。総理がそのことを理解していないのなら分析能力に問題があり、故意に発言しているなら極めて悪質な答弁だ。

東京大学などの研究チームがおよそ2万8000人を対象に、新型コロナへの感染が疑われる嗅覚や味覚の異常、発熱や頭痛などといった症状があったかを調査した。その結果、GoToトラベルを利用した人は、利用しなかった人に比べ、統計上、「有症率の差」がおよそ2倍になったということを7日に発表した。GoToトラベルが感染拡大に寄与している可能性がある、と分析している。

新型コロナウイルスは人を介して感染拡大する。人が、お店が、どんなに感染拡大を防ぐ措置をとっても完璧はない。従って、GoToキャンペーンは、経済復興キャンペーンであると同時に、GoTo感染拡大キャンペーンとなっている。

社会経済活動の活性化とコロナ感染防止の両立はどうすれば良いか。結論は、市中から無症状者を含む陽性者をいち早く発見し、いち早く保護・治療することである。

安心して経済活動を再開している国は、ウイルス検査を広範囲に徹底して実施し、市中からコロナウイルスの根絶に効果を上げている国である。

コロナ対策は、個人の努力、個人の責任。政府に国民の命を守る気持ちは皆無

それに対して、日本の政府は、GoToキャンペーンで経済再生に注力しているのは分かるが、コロナ対策に関しては、国民にはマスクと3密回避、お店には消毒と密集空間排除を要請するなど、それぞれの自己責任と自己努力に委ねている。政府には、何としても国民の健康と命を守るという強い思いがない。

犠牲者は、感染して重篤になった国民と、医療崩壊の危機の中で自らの命を顧みずに患者の治療にあたる医師や看護師など医療従事者である。

安倍内閣の時もそうだったが、菅内閣も、国民の命のことをどれだけ心配しているのか、その思いが感じられない。

【参考リンク】

【データで解析】 新型コロナウイルス ヨーロッパは2度目のロックダウン、日本は対策に失敗

【データの出典】

ジョンズ・ホプキンス大学:COVID-19 Dashboard by the Center for Systems Science and Engineering (CSSE) at Johns Hopkins University (JHU)

オックスフォード大学:Our World in Data ”Coronavirus Source Data

厚生労働省『新型コロナウイルス感染症について

NHK 特設サイト『新型コロナウイルス』

コメント

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