「共産党アレルギー」が立憲を惨敗させた !!

日本共産党の正体 政治・経済

立憲民主党を惨敗させた「共産党アレルギー」(加藤成一 アゴラ 2021.11.08 06:50)

今回の総選挙の総括

今回の総選挙を一言で総括すれば、右派系政党が勝利し、左派系政党が敗北したことである。具体的には、右派系の自由民主党が予想外に善戦し衆議院の絶対安定多数261議席を確保した。また、右派系の日本維新の会が議席を4倍の41議席に増やし大躍進した。

これに対して、左派系の立憲民主党が14議席減の惨敗、同じく左派系の日本共産党が2議席減の敗北である。これが今回の総選挙の結果であり総括である。

自民善戦・立憲惨敗の背景

このような、右派系政党勝利、左派系政党敗北の背景については、マスコミ、専門家等により様々な分析がされている。私見では、まず、自民党善戦の要因としては、新型コロナ対策で後手後手の批判を受けていた政府自民党が、ワクチン接種の飛躍的拡大により、東京都をはじめ全国的に新規感染者数が激減したことが大きい。

次に、立憲、共産などの左派政党は、ひたすら「分配」のみを強調し、その前提となる「成長戦略」が乏しかった。左派政党は「アベノミクス」を厳しく批判するが、それに代わる強力な経済成長戦略や、情報通信・デジタル・AI・バイオテクノロジーなど、先端科学技術産業を含む、新たな産業政策を提示できなかった。

さらに、立憲、共産などの左派政党は、安保法制廃止を主張し米国との集団的自衛権をひたすら否定するだけであり、近年の中国の覇権主義的軍拡による尖閣危機や台湾有事など、東アジアの厳しい安全保障環境の下で、国家と国民、領土、領海、領空を守るための集団的自衛権に代わる確固たる安全保障政策を提示できなかった。

立憲の共産党との「閣外協力」

立憲は、小選挙区における候補の一本化を目的として、総選挙前の9月30日に、安保法制廃止と立憲主義回復を目指す市民連合を介して、共産党との間で20項目の「共通政策」の実現を目的とする限定的な「閣外協力」の合意をした。

この合意により、全国で200を超える小選挙区において、立憲を中心とする候補の一本化が実現した。しかし、選挙の結果は前記の通り立憲の惨敗に終わった。立憲は小選挙区では公示前に比べ9議席増やしたが、比例では23議席も減らした。政党名で投票する比例は政党の党勢を反映するバロメーターとされている。上記結果は、立憲は政党として支持されなかったということである。

「容共政権」誕生の不安

立憲枝野代表は選挙中盛んに「政権交代」を叫んでいた。共産志位委員長も同じである。しかし、両者が「政権交代」を叫べば叫ぶほど、国民は不安になった。なぜなら、もし、政権交代が実現すれば、立憲と共産が協力する「容共政権」が日本で初めて誕生するからである。

共産は、「閣外協力」を社会主義・共産主義政権成立のための統一戦線とみなしているからである(10月4日拙稿「ついに共産党と閣外協力する立憲民主党:社会主義政権への第一歩」参照)。

「暴力革命路線」の歴史がある共産党

共産党には、戦後の一時期に火炎瓶闘争、交番襲撃、中核自衛隊、山村工作隊などの「暴力革命路線」を取った歴史がある(党中央委員会著「日本共産党の70年上」240頁以下参照)。

共産党は、現在でも、革命戦略として「革命が平和的か暴力的かは敵の出方による。」という「敵の出方論」(不破哲三著「人民的議会主義」244頁参照)を完全には放棄していない。そのため、現在も破壊活動防止法の対象団体に指定されている。

立憲を惨敗させた「共産党アレルギー」

「共産党アレルギー」とは、共産党に対する恐怖心である。この恐怖心は、根本的には党規約2条で共産党が立脚する共産主義イデオロギーである「マルクス・レーニン主義」(「科学的社会主義」)に起因する。

なぜなら、その核心が「階級闘争による暴力革命」と「プロレタリアート独裁」(「共産党一党独裁」)であり(レーニン著「国家と革命」レーニン全集25巻432頁、445頁参照)、自由民主主義のイデオロギーに立脚する現行の日本国憲法体制と矛盾し、議会制民主主義や言論・出版・集会・結社の自由などの市民的自由を認めないからである。このことは、旧ソ連、中国、北朝鮮などの社会主義国家の実態を見れば明らかである。

このようなイデオロギー上の恐怖心に加え、前記の共産党の過去の「暴力革命路線」や「敵の出方論」さらには、旧ソ連、中国、北朝鮮などの社会主義国家の実態を見れば、共産党が政権を獲得すれば「怖い」という一般国民の恐怖心を否定することはできない(8月3日拙稿「政権を取ったら怖い?日本共産党」参照)。

このような「怖い」共産党と「閣外協力」の合意をした立憲民主党に対し、最大の支持母体である連合が拒否反応を示した。多数の労働組合員から構成される連合の対応は、国民一般の感覚に近いと言えよう。すなわち、連合には明らかに「共産党アレルギー」があり、「閣外協力」に基づく立憲・共産の「容共政権」を拒否したのである。最大の支持母体から拒否された立憲が惨敗したのは当然と言えよう。すなわち、「共産党アレルギー」が立憲を惨敗させたのである。