【池上解説】世界が大きく動く!?トランプ米大統領就任で2025年はどうなる?(テレ朝news 025/01/11 23:58)
まもなくアメリカはトランプ大統領になります。就任前から色々なニュースになっていますが、日本や世界はどうなっていくのか、解説してまいります。
一体なぜ?USスチール買収阻止
まずは最近ニュースになっているUSスチールの買収禁止命令です。
皆さんは一体何が起きているのか理解していますか?そもそもから解説しましょう。
このUSスチールというのはアメリカの大手鉄鋼メーカーです。しかし中国の安い鉄鋼の台頭などから経営に行き詰まり、今では単独では生き残ることが難しい、とまで言われる状態になってしまいました。そこで買収話が持ち上がったのが、世界第4位の鉄鋼メーカー、日本製鉄。一緒になれば世界3位の規模になる、とも言われていましたから、USスチールも大変乗り気だったと言われています。
そんな相思相愛の企業の買収話に「禁止だ!」とストップをかけてきたのがバイデン大統領です。資本主義の国で企業同士の取引を政府が阻止する…なぜそんなことが起きたのでしょうか?
バイデン大統領が持ち出したのは「国家安全保障上のリスク」です。
アメリカという国の安全のために鉄鋼業は必須、他国が買収することは認められない!ということなんですが、そもそも日本はアメリカの同盟国です。これまで「国家安全保障上のリスク」といわれるのは中国が絡んだ案件などでした。なぜ日本の案件で禁止命令を出されるなんてことになるのか、と大きなニュースになったわけです。
結局は選挙対策だった!?
バイデン大統領が禁止命令を出した理由は単純です。「選挙対策」です。
この買収にはUSスチールも加盟する「鉄鋼業界を中心とした労働組合」が反対していました。もともとアメリカにとって鉄鋼は主力産業。そんな産業が他の国に買われるなんてプライドが許さない、というところです。
そのためバイデンさんは大統領選挙中、日本企業による買収は認めない!と言って労働者の票を集めようとしていました。結果負けてしまいましたが、今更それを覆すことはできない、約束を守った、というわけですね。
今回の買収阻止で日本とアメリカの信頼関係にも傷がついたともいわれています。
トランプさんはもともと日本企業によるUSスチール買収には反対です。果たしてバイデン大統領の決定を覆すなんてことがあるのか、注目です。
24時間で終わらせる!?ウクライナへの軍事侵攻
大統領選の期間中、トランプさんはウクライナとロシアの戦いについて、「24時間で終わらせて見せる」と言っていました。トランプさんが大統領になれば事態が大きく動く可能性があります。詳しく解説してまいりましょう。
ロシアによるウクライナ侵攻が始まってもうすぐ3年が経過します。
去年9月の段階で両軍の死傷者が100万人になったと言われていて、両国ともかなり疲弊しています。アメリカのメディアによれば、トランプさんは今こんな停戦案を考えていると言われています。
1.今の戦闘ラインで停戦し、非武装地帯を設置。そこにヨーロッパ諸国の軍が駐留して監視する
2.新しい国境は外交交渉、話し合いで決める
でもこの案だとウクライナは一旦ロシアに領土をとられる形になってしまいます。
それでもゼレンスキー大統領をはじめ、ウクライナの人たちも領土よりもまずは停戦したい、そう考えていると言われています。最近ウクライナで行われた調査によると停戦を望む声は過去最高の64%に達しました。一部地域はロシアに占領されたままでも、今後は攻められないようにNATOに加盟して戦争を終わらせたい、そんな声が大きくなってきているのです。
ポイントはNATO加盟!?
ここで争点となってくるのが、このNATO加盟です。ロシアは当然のように反対です。
そこでトランプさんはウクライナが一定期間NATOに加盟しないことを停戦案に盛り込もうとしていると言われています。でもそれではウクライナは納得しません。落としどころがどこになるのか、そこがポイントとなりそうです。
大統領選の間はトランプさん、「24時間で終わらせる」「支援は打ち切る」なんて言っていましたが、今は「6か月以内に停戦」「支援は続ける」と言うようになっています。ただ、ウクライナへの支援は続けるけどその代わり…と要求しているのがNATO加盟国に「もっとお金を出せ!」というもの。加盟国が軍事費を増やさないならNATOからの脱退も検討する、というのです。そんなことになったら世界は大変なことになってしまいます。
トランプ大統領就任で事態が大きく動くことはおそらく間違いがありません。トランプ新大統領がどんな停戦への道筋をみせてくるのか、こちらも注目をしていてください。
(池上彰のニュースそうだったのか!! 1月11日OAより)