GDP4位転落(中國新聞 天風録 2024年2月17日(土)07:00)
平成に入った頃、互いに貧乏学生だった友人が株を買いたいと言った。バブル期真っただ中。株さえ持てばお金がもうかる―。知識も資金もないのに、しばし白昼夢を2人で見た。やがて現実に戻り、バイトへ向かった。
平均株価がその頃に記録した終値の過去最高値に迫った。きのうはあと50円にまで。しかしバブル再来のような浮かれた気分は今、どこにも見当たらない。学生はきゅうきゅうとし、将来にも希望を持ってなさそうだ。
国内総生産(GDP)速報値で、日本はドイツに抜かれて世界4位に転落した。「一喜一憂しなくていい」と経済団体トップは冷静だ。円高になれば逆転すると。確かに円安が一因だろうが、根本には日本経済の低迷がある。インドにも越されそう。
ドイツとの違いをみる専門家の解説にうなずく。日本は会社が強い。内部留保も多い。一方、利益を社員の賃金に回すドイツ。実際、30年間で賃金は2倍を超えた。日本はというと1・1倍。ほとんど上がっていない。
モノを買う力が落ちている。社会構造を変え、賃上げを進めねば、順位は一段と下がるに違いない。バブル期ほどでなくとも、若い世代が夢を描ける世の中にしなくては。