<社説>コロナ感染拡大 「第9波」を警戒せねば(東京新聞 2023年7月1日 07時08分)
新型コロナウイルスの感染者が再び増加している。専門家は「第九波が始まった可能性がある」として、夏に向けて感染がさらに拡大する懸念を指摘した。日常を取り戻しつつある中でもウイルスが消滅したわけではない。警戒を緩めず、感染予防を心掛けたい。
厚生労働省によると、全国約五千の定点医療機関から六月十九~二十五日に報告された一医療機関当たりの感染者は平均六・一三人。前週比一・〇九倍と微増が続く。
特に沖縄県では感染が急速に拡大している。入院患者や重症者が増加傾向にあり、医療態勢が逼迫する懸念が指摘されている。
感染症法上の位置付けは五月八日から、結核などの「二類」相当から季節性インフルエンザと同じ「五類」に移行した。第九波に突入すれば、感染対策の緩和以降、初めて経験する流行となる。
五類移行後、入退院の調整は自治体や保健所でなく医療機関に任されているが、医療を必要とする人が迅速に治療を受けられる態勢を維持することが不可欠だ。感染拡大の状況を注視しつつ必要なら保健所の支援も検討すべきだ。
感染対策が緩和されたことを受けて人の往来も増えた。
自然感染やワクチン接種の免疫が低下してきた時期とも重なり、風邪の症状や肺炎を引き起こすRSウイルスなど別の感染症も子どもたちを中心に拡大している。
感染症の拡大を抑えるために、対策を再度確認しておく必要があろう。マスクを外す人も徐々に増えているが、医療機関や介護施設などでは着用するなど場所や状況に応じた対応を心掛けたい。
ワクチン接種も重要な対策の一つだ。高齢者向けの接種が始まったものの接種率は約四割にとどまる。政府は希望者に対する接種の呼びかけを続けてほしい。
厚労省は五類への移行前、全感染者数を毎日集計して公表していたが、移行後は限られた定点医療機関から寄せられる情報を週一回公表する方法に変更した。
見落としている感染拡大がないかを迅速に把握するため、一部自治体のデータを使った調査も始めた。五月時点では隠れた流行はないというが、五類移行前と比べれば精度の低下は否定できない。
重要なことは感染状況をより正確に把握し、迅速に対応することだ。政府は専門家の協力も得て調査手法の改善に努めてほしい。