「他山の石」の由来は、中国最古の詩集「詩経」に 自民党の「自山の石」

他山の石_詩経 文化・歴史

「他山の石」とは「悪質な石でも磨くのには役に立つ」という意味。つまり「他人の誤った行動や言葉を無視してしまうのではなく、学びとして自分の中に取り入れ参考にすること」という意味である。

ところが、・・・

2019年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反(買収、事前運動)の罪に問われた元法相の衆院議員河井克行被告をめぐり、自民党の二階俊博幹事長は23日、「これはもう議論の余地のないこと。党としても他山の石としてしっかり対応していかなくてはならない」と述べた。

この発言に対し、立憲民主党の枝野代表は「(事件は)自民党のど真ん中で起こった」と指摘し、共産党の小池晃書記局長も会見で「他山ではなく紛れもなく自分の山、自山だ」と断じた。

ツイッター上では「『他山』じゃなく、当事者なのに」「自分の山でしょ」といった批判が相次いでいる。

「他山の石」について原点を尋ねた。

「他山の石」の由来は、中国最古の詩集「詩経」に

「他山の石」という言葉は、中国最古の詩集である「詩経」の中の「小雅(しょうが)・鶴鳴(かくめい)」にある。

「詩経」は、西周初期(前11世紀)から東周中期(前6世紀)に至る約500年間、周王室や諸侯の儀式で詠われた歌から民衆の恋歌などまでが、戦国時代に儒家によって編纂された。本来は「詩」であるが、漢の武帝の時代に五経の一つとされ、儒教の経典とされたため、「詩経」と言われるようになった。現在伝えられているものは305編である。

 ※五経・・儒学で尊重する五部の書で、易経、詩経、書経、春秋、礼記

「詩経」の詩は次の三つに分類される。

風 160編 国風とも言う。15の地域、国の民謡の意味。現在の河南省を中心とした黄河流域で、周王朝の勢力範囲だった地域である。大部分は作者不明の短編で、恋の歌が過半数を占め、その他農事や結婚などを歌い、総じて黄河流域黄土地帯の農民の生活の苦しさが知られる。中には為政者の圧迫を呪った歌もある。

雅 105編 周王朝の宮廷の宴会で演奏された楽章。大雅と小雅の別があり、大雅は長編で荘重謹厳な歌、小雅は国風に似た民謡風の文句が採り入れられたものが多い。

頌 40編 先祖の廟の祭りの時の楽章。歌と音楽には舞踏が伴っていたと思われる。周頌、魯頌、商頌はそれぞれ周、魯、商(殷)の祭歌であった。

ー 佗山之石 可以攻玉 ー 「鶴鳴」 詩経 巻十一 小雅

鶴鳴于九皐  鶴九皐(きゅうこう)に鳴き
声聞于野   声野に聞こゆ
魚潛在淵   魚潜(ひそ)んで淵に在り
或在于渚   或いは渚にあり
楽彼之園   楽しきかな彼の園
爰有樹檀   爰(ここ)に樹檀(じゅだん)有り
其下維蘀   其の下これ蘀(たく)
佗山之石   佗山(たざん)の石は
可以為錯   以て錯(さく)と為(な)すべし

鶴鳴于九皐  鶴九皐に鳴き
聲聞于天   声天に聞こゆ
魚在于渚   魚は渚(しょ)に在り
或潛在淵   或いは潛んで淵に在り
樂彼之園   楽しきかな彼の園
爰有樹檀   爰に樹檀有り
其下維穀   其の下これ穀
佗山之石   佗山の石は
可以攻玉   以て玉を攻(おさ)むべし

【釈】

鶴が奧深い沢で鳴くと、
その声が野にまで聞こえる。
魚が潜んで淵にいることもあれば、
渚にいることもある。
かの楽しい園よ、
立派な檀の木がある。
その下には落葉が積もる。
よその山の質の悪い石でも、
玉を磨くのに役立てることができる。
 
鶴が奧深い沢で鳴くと、
その声が天にまで聞こえる。
魚は渚にいることもあれば、
潜んで淵にいることもある。
かの楽しい園よ、
立派な檀の木がある。
その下には穀からたちがある。
よその山の質の悪い石でも、
玉を磨くのに役立てることができる。

背景にある逸話

この詩の背景にはこんな逸話がある。

田舎から志を抱いて都へ出て来た若者が、望みを叶え低官吏のポストに着くことができた。しかし夢が叶った彼の前に繰り広がった現実は、腐敗しきった職場環境であった。それを嘆いた若者が詩を詠む。

「我が身はとるに足りない路傍の石のような存在かも知れない。たとえそんな自分でも(砥石がわりにでも)使ってもらえれば、玉を磨くこともできるだろうに、それすらもできず、せっかくの玉は曇ったまま都の人々に放って置かれている。情けないではないか。」

元の逸話は「人の振り見て我が振り直せ」のようなものではなく、落ち葉がやがて腐葉土となり大木の肥やしとなることで、「たとえ小さな力でも、その力により世の中を大きく変える力になりえる」と解釈できる。歳月を経て解釈が変化を遂げたのだろう。

「他山の石」の類語

反面教師
人の振り見て我が振り直せ
上手は下手の手本、下手は上手の手本
人こそ人の鏡
人を以て鑑と為す
前車の覆るは後車の戒め
殷鑑遠からず

【参考・引用記事】

「他山の石」、竹林乃方丈庵 2012/03/0913:07

「他山乃石」 zuzu creations.

「和歌に影響を与えた漢詩文」 千人万首 ―よよのうたびと―

「他山の石」の意味、由来、使い方を例文付きで解説!類語や英語表現も紹介! WURK 公開日: 2018.04.18 更新日: 2018.04.18

【参考・貞観政要】

リーダーに求める資質・・貞観政要