小泉進次郎氏が「解雇規制緩和」をぼかし始めた 野田佳彦氏「親の七光りで落ちる心配ない政治家が何を…」(東京新聞 2024年9月18日 06時00分)
自民党総裁選に立候補した小泉進次郎元環境相(43)の解雇規制見直しを巡る発言がトーンダウンしている。当初は整理解雇を促進するかのような表現をしていたのを封印。野党や労働界などから反発が続出したことが影響したとみられ、専門家も「リストラをいつでも思う存分したい企業だけが得をし、労働者は誰も得しない」と指摘する。(竹谷直子)
「雇い続けねばならない」強調していたが
「人員整理が認められにくい。この状況を変えていく」。小泉氏は6日の出馬会見でこう述べた。リスキリング(学び直し)や再就職支援を条件に大企業の整理解雇の要件の緩和を訴え、1年以内に実現する考えを示した。10日にも「今のままだと一度雇用したらずっと雇わなければならない。そのしわ寄せで今まで非正規雇用が続いていた」と持論を展開していた。
日本の解雇ルールは、解雇権乱用法理(労働契約法16条)に規定され、解雇権の乱用は許されないという個別事例が判例によって積み上げられてきた。解雇規制を巡る議論はたびたび起き、2013年には安倍政権下で成長戦略の一つとして解雇ルールの法制化が議論されたが、見送られた。厚生労働省の検討会が22年に報告書をまとめたものの、労使双方の反対の声が上がり、先送りされている。
正社員も含め「みんな不安定に」指摘
日本労働弁護団の佐々木亮幹事長は、小泉氏の発言を「現在でも権利乱用にならなければ解雇はできる法制度になっているので、おかしな話」と批判する。「これまでは労働契約の解除がしやすいため、正社員を非正規雇用に置き換え、非正規雇用が増えた。解雇規制緩和は、正社員も含めてみんな雇用が不安定になる」と指摘する。
立憲民主党代表選に立候補した4人からも、批判の声が上がる。枝野幸男前代表(60)は「社会の不安定性を高めるだけ」と非難。野田佳彦元首相(67)も「親の七光で政治家になって落ちる心配もない連中が何を言っているんだ」と批判した。
「解雇の自由化なんて全く考えてない」
当の小泉氏は12日に「解雇の自由化なんて全く考えていない」と発言。その後も政策導入の狙いについて「正規・非正規の格差解消のため」「昭和の時代の働くルールを令和の今に合わせる」「リスキリングと再就職支援によって新たなところに移動しやすくする」と”マイルド”な発信に終始している。