国土交通省の「建設工事受注動態統計」、書き換えが何故起きた?

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統計書き換え、なぜ起きた 国交省が8年放置―ニュースQ&A(JIJI.COM 2021年12月18日15時52分)

国土交通省の「建設工事受注動態統計」で調査票が書き換えられ、結果として2013年4月分以降の数値が水増しされていた問題が発覚した。こうした不適切な処理がなぜ始まり、8年間にわたり放置されてきたのか。問題の背景を探った。

建設工事受注動態統計とは何か。

全国の建設事業者が請け負った毎月の工事の実績を調べる統計だ。国内総生産(GDP)の推計や公共事業の立案などに活用されている。政府が特に重要と位置付ける基幹統計の一つでもある。約1万2000社が調査対象で、都道府県が事業者から調査票を回収して国交省が集計している。

書き換えの背景は。

事業者側の手が回らず、回収率が6割程度にとどまることも多い。このため、国交省は間に合わない場合は翌月以降に複数月分をまとめて提出することを認めた。

データは機械で読み取るが、過去のデータを事後的に入力できないため、複数月分を最新月に一括で受注したかのように都道府県の担当者に消しゴムや鉛筆で書き換えさせていた。始まった経緯や時期について国交省は「確認し切れていない」(関係者)と話している。

なぜ問題なのか。

厳正に扱うべき調査票を書き換えること自体、不適切だ。さらに、13年4月分以降は調査結果を実態に近づける目的で未回答企業の実績をゼロとせずに一定の推計値を計上する方法を採用した。

このため、遅れて提出された前月分以前の実績と推計値が二重に計上され、数値が実際よりも膨らんだ可能性がある。政策立案の前提条件となる統計が実態と異なっていたとすれば、その政策が正しかったか疑わしいことになる。

数値は大きく変わったのか。

国交省は、書き換えがあったのは調査対象の1割前後で、多くは受注規模が比較的小さい中小企業だったと説明する。内閣府は現段階でGDPへの影響は軽微とみているが、検証が必要だ。

放置されたのはなぜか。

歴代の国交省担当者が漫然と前例を踏襲していた可能性が高い。政府は18年末に発覚した「毎月勤労統計」の不正を受けて一斉点検を実施したが、国交省側の認識が甘く、問題に気付くことができなかった。19年11月に会計検査院から指摘され、20年1月分から都道府県に書き換えをやめさせた。

以降は二重計上分を除いた数値を集計する一方、急に方法を変えると整合性が損なわれるとして本省職員が自ら書き換えてそれまでのやり方を続けた。正式に改善されたのは21年4月分からで、20年1月分までさかのぼって数値を修正。事務方はこうした経緯について当時の国交相に直接報告せず、公表もしなかった。19年以前の分は調査票の一部が既に廃棄されているなどの理由で修正は難しい。

今後の焦点は。

国交省が近く設置する第三者委員会による調査だ。一連の行為は虚偽報告を禁じた統計法に抵触する恐れもあり、斉藤鉄夫国交相は法律の専門家も委員に加えて実態解明に取り組む意向を示している。失われた政府統計の信頼を取り戻すには、書き換えが始まった経緯や原因をはっきりさせて再発防止を徹底する必要がある。