随意契約“小泉米”をホメているのは新聞とテレビだけ…専門家の評判はからっきし

小泉米は“世襲米ナナヒカリ”“郵政の二の米” 政治・経済

随意契約“小泉米”をホメているのは新聞とテレビだけ…専門家の評判はからっきし(日刊ゲンダイ 公開日:2025/06/08 06:00 更新日:2025/06/08 06:00)

「5キロ2000円」で売り出した小泉米の化けの皮が一夜にしてはがれてしまった。発売当初は、家畜飼料同然の古古古米の物珍しさと、それを喜々として伝える新聞テレビにあおられ、われ先にと店頭に群がった消費者もいたが、今では小泉米は“世襲米ナナヒカリ”“郵政の二の米”と散々の言われようである。

「昨年夏以降、銘柄米(5キロ6000円超)やブランド米(5キロ5000円超)が高騰した。とにかく“まずくても安いコメ”を求める消費者の声に小泉(進次郎)農相が新たな選択肢を示したことは評価されていいかもしれません。しかし、コンビニが“ヴィンテージ米”などと称して握り飯を1個120円で売り出すそうですが、元々二束三文の古古古米ですから、火事場泥棒みたいなもの。それに備蓄米の在庫がなくなれば元のもくあみですよ。コメ市場はそんな生易しいものじゃない」(農水官僚OB)

実際、コメ市場は小泉米に冷淡だ。これまで店頭では品薄とみられてきた銘柄米、ブランド米が備蓄米大量放出の動きを受けて市場に出回るようにはなってきたが、価格自体は在庫調整的な値動きにとどまっており、小泉米への過剰な期待をいさめている。

「小泉さんの備蓄米放出は、本来的には生活困窮者向けの福祉政策としてやるべきことで、コメ市場の需給調整とは似て非なるもの。それを農業改革とか大上段に振りかざすから、生産者も消費者も混乱するのです」(前出の農水官僚OB)

もっとも、生産者や消費者以上に混乱しているのは、ほかならぬ小泉大臣自身であろう。先に江藤大臣時代に備蓄米を高値でつかまされた流通卸業者は“コメコメ詐欺”に遭ったようなものでカンカンである。

小泉大臣は、税金使ってこの江藤米をいったん買い戻し、再度、小泉米として市場に放出するという。小泉大臣はまた、残すところ30万トン足らずとなった備蓄米を今後は酒や味噌など発酵食品の原材料としても放出するそうだ。さらに米国、タイ、中国などから買い取りを強いられている加工食品や飼料用の輸入米(ミニマムアクセス米)の放出にまで言及している。

「本来国がやるべきことは備蓄米を放出することではなくて、国民に平等にいきわたる物価高騰対策をやること。お米券の配布や現金給付などの対策をせず、備蓄米放出に踏み切っている今の農政に、私は疑問を覚えざるを得ない」

6月1日、自民党の鈴木憲和・前農水副大臣は地元、山形市内で行われた県連大会のあいさつでこう語り、小泉米を厳しく批判した。

そもそも、小泉大臣は国民が主食として口に入れる銘柄米やブレンド米と、小泉米の市場が、似ていてまったく別ものであることすら理解できていないのだろう。

コメの安定供給と適正価格の調整は急務だが、小泉大臣のやっていることは“市場の破壊”でしかない。(特命記者X)