“ぼったくり男爵”バッハ会長、母国・ドイツでの評判は「お金に汚いビジネスマン」

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“ぼったくり男爵”バッハ会長、母国・ドイツでの評判は「お金に汚いビジネスマン」(サンドラ・ヘフェリン 文春オンライン 2021/06/21)より

母国ドイツでの評判は?

ところでバッハ会長、彼の母国ドイツでの評判はどうなのでしょうか? バッハ会長はもともとフェンシングの選手。1976年のモントリオールオリンピックでは金メダル(フルーレ団体)を獲得しています。

ただ近年の彼はスポーツマンとしてよりも、「やり手のビジネスマン」として有名です。引退後、弁護士となった彼は1991年にIOC委員に就任。現在は9代目会長として年間約3000万円の報酬を受け取るだけでなく、IOCが設立した財団の理事長や、子会社の社長も兼務し、それらの報酬は非公開とされています。

バッハ会長の「お金がらみ」の問題でドイツで最も話題となったのが、かつて彼が産業機械大手のシーメンスと結んだ顧問契約でした。彼は2000年からシーメンスの相談役を務めていましたが、同社から年間40万ユーロ(約5300万円)の顧問契約料のほかに「日当」として1日に5000ユーロ(約66万円)を得ていたことが明るみになったのです。

当時のシーメンスの監査役会は、年間契約料が高額である場合、日当が追加で支払われる状況は「まったく一般的ではない」として高額報酬を問題視し、2010年に彼との契約を打ち切りました。こうした問題があったことから、ドイツでバッハ会長といえば、「桁違いの報酬の人」というイメージで、よく言えば「やり手のビジネスマン」、悪く言えば「お金に汚い」と思われています。

オリンピックを冷めた目で見るドイツ人たち

ドイツ人はコロナに翻弄される前から、オリンピックを懐疑的な目で見る人も多かったことをご存知でしょうか? たとえば数年前に「2022年の冬季オリンピック候補地」としてドイツのミュンヘン市が立候補を検討していました。しかし2013年に開催にまつわる住民投票を行ったところ反対派が多数。結局、ミュンヘン市は立候補を断念しています。

「大規模なスポーツイベントが行われると環境が破壊される恐れがある」「無理な建設で財政が圧迫されるのが心配」など反対意見は様々でしたが、そもそもドイツ人は「大規模なイベントによって世界から注目されること」よりも「地元の人の居心地よさ」のほうが優先されるべきと考える傾向があります。

オリンピックでちらつく「ヒトラーの存在」

ドイツ人がオリンピックを懐疑的な目で見る理由は、アドルフ・ヒトラーの存在も大きいです。ヒトラーは戦争の準備をしていたとされる1936年にベルリンオリンピックをやってのけました。

彼が政権を握った1933年からドイツでは、ユダヤ人の商店や銀行、病院、弁護士、公証人などに対する不買運動が続いており、オリンピック前年の1935年にはユダヤ人から公民権を奪い取った悪名高いニュルンベルク法が成立しています。

ユダヤ人に対する差別的な政策の数々がオリンピックの理念にそぐわないとして、多くの国がドイツでのオリンピック開催に反対し、最終的にはアメリカが「全ての人種を平等に扱うこと」「ドイツのユダヤ人をオリンピックに参加させること」を開催の条件としてヒトラーに突きつけています。

オリンピック中止を防ぐためにヒトラーは表向きには条件を呑み、全ての宗教と人種を平等にオリンピックに参加させると約束しました。しかし、その約束は破られます。

ベルリンオリンピックはナチスのプロパガンダに利用されたわけです。ナチスにはスローガン「Olympia – eine nationale Aufgabe(オリンピックは我が国民の使命)」のもとドイツ国民の結束を深め、ゆくゆくはその結束を戦争に利用しようという目論見がありました。

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