維新・馬場代表は民主主義の基本をわきまえていない 政治家としては致命的…小林節・慶応大名誉教授

小林節慶応大名誉教授 政治・経済

維新・馬場代表は民主主義の基本をわきまえていない 政治家としては致命的(日刊ゲンダイ 公開日:2023/09/12 06:00 更新日:2023/09/12 06:00)

ここがおかしい 小林節が斬る!

7月に、ネットテレビで、日本維新の会の馬場伸幸代表が、「共産党はなくなった方がいい」と発言した。抗議を受けたが、「政治家として信念、理念を持って発言している」として、謝罪や撤回には応じなかった。その際に、「(共産党は)破防法に基づく調査対象団体、政府が危険な政党と見ている」と付け加えた。

私は、この発言に接した時に、言葉を選ばずに言えば、「知性の欠如」だと思った。

まず、「共産主義」を標榜する暴力革命(ロシア=1917年と中国=1949年)しか知らなかった日本国が1952年に破壊活動防止法を制定したのは正当であった。しかし、その後70年以上、暴力革命の兆候もなかった日本共産党に今、前述のような批判を向けることは、知的に不誠実であろう。

さらに、それ以上に、今回の馬場発言は、日本国憲法が保障する民主主義の意味を理解していない点で、政治家として致命的だと言わざるを得ない。

わが国は国民主権国家である(憲法1条)。人間は皆、先天的に個性的で、正確には人間の数だけ異なった意見が存在する。だから、全ての人に「等しく」(14条)思想・良心の自由(19条)と表現の自由と結社の自由(21条)と参政権(15条)が保障されている。その上で、自由な討論と選挙を経て政治的決定と変更を重ねて漸進して行く仕組みが、民主主義である。

そのような日本の政治の中で、公党の代表が、他党に対して、「なくなった方がいい」と言い放って恥じず、それを自分の「信念、理念」だと開き直る。この政治家は「信念」「理念」の意味を知らないのではないか?

あれは、最初の発言直後に「不用意で言い過ぎでした。撤回して謝罪します」と言っておけば済んだ話である。

にもかかわらず、馬場代表は、ある月刊誌の10月号に〈立憲民主党も日本共産党も日本から絶対になくなっていい政党〉という記事を寄稿したそうである。私はそれは愚かなことだと思う。

もはや、公党の党首間の公開討論で決着をつけるしかない段階になってしまった。

小林節 慶応大名誉教授
1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)